【市況】明日の株式相場に向けて=ロシア株大暴落の次に見えるもの
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
東京市場では、2月中旬以降の調整局面におけるコンセプトは、日経平均の1月27日安値1万6170円を1番底に見立て、2番底を探りに行くというものだった。しかし、実際は違った。「1月の安値が1番底ではなかったという現実は、市場のセンチメント悪化にかなり大きなインパクトを与えている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。前日の米国株市場ではNYダウ、ナスダック総合株価指数がいずれも大陰線を形成して1月の安値を下抜けたが、日経平均もそれに似通った波動で昨年来安値更新となった。
以前にも取り上げたが昨年12月の大納会直前に、複数の市場関係者に新年相場(22年相場)の見通しを聞いた際、大半が相場の先行きに強気な見方を示していた。インフレに対する警戒は一過性のもので、これを気にしてリスクを取ることに躊躇したら、ここからの大相場を享受できないという論調。実際、パウエルFRB議長も昨年12月のFOMC後の記者会見で「パンデミックとリオープン(経済再開)に関連した需給不均衡が高水準のインフレを引き起こしており、これらの問題は想定よりも長期化しているが、22年末までにはインフレは長期目標に近い水準に低下すると予想している」というコメントを残している。
しかし、皆がインフレに対するリスクを気にしながら、ともすれば需要なき物価上昇であるスタグフレーションの影を視界の端に捉えながら、危なそうに見えるけどまだ大丈夫、と高を括る姿勢は株式市場では大きく裏切られることが多い。年明け以降の日米株式市場は、「まだはもうなり」という相場格言の典型となった。
中国の古典に「千丈の堤も螻蟻(ろうぎ)の穴をもって潰(つい)ゆ」という言葉があるが、どんなに頑丈な堤防であっても、“蟻の一穴”が崩壊の端緒となり得る。昨年秋口くらいまではインフレの高進は小さな穴であったが、次第にその幅を広げ全体を瓦解させるに至った。物価上昇が企業収益や経済成長を伴うものであれば、それは中央銀行の金融引き締め策と調和する形で、相場の上昇トレンドは持続できる。しかし、今のインフレは、川上から川下に降りてくるインフレであり、超金融緩和環境を土壌としたコモディティ価格の高騰が影響している。新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響があまりに強烈で、それに対応したなりふり構わぬヘリコプターマネー政策だったが、慌てて中止し回収に動かなければならなくなった。ウクライナ問題はエネルギー価格の上昇圧力と相まって懸念が強まったことは確かだが、この問題自体は長い間くすぶっていた有事リスクであり降って湧いた話ではない。「コロナバブルの終局」というのが、今の環境を的確に表現している。
株式市場にとって怖いのは、株価が下がってもインフレの高進が止まらない限り、中央銀行は金融の蛇口を緩めることができない状況に置かれていることである。東京市場でもこのまま行けば、日銀の超金融緩和政策の継続が担保されない状況となる。金利差で円安となった時に輸入コストが上がりスタグフレーションの波に晒されてしまう。マイナス金利政策を終了し利上げに動くタイミングが早晩訪れるとみておいた方がよい。ただし、業績相場の観点から23年3月期の企業収益見通しが強いものであれば株価の復活は十分可能なシナリオだ。現状を見渡す限り企業の成長鈍化は否めないが、バリュエーションで買える水準はどこなのかを冷静に見極めることが肝要となる。
あすのスケジュールでは、2月の東京都区部消費者物価指数(CPI)のほか、21年12月の景気動向指数改定値など。また、東証マザーズ市場にマーキュリーリアルテックイノベーター<5025>が新規上場する。海外では、1月の米個人所得・個人支出、1月の米耐久財受注、2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2022年02月24日 17時48分