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【特集】天候要因の不安定さなく脚光、躍動前夜の「バイオマス発電」関連株 <株探トップ特集>

政府は再生可能エネルギーの普及拡大に注力しているが、太陽光や風力は天候に左右されるといった課題がある。そこで、燃料さえ確保できれば安定した発電量が見込めるバイオマス発電が注目されている。

―廃棄物再利用や減少につながり循環型社会構築に寄与、関連企業の商機拡大―

 岸田文雄首相は6日、第2次政権発足後初の所信表明演説に臨んだ。このなかで気候変動問題について「新たな市場を生む成長分野へと大きく転換する」と述べ、温室効果ガスの「2050年カーボンニュートラル」及び「30年度に13年度比で46%削減」の実現に向け、再生可能エネルギーを最大限導入するための規制の見直し、及びクリーンエネルギー分野への大胆な投資を進めるとした。株式市場で再生可能エネ関連の注目度は依然高く、今回はそのなかでも「バイオマス発電」を取り上げてみた。

●太陽光や風力を補完

 バイオマス発電とは、木質資源や下水汚泥、家畜の糞尿、生ごみなどの生物資源(バイオマス)を燃料とした発電方法で、再生可能エネのひとつ。植物は燃やすと二酸化炭素(CO2)を排出するが、成長過程では光合成により大気中のCO2を吸収するので、排出と吸収によるCO2のプラスマイナスはゼロになり、カーボンニュートラルなものとされている。また、燃料として未活用なものを利用することから、廃棄物の再利用や減少につながり、循環型社会の構築に寄与することにもなる。

 政府が10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、再生可能エネの普及に最優先で取り組むことが明記されたが、 太陽光発電風力発電は発電量が天候に大きく左右されることが課題だ。一方、バイオマス発電は燃料さえ確保できれば安定した発電量が見込め、貴重な再生可能エネのベース電源として活用することが可能。例えば、日中は太陽光発電、夜間はバイオマス発電というように需要にあわせて補完的に利用することなどが期待されている。

●関連ビジネス本格化

 こうした特長が着目され、各企業がバイオマスエネルギー関連ビジネスの取り組みを本格化させている。

 伊藤忠商事 <8001> 、九州電力 <9508> 子会社の九電みらいエナジー、東急不動産ホールディングス <3289> 傘下の東急不動産は11月、3社が共同出資する「田原グリーンバイオマス」(東京都港区)を通じて、愛知県田原市臨海工業地域内田原4区にバイオマス発電所を建設すると発表。22年11月に着工し、運転開始は25年4月を予定している。同事業では伊藤忠が木質ペレットの長期供給を行い、九電みらいエナジーが建設・運転のほか技術全般のサポートを担当、東急不が再生可能エネ発電事業の運営ノウハウを提供することで長期安定的な事業運営を目指す。施工は東洋エンジニアリング <6330> で、発電設備一式の設計、機器資材調達、建設工事、試運転までのEPC(設計・調達・建設)業務を一括請負で実施するという。

 エクシオグループ <1951> は11月、福島県古殿町で木質バイオマスガス化発電所建設に向けた実証試験設備の建設に着手し、22年2月から実証試験運転を開始する予定だと発表した。実証試験で所定の性能確認をしたのち、発電所建設に移行する計画で、商業運転は24年3月を予定している。

 中部電力 <9502> 、東邦ガス <9533> 、東京センチュリー <8439> の3社は10月、ジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 傘下のJFEエンジニアリングが設立した「田原バイオマスパワー」(横浜市鶴見区)に出資するとともに、愛知県田原市で国内最大級の木質バイオマス専焼発電所を事業化することを決めた。EPCはJFEエンジニアリングが担当し、22年6月着工、25年8月末の完成を目指す。

 レノバ <9519> は8月、出資する「唐津バイオマスエナジー」(東京都中央区)を通じて開発を進める佐賀県唐津市での大型バイオマス発電事業に関する最終投資決定を行った。同社は木質バイオマス専焼発電所の運営や建設に関する知見を持っていることが強みで、7月には苅田バイオマス発電事業を行う持ち分法適用関連会社の「苅田バイオマスエナジー」(福岡県苅田町)を子会社化した。

 また、山口県下関市で長府バイオマス発電所の建設計画を推進している「長府バイオパワー」(山口県下関市)には、石油資源開発 <1662> や東京エネシス <1945> 、長府製作所 <5946> 、川崎近海汽船 <9179> [東証2]などが出資。「熊本クリーンエナジー」(熊本県宇土市)からバイオマス発電プラントを受注しているタクマ <6013> や、「坂出バイオマスパワー」(香川県高松市)からバイオマス専焼発電所の発電設備を受注した住友重機械工業 <6302> などにも注目したい。

●燃料確保に向けた動きも

 バイオマス発電が本格的に普及するためには燃料の確保が重要となるが、東京大学と出光興産 <5019> 、日本郵船 <9101> は11月、出光興産が保有する豪州クイーンズランド州エンシャム石炭鉱山の遊休地を活用して、石炭と混焼可能なバイオマス発電燃料用植物ソルガムの栽培試験に関する共同研究を実施することで合意した。ソルガムは種蒔きから約3ヵ月で収穫できることから年間複数回の収穫が可能で、出光興産は昨年実施した試験で燃料化できることを確認している。

 イーレックス <9517> は11月、ベトナムのフーイエン省との間で、再生可能エネとしてのバイオマス燃料の開発・調達・加工・輸送に伴う事業、及びバイオマス発電所事業全般での協力関係推進に向けた覚書を締結。また、サムスン物産(韓国ソウル市)とは、国内外での非効率石炭火力発電へのバイオマス燃料供給事業などに関する業務提携に向けた検討を開始する。

 Jパワー <9513> は11月、カーボンニュートラルな火力発電の実現に向けて米エンビバ・パートナーズ<EVA>と覚書を締結した。エンビバは年間620万トンの木質ペレット燃料の製造能力を持っており、両社は石炭火力発電所での木質バイオマスエネルギーの利用及びサプライチェーンについて共同で検討するという。

 このほかでは、PKS(パーム椰子殻)と木質ペレットといったバイオマスエネルギーの安定調達に取り組んでいる太平洋興発 <8835> も要マークだ。7月に発表した中期経営計画(21~23年度)ではペレットなどのバイオマス関連の事業規模を3年間で4倍に拡大することを掲げており、今後の動向から目が離せない。

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