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【市況】明日の株式相場に向けて=ソフトバンクGがカギを握る波乱相場

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 週明け21日の東京株式市場は、日経平均株価が前週末比953円安の2万8010円と続急落。一時下げ幅は1100円以上に広がり、一気に2万7000円台まで売り込まれる場面があった。米国発の利上げ警戒に対する思惑が市場心理を揺さぶり、リスク回避の売り圧力が直撃する格好となった。前週にFOMCの結果は大山鳴動して鼠一匹であるとしたものの、どうやらその見解は甘かったということになる。不明を恥じるよりないが、これは大勢上昇トレンドが終焉を迎えたということでは決してない。どこでリバウンドに転じるかを冷静に観察して、仕切り直しのタイミングを探りたいところだ。

 今回特徴的なのは、指数への影響度が高いソフトバンクグループ<9984>とファーストリテイリング<9983>2銘柄の下げが、全体相場の弱気ムードと共鳴する形で指数の下げ幅を増幅させているということだ。日本株の下げ方が悪材料発信源の米国はもとより、欧州やアジア株と比較しても突出しているのは、個別銘柄を絡めた先物絡みの売り仕掛けで日経平均が沈めやすい指標であるという背景がある。この2銘柄を売り叩くことによって、容易にマーケットを弱気モードに誘導できる。その意味では日銀がETF買いのハシゴを外した影響も色濃いものとなっている。

 ソフトバンクGについては、5月中旬に明らかとなったMSCIの指数イベント(指数見直し)に関連する売りニーズが発現しイレギュラーな下げに見舞われたが、機関投資家のショートカバーの動きを足場にイベント通過後は戻りに転じる公算が大きいとみられていた。「これは市場関係者の共通認識に近い部分でもあったが、結果的にみて罠だった。メディアの論調に誘導された部分もある」(中堅証券ストラテジスト)という。

 実際は、権利落ちで実質6月相場入りとなった5月28日に同社株は反発に転じたが、その後はリバウンドどころかダラダラと下げ続ける展開が続き、そして挙げ句にマドを開けての下放れで、信用取引で買いこんだ個人の投げを誘う展開となった。「とってつけたように財務面での不安が取り沙汰されているが、負債に関するネガティブな話などソフトバンクGの場合はいくらでも皿に盛ることができる。株価の下落が言わせている可能性が高い」(同)としている。国内企業として21年3月期に過去最高の純利益を計上して時価PERはなんと2倍台という低水準だが、20年3月期は赤字決算で、つまりPERは無限大(1株利益がマイナスのため算出不能)だった。伝統的な株価指標は次期の予測がつかない以上、役に立たないというイメージが植え付けられている。ただし、「個人投資家の投げ売りを待って買い出動しようと手ぐすねを引いているファンド系資金は多い」(同)という。ソフトバンクGの株価がどこで底を入れるか。これは全体相場を見るうえでもポイントとなる。

 一方、日経平均寄与度トップであるファストリについてもここにきて下げが加速している。一時4000円を上回る下げとなったが、その時の日経平均へのマイナス寄与度は150円前後に達した。日銀のETF購入ルール見直しに伴い売りを浴びやすくなったが、新型コロナ絡みのネガティブな思惑は既にこなれた状態であり、個別に新たな売り材料に晒されているわけでもない。「新疆ウイグル自治区の問題がクローズアップされた経緯があるが、5月に取り沙汰されてから随分時間が経っている。ただこれも出口が見えにくく、折につけ悪材料として煽られやすい。簡単には外すことのできない足かせとなっている」(ネット証券アナリスト)という指摘がある。

 あす22日(日本時間の23日未明)に、パウエルFRB議長の米議会下院での議会証言が予定されており、ここでハト派的なコメントが出れば、全体相場はいったんリバウンドに転じる可能性も十分ある。ただ、戻しても上値は重く、本格底入れまでには時間を要する可能性がある。今週は明日からマザーズ市場を舞台にIPOラッシュが始まるが、これも今の相場環境では需給面で重荷となりやすい。今月末まではリバウンド狙いであっても半身に構え、5月13日のザラ場安値2万7300円前後までの深押しも念頭に置いておくところではないか。

 あすのスケジュールでは、5月の食品スーパー売上高、5月の百貨店売上高。また、マザース市場にデコルテ・ホールディングス<7372>、ペルセウスプロテオミクス<4882>、ペイロール<4489>の3社が新規上場する。海外では、5月の米中古住宅販売件数、パウエルFRB議長の議会証言など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年06月21日 17時08分

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