【特集】銘柄グリップ力がある「長期さん」はどんな人、投資開始以来の成績や含み損益が最大の銘柄は
第15回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(データ分析・長期さん編)
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投資の教科書では、目先の株価の動きに一喜一憂せずに長期保有を勧める。だが、ここ10年超の状況を踏まえると、こんな疑問も湧いてくる。
目まぐるしい変化が押し寄せるスピード経済は、拡大の一途。株式相場は過剰流動性のためかボラティリティ(株価の変動率)が大きくなりがち。こうした環境でも、長期保有は有効に働くのだろうか。
そんな疑問を少しでも解明できればと、第1回 「株探-個人投資家大調査」のデータ分析編は、「長期さん」に焦点を当てることにした。
銘柄の主な保有期間が「1~3年未満」「3年以上」のいずれかに該当し、2つまで選べる回答のうち、これ以外の期間を選択しなかった人が母集団だ。
この中から、日本株の運用資産が1000万円以上、投資を開始したが2019年以前で、投資開始以来の資産の増減を回答した人を抽出した。その数は336人と、全回答者3920人の8.6%になる。
全員が投資を開始してからリターンを獲得!
この336人の投資開始以来の成績が、冒頭に挙げた問いの答えになるかもしれない。
注:単独回答。回答数は長期さん336、全体3920
上に示したように、今回編集部が定義した「長期さん」は全員がリターンを手にしている。全回答者を母集団した場合、その割合は6割に満たない水準になる。
なぜ、長期さんがリターンをものにしているのかを、今回から3回にわたり回答データから分析していく。
併せて、この長期さんのケーススタディ編の記事を上下2回で公開したばかりなので、併せて読むと理解が深まるはずだ。
リターンが高いほど、"ダブルスコア"
データ分析編では、まず長期さんの投資を始めてからの資産の増加度合いを確認していこう。
下のグラフに示したように、リターンが高いほど長期さんの占める割合は高くなっている。グラフでは上にいくほど、リターンが大きくなる。
最上部に示した「20倍以上」に資産を膨らました人は、長期さんの中では3.3%の割合。一方、全体での割合は1.8%なので、長期さんの割合は2倍近く高くなっている。この"ダブルスコア"状態は「10~20倍未満」「2~10倍未満」「50~100%未満」でも同様に見られている。
一方で、「10%一方で、「10%未満」と低いリターンになると、長期さんの割合は11.6%と全体の30.4%よりも3分の1ほどの水準に減っている。
全体の動向と比べると、長期さんはリターンが高くなるほど母集団に占める割合が高くなり、逆に低くなるほど割合も低くなっている。
注:単独回答。回答数は長期さん336、全体2306
保有する日本株の資産額についても、同じような傾向が見られた。資産額が増えるほど、長期さんの割合が高くなっている。
下のグラフは長期さんと基準を揃えるため、全回答者についても1000万円以上の資産額を保有する1269人からの割合を示した。
すると下から3番目の資産額「3000万~5000万円未満」から大きい資産額では、長期さんの方が全体と比べて、母集団に占める割合が概ね高くなる結果となった。
注:母集団は長期さん336、全体1269
今春時点は9割以上、昨年も8割ほどが「利益・含み益あり」
今春時点と昨年の運用成績を聞くと、長期さんの9割以上ないしは8割が「利益・含み益」ありと回答した。
注:回答数は長期さん336、全体3920
注:回答数は長期さん336、全体3920
昨年のコロナ相場では、リターンはまあまあも、ダメージは低く抑えた
注目すべきはコロナ禍に見舞われた昨年の増減動向だ。結果を見ると、ボラが大きかった昨年の長期さんは、リターンの大きさは全体と比べてまあまあの水準だったが、ダメージはより低く抑えることができたがわかる。
まず増加動向で、増加率が「10%未満」や「10~50%未満」では、全体と長期さんの間では10%ポイントの差が開いているが、両者に大きな開きはない。
注:回答数は長期さん268、全体2192
だが減少動向では、両者の差が開いているのが目に付く。たとえば、「▲5%未満」の低い減少率では、長期さんが占める割合が全体より2倍近く高い水準になっている。また「▲5~▲10%未満」でも長期さんの割合が8%ポイント近く高くなった。
つまり長期さんは低い減少でとどめた人の割合が高い。ところが、「▲10~▲30%未満」では長期さんの割合は全体より半分程度になっている。
昨年、減少を10%未満にとどめた割合は、全体では44%と半分以下になった。一方の長期さんは65%と、3分の2の人が大きな凹みを受けずに済んだことになる。
注:回答数は長期さん46、全体1270
