【特集】馬渕治好氏【2021年も年末相場が接近、強調展開は続くか】(2) <相場観特集>
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
―欧州で新型コロナ再拡大も底堅さ発揮、ここからの展望は―
週明け22日の東京株式市場は、前週末に欧州株市場が全面安となったことに加え米国株市場でもNYダウが下値模索の動きを続けたことから、朝方はリスク回避ムードとなった。ここにきて欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大が警戒されている。ただ、押し目買い意欲も旺盛で、日経平均は下値に対しても底堅さを発揮、売り一巡後はプラス圏に浮上した。東京市場の年末相場に向けての思惑が交錯するなか、今後どういった動きが予想されるのか、第一線で活躍を続けるベテラン市場関係者2人に話を聞いた。
●「日経平均は年内に年初来高値圏再浮上へ」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
東京株式市場では、日経平均株価が目先方向感の定まらない動きとなっているが、ここから年末にかけて上値指向の強い地合いとなることが予想される。ドイツやオーストリアで新型コロナウイルスの感染拡大が再び顕著となっており、これにより景気拡大に歯止めがかかるとの思惑が前週末の欧州株安や米国株市場での景気敏感株への売りを誘発したが、過度に懸念する必要はない。足もと原油市況の急落も、景気先行きに対する警戒感が反映されたものであり、これは物価の上昇は景気と連動していることを裏付けている。需要なきコストプッシュインフレ、いわゆるスタグフレーションへの懸念は薄まっている。株式市場にはプラス材料だ。
米国では今週末26日がブラックフライデーとなり、年末商戦が本格化することになる。しかし、実際はこのブラックフライデーを待たずして既にセールを始めたところも多く、11月の小売売上高は昨年と比較しても好調な数字が予想される。これは個人消費に対する自信につながり、半導体関連などと足並みを揃え消費関連が米国株市場の強気の地合いを後押しすることになりそうだ。NYダウは年末までに3万7000ドル台に乗せるとみている。また、ナスダック総合指数も最高値圏を進む展開となるだろう。
東京市場では米株高に牽引される形となり、ここからの日経平均は上値追い余地が大きい。年内に日経平均は9月中旬につけた年初来高値水準の3万700円どころを目指す展開が予想される。下値については浅く、仮に調整色を強める場面が生じても2万9000円台を割り込むようなことはないと考えている。岸田政権の政策に対するマーケットの反応が鈍いのは、金融所得課税の強化を検討していることが嫌気されていると思われる。しかし、金融所得課税の強化は実施されるとしても再来年以降の話で時間的猶予は大きく、その前の段階で財政投入による積極的な経済対策が、企業業績に限定的とはいえ恩恵を与え、株式市場にも良い形で反映されることになるだろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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