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【特集】原油の“逆襲高”続くか、緊迫感高まる石油エネルギー相場の行方 <株探トップ特集>

原油価格は、昨年春のマイナス価格から一転7年ぶりの高値圏に上昇した。これから需要期を迎える冬場に向け、原油相場は一段と騰勢を強めるのか、それとも下落に転じるのか。

―11月OPECプラス会合が焦点、冬場の需要期を控え正念場迎える―

 足もとで 原油価格が約7年ぶりの水準に上昇している。この原油高は、世界経済にインフレ懸念を引き起こす大きな不安要因になっている。コロナ禍からの経済活動再開(リオープン)が原油に需要増をもたらした。また、原油の供給増に向けた制約も価格上昇を呼んだとの見方は少なくない。ただ、その一方で昨年春の急落から一転して急伸した原油価格には高値警戒感も強まっている。原油が需要期を迎える冬場に向け、原油相場はどう動くのか。

●昨年春のマイナス価格から一転、需給逼迫で7年ぶり高値に

 原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は18日に一時、1バレル=83.87ドルまで上昇し7年ぶりの水準に達した。年初には50ドル割れの水準にあった原油価格は上昇を続け、夏場の調整局面を経て10月に入ってからは80ドル台まで駆け上がった。コロナショックを背景に昨年4月には一時、マイナス40ドルと衝撃的なマイナス価格を記録した原油相場だが、昨年の底値から120ドル近くの上昇を演じるなど、劇的な値動きが続いている。

 10月以降の原油価格高騰の大きなきっかけとなったのが、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどからなるOPECプラスが、協調減産の縮小ペースを維持すると決めたことだ。OPECプラスはコロナ禍を受け昨年5月から協調減産を行ってきたが、足もとでは価格上昇を背景に、協調減産を一段と縮小し増産することが期待されていた。しかし、10月会合で従来方針が維持されたため、需給逼迫懸念が強まり価格は上昇基調を強めた。

●経済再開に伴う需要増や天然ガス高騰による代替需要も

 また、需要面ではコロナ禍からの回復で世界的な経済再開に向けた動きが始まるなか、原油需要は強まった。特に見逃せないのが欧州を中心に天然ガス価格が急騰するなか、電力燃料向けに原油に代替需要が発生したことだ。このため、欧州などで今年が厳冬となり電力需要が増大した場合、原油価格は一段と上昇することが警戒されている。

 長期的視点からは、脱炭素社会に向け原油への需要は低減していくトレンドが予想されている。再生可能エネルギーへの投資が膨らむ一方、原油開発への投資は手控えられる方向にあることも、原油の需要拡大局面では価格が一気に急騰する要因だ。更に、従来は原油価格の上昇局面では米国のシェールオイル生産が活発化し、需給を均衡化させてきた。しかし、昨年春の原油価格急落時には大手企業の破綻も経験したシェールオイル各社は、いまのところ増産に慎重な姿勢を続けている。

●11月OPECプラスでの増産確率は5分5分

 冬場に向け懸念が強まる原油相場だが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は今後のポイントとして「11月4日に予定されているOPECプラスの会合に注目している」という。前述のように10月の同会合では従来方針を維持したことが、原油価格の急伸を招いた。しかし、原油価格高騰を背景に米国や日本は産油国に増産を要請するなど11月会合を前に状況は緊迫化している。

 ただ、OPECプラス内でも増産に応じられるのはサウジアラビアやロシアなどの一部にとどまる。増産余力がない国にとってOPECプラスとして増産を進めることは、価格下落につながりかねないだけに受け入れ難い状況がある。OPECプラスは内部に対立を抱えており、一枚岩ではない。このため「11月の会合で増産が決まるかどうかは5分5分ではないか」と芥田氏はみる。

●WTI価格は90ドル超へ上昇か、70ドル台前半へ下落か

 そんななか、11月のOPECプラス会合で積極的な増産は見送られ、現状維持となった場合、「WTI価格は年末に向け90ドルを意識する上昇基調を強める可能性」(芥田氏)が指摘されている。一方、増産でまとまった場合は「年末に向け70ドル台前半への下落も」(同)という。今年は欧州や米国が厳冬となるかなど天候要因にも左右されるものの、WTI価格は一段の高騰か、あるいは一転して下落基調に向かうのか、11月以降に正念場を迎えそうだ。

 原油価格が一段の上昇基調となれば、INPEX <1605> や石油資源開発 <1662> 、ENEOSホールディングス <5020> 、出光興産 <5019> 、コスモエネルギーホールディングス <5021> など石油関連株が人気化しそうだ。日揮ホールディングス <1963> や千代田化工建設 <6366> [東証2]などプラント株も注目される。液化天然ガス(LNG)を含む電力向けの燃料需給のタイト化は原子力発電への期待を呼び起こし、東京電力ホールディングス <9501> や助川電気工業 <7711> [JQ]、木村化工機 <6378> などにプラスに働こう。

 一方、原油価格が下落すれば金利低下観測からソフトバンクグループ <9984> や東京エレクトロン <8035> 、レーザーテック <6920> などハイテク系銘柄が見直されそうだ。

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