2018年と19年の成績も以下の通りで、いずれの年も長期さんは勝ちの割合が全体の2倍に迫る水準だった。
注:回答数は長期さん336、全体3920
注:回答数は長期さん336、全体3920
やっぱりバリュー派が多い
投資スタイルは全体と比べて、長期さんはバリュー派の割合がグロース派より高いのが大きな特徴だ。
日本株資産が億を超える「億マンさん」や、投資を開始してから資産を2倍以上に増やした「バガーさん」でも、グロース派がバリュー派を凌駕した。
これに対して、長期さんはバリュー派が多いのは、バリュー銘柄が水準訂正されるのをゆったりと構えて待つことでリターンを狙う。それには、忍耐力と共に投資の中に楽しみを見出すことも欠かせない。
これらに関しては、ケーススタディ編の「億トレ3人から学ぶ! バリューorグロースで長期分散の勝ち技-下」を特に参考にしてほしい。
プロフィールと、含み損益が最大の銘柄リストは
長期さんのプロフィールは以下の通り。投資歴が長くなるにつれて、割合が高くなっている。年齢では、60代と50代が多いのが特徴だ。
最後に、長期さんの今春時点で含み損益が最大と回答した銘柄のリストを掲載している。なおリストの順位は、回答数が限られていることから参考の域を出ないことに留意してほしい。
注:回答数は長期さん336、全体3920。長期さんは2020年以降を除く
注:単独回答。回答数は長期さん336、全体3920。以下同
■今春時点で含み益が最大の銘柄
注:回答数は129
■今春時点で含み損が最大銘柄
注:回答数は88
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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株探ニュース
筆者/真弓重孝 = 『株探』編集部・編集統括プロデューサー
ビジネス誌、マネー誌などを経て、2018年4月にみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)に入社。現在に至る。
ビジネス誌、マネー誌などを経て、2018年4月にみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)に入社。現在に至る。
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投資の教科書では、目先の株価の動きに一喜一憂せずに長期保有を勧める。だが、ここ10年超の状況を踏まえると、こんな疑問も湧いてくる。
目まぐるしい変化が押し寄せるスピード経済は、拡大の一途。株式相場は過剰流動性のためかボラティリティ(株価の変動率)が大きくなりがち。こうした環境でも、長期保有は有効に働くのだろうか。
そんな疑問を少しでも解明できればと、第1回 「株探-個人投資家大調査」のデータ分析編は、「長期さん」に焦点を当てることにした。
銘柄の主な保有期間が「1~3年未満」「3年以上」のいずれかに該当し、2つまで選べる回答のうち、これ以外の期間を選択しなかった人が母集団だ。
この中から、日本株の運用資産が1000万円以上、投資を開始したが2019年以前で、投資開始以来の資産の増減を回答した人を抽出した。その数は336人と、全回答者3920人の8.6%になる。
全員が投資を開始してからリターンを獲得!
この336人の投資開始以来の成績が、冒頭に挙げた問いの答えになるかもしれない。
注:単独回答。回答数は長期さん336、全体3920
上に示したように、今回編集部が定義した「長期さん」は全員がリターンを手にしている。全回答者を母集団した場合、その割合は6割に満たない水準になる。
なぜ、長期さんがリターンをものにしているのかを、今回から3回にわたり回答データから分析していく。
併せて、この長期さんのケーススタディ編の記事を上下2回で公開したばかりなので、併せて読むと理解が深まるはずだ。
リターンが高いほど、"ダブルスコア"
データ分析編では、まず長期さんの投資を始めてからの資産の増加度合いを確認していこう。
下のグラフに示したように、リターンが高いほど長期さんの占める割合は高くなっている。グラフでは上にいくほど、リターンが大きくなる。
最上部に示した「20倍以上」に資産を膨らました人は、長期さんの中では3.3%の割合。一方、全体での割合は1.8%なので、長期さんの割合は2倍近く高くなっている。この"ダブルスコア"状態は「10~20倍未満」「2~10倍未満」「50~100%未満」でも同様に見られている。
一方で、「10%一方で、「10%未満」と低いリターンになると、長期さんの割合は11.6%と全体の30.4%よりも3分の1ほどの水準に減っている。
全体の動向と比べると、長期さんはリターンが高くなるほど母集団に占める割合が高くなり、逆に低くなるほど割合も低くなっている。
注:単独回答。回答数は長期さん336、全体2306
