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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」―(17) 下落時の底打ち判断と売買戦略

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆リバウンド狙いの座標軸となる「カイリ率」&「移動平均線」

 株探の各ページの最上部にある「探検隊」の検索窓に、4桁の証券コード「9984」を入力し「検索」ボタンをクリックしてください。すると、ソフトバンクグループの個別銘柄のページが表示されます。次にソフトバンクグループの銘柄欄の下にある「チャート」をクリックして、多機能チャートを表示させます。通常であれば、上段のエリアに「ローソク足」と「移動平均線」が、下段のエリアに「出来高」が表示されます。

 この「出来高」を「カイリ率」に変更しましょう。「カイリ率」は「移動平均カイリ率」のことで、下段のエリアに折れ線で表示されます。手順は、チャートの上に並んでいる設定項目の中から「指標 エリア2」の「カイリ率」のラジオボタンをクリックすることで表示を切り替えられます。

 株価は一般的に、移動平均線に引き寄せられるように動く習性があります。そのため、株価が移動平均線から上か下かにカイリしたら(離れたら)、再び移動平均線に引き寄せられて動く事象が多くみられます。移動平均カイリ率は、その株価が移動平均線からどの程度離れているかを数値化したチャートなのです。

 カイリ率の値がプラスになって大きくなればなるほど、株価は移動平均線から上方に離れることになります。そのため、プラスのカイリ率が通常の推移を超えて大きくなると、株価は買われ過ぎの水準にあると考えることができ、いずれはその買われすぎの状態は修正され、移動平均線に吸い寄せられて下落することになります。

 反対に、数値がマイナス方向に大きくなればなるほど、株価は移動平均線から下方に離れることになります。そのため、マイナスのカイリ率が通常の推移を超えて大きくなると、株価は売られ過ぎの状態にあると考えることができ、いずれは移動平均線に吸い寄せられて株価は上昇することになります。移動平均線から株価が上に、あるいは下に、どの程度離れているかを確認することにより、買われ過ぎか、売られ過ぎかを分析することができるのです。


図1 ソフトバンクグループ <9984> 日足(2021年1月~22年2月4日)
【タイトル】

 では、ソフトバンクグループを例にとって移動平均カイリ率の動きをみてみましょう。図1は2021年1月からの日足チャートで、上段のエリアに移動平均線(5日、25日、75日移動平均線)、下段のエリアに25日移動平均カイリ率(赤い線)を表示させました。

 移動平均カイリ率のチャートの見方ですが、右側に書いてある数値を基準に考えます。「0%」は株価の位置が移動平均線とトントンの水準であることを意味し、0%より上がプラス、下がマイナスで表示されます。0%より上のプラスのゾーンを推移しているのであれば、株価は上昇基調にあり、地合いは良いと考えられます。反対に、下のマイナスのゾーンで推移しているようであれば、株価は下落基調にあるため地合いは悪いと考えることができます。

 一般的には、移動平均カイリ率で売買タイミングを分析する方法としては、株価が上昇しカイリ率がプラス5%に近づくと調整局面への転換に注意する必要が出てくる水準とされ、さらにプラス10%に近づくとかなり過熱している状態となり、天井打ちのタイミングが近づいているといわれます。反対に、株価が下落しカイリ率がマイナス5%に近づくと株価の反発が意識される水準とされ、さらにマイナス10%に近づくと悲壮感も高まるほど売られすぎの状態にあり、いよいよ底打ちに向かうといわれています。このようにマイナス10%程度まで暴落したときは、株価はすでに十分に安い水準にあるわけですから、底打ちを見極めた後に買っても安く買えるでしょう。急ぐ必要はありません。

 これらを踏まえて、ソフトバンクグループの株価動向について考えてみましょう。株価は21年3月16日の高値1万0695円から直近の5000円を割り込む水準まで、時おりリバウンド上昇することはあっても概ね下落しており、下降トレンドが続いていることがわかります。株価が下落している時の「カイリ率」はマイナスの数値で表示されますが、このチャートを見ると、一時的にリバウンド上昇している時を除いて、21年5月以降はマイナス圏で推移する期間が多くを占めています。


