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【市況】明日の株式相場に向けて=トヨタ電動化戦略で「株高予備軍」開花へ

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比173円安の3万8円と9日ぶりに反落を余儀なくされた。日経平均は前日まで8連騰で、この間に2500円以上も水準を切り上げる驚異的な戻りを演じたわけで、ここでひと押し入れるのは当然の調整といってもよい。きょうは香港株や韓国株の下げが目立ったほか、米株価指数先物も下値を探る動きをみせており、ここで日本株だけが買い続けられる理由は見当たらない。しかし、押し目買い意欲もそれなりに活発だったといえる。大引け間際には、あすのメジャーSQ算出を意識したテクニカル的な売買であったかもしれないが、意地をみせて日経平均3万円大台をキープして着地した。

 問題はメジャーSQ通過後の株価だ。前週は海外投資家の現物買いが顕著で全体相場浮上の原動力となったが、やはり3万円大台から上はGPIFのポジション調整などそれなりに売り圧力も強い。政局の動きを見極めつつ当面は3万円ラインを上限とするもみ合い局面に移行する可能性もある。

 きょうは電力株に買いが向かった。自民党総裁選の行方は現状ではまだ見えてこない。誰がなっても菅首相以外のミスターXであれば、自民党の過半数割れは回避できるとの見方が強い。しかし、株式市場は“河野太郎首相”を織り込むような動きとなっている。脱炭素関連に流れが向いたのも、脱炭素化推進に最も熱心とみられるのが河野氏。一方、脱原発の急先鋒でもあったわけだが、こちらは党内のバランスを勘案して、柔軟に「長期視野で」原発ゼロを目指すという方向にシフトチェンジした。政治家としてのしたたかさも持ち合わせていることは、むしろ株式市場的見地でもプラス材料。きょうの電力株買いは原発再稼働に柔軟姿勢をみせている河野氏の影響が大きい。

 一方、海外を見渡すと、きょう取引時間中に発表された8月の中国CPIとPPIの結果をみてもわかるように川上インフレに対し消費はそれほど盛り上がっていないことが分かる。米国でもその傾向は強く、以前にも当欄で触れたようにスタグフレーションの影が忍び寄っているようにもみえる。消費熱が盛り上がらないなかで利上げせざるを得ないような状況となれば、ゴルディロックス相場とは真逆の環境に陥る可能性もあり、これは杞憂とは言い切れないだけに来週発表される米国の経済指標には注意が必要となる。

 株式市場ではトヨタ自動車<7203>の存在感が高まっている。世界的な電気自動車(EV)シフトの動きを横にらみに、トヨタの電動化戦略に徐々に勢いがつき始めた。同社は2030年までにEVやハイブリッド車(HV)などの電動車をグローバルベースで800万台販売する計画を打ち出しているが、次第にその全容が明らかとなりつつある。7日にオンラインで開催した電池事業の説明会では30年までに研究開発や生産設備に1兆5000億円を投資すると表明、これが2次電池の性能試験を展開しているIMV<7760>などの株価を衝き上げるエネルギーを生んだ。

 この流れはトヨタのグループ企業や同社と取引関係のある会社の商機につながることは間違いなさそうだ。トヨタは売上高30兆円規模のまさに国内製造業の盟主であり、その経営戦略に同期する企業は高い確度で収益チャンスを獲得できる「高成長予備軍」といってもよい。トヨタ系のエンジンベアリングメーカーである大豊工業<6470>は同社が有する摩擦工学を中核技術に電動化をはじめとする技術革新に対応。強みとするダイカスト製品はトヨタの燃料電池車「新型MIRAI」に採用されるなどそのクオリティーは証明済み。また、トヨタ系自動車部品メーカーでは愛三工業<7283>も再浮上の機をうかがう。EV・HV向け電動車制御システムの事業化に傾注し新境地を開拓している。

 更にここからの動きを注視しておきたいのが8月下旬を境に戻り足を鮮明としている東海ソフト<4430>だ。同社は車載ソフトやIoT関連をビジネス領域とする独立系のソフトウェア開発企業だが、トヨタの電動化戦略ではキーカンパニーのひとつに位置づけられる。車載系の組み込みソフト開発は、EV向けで実力が発揮されやすくなり、中期的な需要獲得が見込めそうだ。

 あすはメジャーSQ算出日にあたる。海外ではロシア中銀が政策金利を発表するほか、8月の米生産者物価指数(PPI)の発表も予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年09月09日 17時17分

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