保有する日本株の資産額についても、同じような傾向が見られた。資産額が増えるほど、長期さんの割合が高くなっている。
下のグラフは長期さんと基準を揃えるため、全回答者についても1000万円以上の資産額を保有する1269人からの割合を示した。
すると下から3番目の資産額「3000万~5000万円未満」から大きい資産額では、長期さんの方が全体と比べて、母集団に占める割合が概ね高くなる結果となった。
注:母集団は長期さん336、全体1269
今春時点は9割以上、昨年も8割ほどが「利益・含み益あり」
今春時点と昨年の運用成績を聞くと、長期さんの9割以上ないしは8割が「利益・含み益」ありと回答した。
注:回答数は長期さん336、全体3920
注:回答数は長期さん336、全体3920
昨年のコロナ相場では、リターンはまあまあも、ダメージは低く抑えた
注目すべきはコロナ禍に見舞われた昨年の増減動向だ。結果を見ると、ボラが大きかった昨年の長期さんは、リターンの大きさは全体と比べてまあまあの水準だったが、ダメージはより低く抑えることができたがわかる。
まず増加動向で、増加率が「10%未満」や「10~50%未満」では、全体と長期さんの間では10%ポイントの差が開いているが、両者に大きな開きはない。
注:回答数は長期さん268、全体2192
だが減少動向では、両者の差が開いているのが目に付く。たとえば、「▲5%未満」の低い減少率では、長期さんが占める割合が全体より2倍近く高い水準になっている。また「▲5~▲10%未満」でも長期さんの割合が8%ポイント近く高くなった。
つまり長期さんは低い減少でとどめた人の割合が高い。ところが、「▲10~▲30%未満」では長期さんの割合は全体より半分程度になっている。
昨年、減少を10%未満にとどめた割合は、全体では44%と半分以下になった。一方の長期さんは65%と、3分の2の人が大きな凹みを受けずに済んだことになる。
注:回答数は長期さん46、全体1270
2018年と19年の成績も以下の通りで、いずれの年も長期さんは勝ちの割合が全体の2倍に迫る水準だった。
注:回答数は長期さん336、全体3920
注:回答数は長期さん336、全体3920
やっぱりバリュー派が多い
投資スタイルは全体と比べて、長期さんはバリュー派の割合がグロース派より高いのが大きな特徴だ。
日本株資産が億を超える「億マンさん」や、投資を開始してから資産を2倍以上に増やした「バガーさん」でも、グロース派がバリュー派を凌駕した。
これに対して、長期さんはバリュー派が多いのは、バリュー銘柄が水準訂正されるのをゆったりと構えて待つことでリターンを狙う。それには、忍耐力と共に投資の中に楽しみを見出すことも欠かせない。
これらに関しては、ケーススタディ編の「億トレ3人から学ぶ! バリューorグロースで長期分散の勝ち技-下」を特に参考にしてほしい。
プロフィールと、含み損益が最大の銘柄リストは
長期さんのプロフィールは以下の通り。投資歴が長くなるにつれて、割合が高くなっている。年齢では、60代と50代が多いのが特徴だ。
最後に、長期さんの今春時点で含み損益が最大と回答した銘柄のリストを掲載している。なおリストの順位は、回答数が限られていることから参考の域を出ないことに留意してほしい。
注:回答数は長期さん336、全体3920。長期さんは2020年以降を除く
注:単独回答。回答数は長期さん336、全体3920。以下同
■今春時点で含み益が最大の銘柄
順位 | 銘柄名<コード> |
---|---|
1 | ソフトバンクグループ<9984> |
2 | イオン<8267> |
3 | オリエンタルランド<4661> |
4 | 日本電産<6594> |
4 | ソニーグループ<6758> |
6 | ファーマフーズ<2929> |
6 | レーザーテック<6920> |
8 | リクルートホールディングス<6098> |
8 | 伊藤忠商事<8001> |
8 | 三井住友フィナンシャルグループ<8316> |
■今春時点で含み損が最大銘柄
順位 | 銘柄名<コード> |
---|---|
1 | 日本たばこ産業<2914> |
2 | 明光ネットワークジャパン<4668> |
2 | みずほフィナンシャルグループ<8411> |
4 | ペッパーフードサービス<3053> |
4 | 東京電力ホールディングス<9501> |
6 | CYBERDYNE<7779> |
6 | 三光マーケティングフーズ<2762> |
8 | NEXT FUNDS 日経平均Dインバ<1357> |
8 | Robot Home<1435> |
8 | シャープ<6753> |
8 | SUBARU<7270> |
8 | 多摩川ホールディングス<6838> |
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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