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【市況】明日の株式相場に向けて=政局カオスも個別は海運フィーバー

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比55円安の2万8015円と5日ぶりに反落。欧米株高の後ろをついていく形で前日まで日経平均は4日続伸となったが、きょうはあすのオプションSQ算出日を目前にひとまず買いポジションを軽くしておこうという意思が感じられる地合いとなった。もっとも前日まで4日続伸とはいっても、この4営業日を合計しても日経平均の上げ幅は400円あまりに過ぎず、ちょっとした波乱含みの下げが1回あれば軽く御破算にされてしまうような心許ない上げ足ではある。

 米国ではNYダウとS&P500指数が連日の最高値更新と気を吐いているが、この強さは米国だけではない。欧州ではフランスやドイツでも主要株指数が強力な上昇トレンドを形成しており、仏CAC40は21年ぶりの高値圏、独DAXは米国同様に過去最高値圏で強調展開を続けている。この差は何か。何よりも新型コロナウイルスの感染拡大が重荷となっているのは分かるが、デルタ株の蔓延に頭を悩ましているのは日本だけではない。市場が冷え込んでいるのはすべてが菅政権の失政とは言わないまでも、新型コロナ対応のまずさが大きいといえる。これは直近のIMFの世界経済見通しで21年の実質成長率予測に数字として端的に表されている。世界全体の成長率は6.0%だが、先進7カ国のなかで日本だけが下方修正され2.8%予想となっている。米国と英国は7%、フランスは5.8%、欧州の中では最も成長率が低いとみられるドイツでも3.6%という状況。「逆噴射ともいえるGoToキャンペーンを織り交ぜて4回にわたる緊急事態宣言を発令している。優柔不断ぶりが際立ち、しかも最後には誰も言うことを聞かないような状態で、感染爆発の様相を呈している。この先に政局不安もオマケでついてくる。海外投資家が日本株のリターンリバーサルに懐疑的とならざるを得ない理由はここにある」(中堅証券アナリスト)という。

 政局としては秋の総選挙がどうなるか。菅首相では戦えないという声がある一方、次の顔が見えないという問題もある。国民の支持を集めそうな河野太郎規制改革相は麻生財務相から「今回はまだ早い」というダメ出しがあり、実際、火中の栗を拾うことにもなりそうなだけに総裁選に出馬しにくい状況にある。安倍氏に近い位置で麻生氏にしても推しやすい高市早苗氏が急浮上しているが、正直、国民目線でどうなのかという不安もある。勝負の世界同様に政治の世界でも二強や三強という言葉は飛び交ってきたが、今は“無強”の時代。野党があまりに弱い。逆に言えば、大山鳴動する余地もなく、結局政治に大きな波乱はないということになるかもしれない。

 ただ、一方で日本株市場にポジティブな話も市場関係者の間から聞こえてくる。「今、海外投資家が危惧しているのは日本のコロナ感染者数増加や政局ではなく、中国の規制リスクだ。ネット関連や教育関連などソフト産業への統制強化の動きが目立つが、海外資本の自国企業に対する投資にも中国当局は神経質になっている。ソフトバンクグループ<9984>の株価にも暗示されているが、この先、世界の投資マネーは中国に向かいにくくなる。その分が日本に振り向けられるとの思惑が浮上している」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘だ。米中摩擦から派生した“漁夫の利”で日本買いに火が付くという寸法である。今の海運株や鉄鋼株、あるいは非鉄株への買いは、まさに日本の政治とは関係のないグローバル景気に敏感なセクターであり、足もと化学株へも資金が流入し始めた。市況関連株への資金の流れが今後はさらに太くなり、奔流を形成する可能性もある。

 個別では前週に取り上げた野村マイクロ・サイエンス<6254>が決算を好感してストップ高に買われた。半導体関連の主力銘柄は足もと向かい風が強いが、世界的な半導体不足を背景に、上値余地の大きい中小型株はまだ数多く眠っていると思われる。このほか直近取り上げたタカノ<7885>がいい動きをみせている。また、海運フィーバーが続くなか、物色の裾野が広がり始めている。倉庫株は注目で、大阪カジノ関連の切り口もある杉村倉庫<9307>や日本トランスシティ<9310>などをマークしてみたい。

 あすのスケジュールでは、対外・対内証券売買契約、7月の投信状況など。また、株価指数オプション8月物のSQ算出日にあたる。なお、国内主要企業の決算発表では富士フイルムホールディングス<4901>、ENEOSホールディングス<5020>、シチズン時計<7762>、荏原<6361>などがある。海外では6月のユーロ圏貿易収支、8月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)、7月の米輸出入物価指数など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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