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【特集】新成長株「次世代ヘルスケア関連」急浮上、予防医療や健康促進など重要視 <株探トップ特集>

健康維持を重視する「次世代ヘルスケア」と呼ばれる分野が関心を集めている。「予防医療」「健康促進」「健康寿命延長」といったテーマに関係するビジネスが活発化している。

―超高齢社会の進行で健康維持が課題に、健康管理アプリなどが続々登場へ―

 日本が突き進む「超高齢社会」の姿を映した問題が至る所で目に入る。高齢化問題は先進国を中心とする共通の悩みだ。ただ、そんななか、「予防医療」や「健康促進」などの観点から超高齢社会での医療問題を捉え直す動きが活発化している。「次世代ヘルスケア」とも呼ばれる動きの台頭を株式市場は評価しつつある。

●人々の健康維持管理への関心が高まる

 いまや超高齢社会に突入した日本。その社会の歪みがいたるところで表面化している。長期間引きこもりとなってしまった子供を高齢となった親が支え、結果的に社会から孤立してしまうという問題が提示されて久しい。これは「8050」問題とも呼ばれ、80歳代に高齢化した親が引きこもり状態が続いたままの50歳代の子供の生活を支援している状態を指す言葉だが、問題は解決されぬまま時は移り、今や90歳代の親が60歳代の子供の生活を支える「9060」問題へと状況は深刻化している。また、一部調査によると全国の社長の平均年齢は62歳との報告も出ており、経営者の高齢化傾向は顕著だ。これらは、超高齢社会に至っている日本の全体像を鑑みれば、必然とも言えよう。

 さて、高齢化の進展状況はまちまちではあるものの、これは日本に限った問題ではなく、世界共通の悩みの種だ。そんななかで必然的に人々の関心は、健康の維持管理・増進を指す「ヘルスケア」に集まる。足もとで言えば、予防医療・健康促進・健康寿命延長を支援する製品・サービスを取り扱う展示会の来場登録者は昨年同時期に比べて大幅増となっているようだ。昨年はコロナ禍の影響が大きかったとはいえ、人々の関心の強さがうかがえる。

●米国ではソックスを活用した糖尿病の疾患対策も登場

 「ヘルスケア」という言葉で一括りにしてしまえば、昔からある言葉で、あまり新鮮味や面白味がないようにも感じられる。しかし、実際には急拡大する非常に大きな市場が待っている。例えば、米アップル<AAPL>のアップルウォッチのヘルスケア機能が話題になったが、今や「ウェア(衣料)」「リング」「ソックス」など「ウォッチ」以外にもヘルスケアの役割は拡大している。

 具体的な事例として、米Siren(カリフォルニア州)をみてみよう。同社は糖尿病性足潰瘍のリスクを軽減することを使命としている新興企業だ。同社によれば、糖尿病患者は、生涯で足潰瘍(重症の場合は足全体が腐ってしまう)を発症するリスクが30%を超えるもよう。しかし、同社のスマートソックスを用いた温度モニタリングによって、糖尿病性足潰瘍を最大87.5%減少させることが示されているのだ。スマートフォンは不要で、充電する必要もなく、洗濯機で洗えるなど高齢者にも非常に優しい設計となっている。

 日本では、遠隔医療サービスなどが特に話題になるが、その他にも人工知能(AI)などの発達で画像解析の能力も向上しており、新サービスが生まれている。また、日本ではまだそれほどは浸透していないが、「FemTech(フェムテック)」という女性が抱える健康課題を解決しようという領域もある。もちろん、怪しい「医療もどき」のサービスがまん延することのないよう、政府の的確な「規制と緩和」による支援も今後欠かせないが、これまでは、医療機関に直接行かなければ把握することのできなかった健康情報、受けることのできなかったサービスなどがその場で検査・把握できるような世界に向かって社会は既に走り出している。そこで以下では、次世代ヘルスケア関連株をピックアップした。

●MRT、ギフティ、メドピア、QDレーザなど

 ギフティ <4449> 、インテージホールディングス <4326> ~キャッシュレス決済連動の栄養管理アプリ「SIRU+(シルタス)」を運営するシルタスは今年2月に約5億円の資金調達を実施しており、ギフティ、インテージH傘下のインテージなど4社が増資を引き受けた。「SIRU+」は買い物データから栄養を分析し、食材やレシピを提案するアプリであり、スーパーマーケットなどと連携。コロナ禍において一段と健康志向が高まるなか、自身の栄養状態などの健康管理に対するニーズは高まりやすく、導入するスーパーや連携する決済なども拡大することが期待される。ギフティは自社のeギフトと連携することでマーケティングDX推進を支援するほか、インテージは栄養状態に合わせた、小売業への商品提案なども支援する。

 MRT <6034> [東証M]~医師の転職サポートや人材紹介サービスのほか、健康医療相談の「Door.」、スマホでできる遠隔診療アプリ「ポケットドクター」を提供する。「ポケットドクター」は2016年にオプティム <3694> と提供を開始した国内初となるスマホ・タブレットを用いた遠隔診療サービスである。株価はMRTが直近で21年12月期の上方修正を材料視されて動意を見せる一方で、オプティムは調整基調を継続していることもあり、バリュエーション面でもMRTの方に関心が集まりやすいだろう。

 メドピア <6095> ~医師専用コミュニティーサイト「MedPeer」を運営。医師・医療現場向けのドクタープラットフォーム事業と健康増進・予防などのヘルスケアソリューション事業の2軸。ヘルスケアソリューションでは、企業向けとしてクラウド型健康管理サービス、管理栄養士による食生活指導など特定保健指導サービス、医師によるオンライン医療相談であるライフログプラットフォーム事業を手掛けている。21年9月期は売上高、利益ともに過去最高を更新したほか、22年9月期についても大幅増収増益を見込む。決算評価から足もとリバウンドも1月高値からは半値水準であり、見直し余地は大きいだろう。

 デジタルガレージ <4819> ~エーザイ <4523> と共同で認知症に関わるスタートアップとの協業育成プログラム「Onlab Bio Dementia」を始動した。同社が有するAI、ブロックチェーン、デジタルヘルスなどデジタル領域での事業開発の実績とエーザイが有する認知症領域における豊富な経験知を組み合わせ、認知症に関わるスタートアップの事業成長を支援する。株価は押し目狙いのスタンスで報われそうだ。

 QDレーザ <6613> [東証M]~通信・産業・医療・民生用の広い分野で半導体レーザソリューションを提供している。昨年1月に視力障害向け医療機器「RETISSAメディカル」が製造販売承認を取得。網膜走査型レーザアイウェアRETISSAはサングラスや眼鏡と変わらない外観で視覚を支援するものであり、新規事業として成長が期待される分野だ。株価は2月高値2070円をピークに調整を継続しているものの、800円水準での底固めから出直りを見せてきており、リバウンド狙いとなろう。

 カラダノート <4014> [東証M]~「血圧ノート」「お薬ノート」の他、快眠音アプリ「ぐっすリン」といった疾患管理アプリを提供している。その他、陣痛間隔計測アプリ国内トップシェアの「陣痛きたかも」なども手掛けており、FemTech関連としてのテーマ性も強い。直近では、マネーフォワード <3994> 主催の「Forward Award 2021」において「イノベーション賞」を受賞している。

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