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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─年内に始まる大インフレ相場に備えるとき

株式評論家 植木靖男

「年内に始まる大インフレ相場に備えるとき」

●下落重ねる日本株だが、米国株に比べ下値抵抗力も

東京市場は、ひょっとして新年最初にして最後の大波乱相場に遭遇しているのではないか。

 年初、1月5日の日経平均株価の戻り高値2万9388円から1月21日安値まで2200円も下げて、この間、陽線はわずか3本、個別銘柄も各業種も揃って総崩れとなっている。

 この背景は何か。主因は、やはり米国の金融政策の大転換にあるようだ。これまでFRB(米連邦準備制度理事会)はこの1年半、保有資産を倍増させ、900兆円もの資金を市中にばらまいた。さらに低金利政策の効果も加わり、株価は押し上げられた。しかし、こうした政策はいつまでも続かない。原油高、コロナ禍による物流混乱、労働力不足などによりインフレが芽生えたのだ。

 中央銀行は物価を安定させるのが使命である。FRBは動き、すでにテーパリング(量的緩和の段階的縮小)を開始しており、本年3月からは政策金利を引き上げるとみられている。「何十年ぶり」という言葉があるが、「そうなってほしくない」と願う当事者にとって、それが現実のものとなった時の衝撃は大きい。米国の消費者物価指数の上昇率が「39年ぶりの高水準」となったことは、おそらくはたから考える以上に、パウエルFRB議長を震え上がらせるものだったのではないか。だとすると、きわめてタカ派的な行動に走ることは十分考えられよう。1月26日のFOMC後には議長の記者会見がある。上記を踏まえて、議長の発言に注目したい。

 一方、国内の材料はどうか。消費者物価指数の前年比伸び率は、未だ日銀が目標とする2%にも達していない。故に日銀は欧米の金融政策の大転換に追随することなく、従来通り異次元の緩和政策を維持する方針だ。しかし、だからといって株価が上がるわけもなく、足元では日米市場の連動性により下落を重ねている。それに新型コロナウイルスのオミクロン型の感染急拡大が一段の人手不足と経済活動の停滞を招き、収益悪化につながるというリスクもある。

 とはいえ、日米の株価の立ち位置は異なることは事実だ。昨今、米国株は引けにかけて売りが増えている。しかし、日本株はむしろ後場に若干でも戻りに入ることが多い。つまり、日本株の方が下値に抵抗力があることの証しだ。

●大型バリュー株有利の展開に

 では、今後の株価をどうみたらよいのか。過去の大きな下げをみると、日柄的には日経平均株価における経験則からも、ここからの下げは5日から10日ぐらいで底値圏に入るとみる。こうした大きな値動きになると、底入れから立ち上がるパターンはいつもの通りであろう。1月末から2月上旬頃に底値圏に到達しそうだ。

 冒頭に新年最初にして最後の波乱相場としたが、いったん立ち上がれば、今度は2024年頃まで上昇相場が続くと考えている。

 その核となるテーマはインフレである。平成バブルの時は、消費者物価の伸び率は2~3%の水準に達していたが、当時は3年間で100円もの超円高局面にあり、物価の上昇は帳消しとなった。しかし、今回は円安局面にあり、日銀の目標である2%などあっさり抜くとみてよい。逆に抑止しようとしても日銀にはその手段はなく、手に負えなくなるようにみえる。となれば、インフレヘッジには株式が最も賢い対象であろう。

 さて、底入れ後の物色対象はどうなるのか。昨年末あたりより、米国では金融引き締め策への警戒から10年物国債利回りが上昇し、これを受けてこれまでの相場を牽引してきたグロース株が低迷する一方、これに代わってバリュー株の台頭が際立っている。

 ちなみに米国の代表的な小型株指数であるラッセル2000指数は年初から急落が続いている。中小型株が回避されているのだ。わが国でもマザーズ指数は昨年11月高値から一度も買い手掛かりがないまま下落基調にある。したがって、今後は大型バリュー株有利の展開となりそうだ。その中でも、業績のよい、PER、PBRの低いバリュー株がよさそうだ。

 典型的な例としては、値上げ必至の食品株、石油株、さらにコロナ収束を考えて航空株、さらに国土強靱化・インフラ投資増からゼネコン株、また貴金属関連株などが考えられる。いずれにしても、新たな上昇相場では慌てることなく、じっくり見極めたうえでの投資が肝要だ。長い道のりなのだから。 

2022年1月21日 記

株探ニュース

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