図2 ソフトバンクグループ <9984> 日足(2021年9月~22年2月4日)
【タイトル】

 図2は直近の日足の動きがわかるように、図1よりも表示する期間を狭めたチャートです。下段のカイリ率のチャートでは、左上の囲みの中に「カイリ率」の数値が赤色で表示されますので、具体的な数値はこの囲みで確認しましょう。日足が前日比464円下げて大陰線を付けた22年1月27日には、「カイリ率MA(25)-12.76」とあるように、移動平均カイリ率はマイナス12.76%まで拡大していることになります。なお、前日の26日はマイナス4.59%でした。この数値の変化からわかることは、26日にマイナス5%程度の数値でそろそろリバウンド上昇が期待できるのではという状況になっていたものが、翌日に一気にマイナス10%を超えるほどに悪化したことで「陰の極」と呼ばれる売られすぎの状態となり、底打ちに近づいた可能性があることです。実際に、株価は翌28日に目先の底を打って切り返していますが、現段階で大底を打ったかどうかは、まだそう時間が経っていませんので判断するのは難しいところです。

 このように株価が下げ続ける下降トレンドでは、株を売買する時の戦略はリバウンド上昇を狙う「逆張り」となります。下降トレンドにある場合には株価の下落がいつ終了するのかは誰にもわかりません。また、リバウンドをみせてもそれがどの程度のリバウンドになるのかもわかりませんので、短期売買が基本になります。

 どこまで下がり、どこまで上がるのか誰にもわからないからこそ、売買戦略を立てる際に活用したいのが移動平均カイリ率の名前にある「移動平均線」となります。前述したように、株価は移動平均線に引き寄せられるように動く習性があります。移動平均カイリ率の目安として一般的に利用されているのが25日移動平均線です。スイングトレードでは25日移動平均線を基本に考え、カイリ率がマイナスになれば上の25日移動平均線に向けて上昇する可能性を、反対にカイリ率がプラスになれば、下の25日移動平均線に引き寄せられるように下落する可能性を頭に置いて投資を行います。なお、投資スタンスによって、使う移動平均線の期間は変えてもよいとは思いますが、私は25日移動平均線をおススメします。

 ソフトバンクグループの場合、カイリ率は前述したようにいったん底打ちを示唆しました。25日移動平均線に向けての上昇が期待されるところですが、他の75日移動平均線や200日線移動平均線はまだ下向きのままですから、中長期的にはいまだ株価は下降トレンドにあると分析できます。ということは、足元はカイリ率がマイナスとなれば移動平均線に向けた短期的な上昇が期待できるにしても、株価が本格的な上昇となる条件(中長期移動平均線が上向く)はまだ整っておらず、底打ちが完全に確認できる状況にはないということになります。デイトレードや一泊二日というような短期での売買が難しいと感じるのであれば、ムダな売買は避けるべき時期と言ってもよいかもしれません。

 私たち投資家はつい「株価がだいぶ下がったからそろそろ底だろう」と欲に駆られて、まだ株価が値下がりしている途中で買ってしまいがちです。しかし、底打ちがいつやってきて、どのくらい値下がりするのかは誰にもわかりません。株価は基本的にトレンドが転換するまでそのトレンドが継続しますから、私たち投資家はトレンドを味方にする投資手法を身に付けて、自ら損失を発生させてしまうような売買を減らしていかなければならないのです。もちろん、投資家はそれぞれ得意な投資手法は異なるでしょうから、順張りでも逆張りでもどちらを選んでもよいでしょう。

 ただ、投資というのは孤独なものですから、意のままにならない株価を眺めてひとりで悶々としている人も多いかもしれません。そんな時に冷静に判断することは至難の業だと言えるでしょう。だからこそ、過度に悲観的にも、そして楽観的にもならずに相場を分析するための手法の一つとして、移動平均線と株価の位置関係を移動平均カイリ率で確認しながら売買戦略を立てていきたいものですね。

 


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