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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (8)株価に業績は織り込まれているのか、チャートで判定しよう

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆株価チャートは多くの示唆が得られる「情報の塊」

 日東電工 <6988>が7月26日大引け後に発表した決算を参考に具体的に考えてみましょう(図1)。発表された決算によると、22年3月期第1四半期(4-6月)の連結税引き前利益は前年同期比72.0%増の296億円に拡大して着地しています。また、非開示だった4-9月期(上期)の業績予想は連結税引き前利益が前年同期比43.5%増の600億円に拡大する見通しを明らかにしました。


図1 日東電工 <6988> の22年3月期第1四半期(4-6月)決算速報
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 同社の決算発表をご覧になって、「上期は43%の増益かー、順調だな」と思う人も多いかもしれません。では、この決算発表を受けて株価がどう動いたのかを見てみましょう。図2は21年2月以降の日東電工の株価チャート(日足)です。7月26日の決算発表を受けて翌27日の株価は高いところでは8380円までありましたが、終値では8060円まで下落して取引を終えました。足元の株価の動きからは、業績は株価に織り込まれていると判断してよいでしょう。


図2  日東電工 <6988>  日足チャート(2021年2月~)
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 ここで、図3で2020年のコロナショック以降の同社の株価チャートを確認してみましょう。20年3月17日に4115円の安値をつけて以降、21年1月27日に1万0170円の高値をつけるまで一貫して上昇していることがわかります。しかし、1月に高値をつけて以降は一度下落した後に4月5日に9940円までいったん上昇していますが、その後は戻り売りに押される状況となっています。


図3 日東電工 <6988>  日足チャート(2020年2月~)
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 株を売買する際の分析方法では、株価チャートによるトレンド分析をぜひ使いましょう。トレンド分析をベースとする売買手法(買いの場合)は基本的に次の2つです。1つ目の売買手法は、上昇トレンドが継続している間は押し目を狙って株を買う「順張り」、2つ目は下降トレンドが継続している間はリバウンドによる上昇を狙って株を買う「逆張り」です。

 日東電工の株価はコロナショック以降は一貫して上昇していましたので、上昇トレンドが継続していたと考えられます。このような場合には順張りで押し目を狙っていけばよいわけです。しかし、1月以降はじりじりと戻り売りに押される状況が続いていますので、下降トレンドが継続していると言えます。下降トレンドが継続している場合には、逆張りでリバウンド上昇を狙えばよいことになります。
 
 業績が株価に織り込まれているのか、それとも織り込まれていないのかを判断する方法ですが、前述したように1月につけた高値1万0170円を4月に更新できなかった時点で、業績は株価に織り込まれている可能性が高いと判断してよいでしょう。また、株価チャートを見れば、4月の時点ですでに「5日移動平均線」が「25日移動平均線」「75日移動平均線」を下回り、売りシグナルの1つである「デッドクロス」を示現していることがわかりますから、織り込み済みであるとの判断の確度をさらに高めることもできたでしょう。

 「移動平均線」は代表的なテクニカル指標ですが、基本的すぎてあまり参考にならないと考えている人も多いかもしれません。ですが、移動平均線は株価のトレンドを表す基本のテクニカル指標の1つであり、基本を蔑ろにしては儲けることは難しいと言えるでしょう。

 ここでよくやりがちな判断としては、「業績も好調だし、株価が9940円まで上がったから、また高値を更新するだろう」もしくは「残念ながら今は値下がりしたけど、また上がるだろう」などと欲深く考えて、利益確定のタイミングを逃してしまうことです。株価はその後もずるずると下落を続け、7月9日には7830円まで値下がりしています。デッドクロスしていることに株価チャートを見て気づいていれば、株価が下降トレンドに変化していることをいち早く察することができたはずです。

 株価は基本的に好調な業績を背景に上昇しますが、株価の動きは株価チャートを見ることでしか判断することができません。どんなに好調な業績でも、他の投資家が良いと判断しなければ株価は下がります。また、株価は上昇すればいずれ下落しますので、売買タイミングがとても重要になると言えます。結局、株式投資では儲けなければ負けですから、トレンド分析を日頃から行い、トレンドに即した売買を行っていきたいものですね。

 


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