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【市況】日経平均は3日ぶりに反発、米雇用統計前のもみ合い継続、アフターコロナ関連にしばし脚光/ランチタイムコメント

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

 日経平均は3日ぶりに反発。132.50円高の28946.84円(出来高概算6億5564万株)で前場の取引を終えている。

 祝日休場明け6月1日の米株式市場でのNYダウは45.86ドル高(+0.13%)と小幅に4日続伸。疾病対策センター(CDC)によると、米国の成人で、ワクチンを少なくとも1回接種した人は5割を超えた。経済活動正常化への期待のほか、市場予想を上回る5月ISM製造業景況指数や原油価格の上昇なども背景に景気敏感株が買われ、NYダウは一時、最高値を上回った。ただ、高値圏では利益確定の売りも強く、上値は重かった。また、ナスダックは長期金利の上昇が重しとなり、軟調に推移し、0.09%の下落となった。週明けのまちまちな米株市場の動きを受けた本日の日経平均は83.53円安と小幅に3日続落で始まると、28565.83円まで下げた。ただ、すぐに前日終値近辺まで急速に切り返すと、前場中頃からはプラスに転じ、その後はじり高基調で上げ幅を3ケタに拡げて前場を終えている。

 個別では、月次動向が買い材料視されたKeePer技研<6036>や、アムジェンと共同開発販売契約を締結した協和キリン<4151>、がそれぞれ大幅に上昇。「LINEマンガ」運営企業との業務提携を発表したイーブック<3658>はストップ高まで買い進まれた。また、上半期決算時に続く業績上方修正が好感された内田洋行<8057>、証券会社による目標株価の引き上げが材料視された日本製鋼所<5631>、なども大幅高となっている。一方、今期の業績予想は市場予想を上回るも戻り売りが優勢となった伊藤園<2593>は方向感に欠ける動きとなり、証券会社による格下げがあった日清食HD<2897>は大幅安となっている。

 売買代金上位では、トヨタ<7203>、レーザーテック<6920>が本日も大きく買われて連日の上場来高値更新に。レーザーテックは足元、半導体関連が冴えないなかでも別格の動きとして存在感を見せている。そのほか、原油先物価格の上昇を追い風にINPEX<1605>、米長期金利の上昇を背景に三菱UFJ<8306>、前日の日本経済新聞による報道を引き続き材料視する形で村田製作所<6981>、市場予想を上回ったISM製造業景況指数などグローバルな景気回復を背景に、ホンダ<7267>、信越化<4063>、国内でのワクチン接種スピードの加速を受けて、JR東海<9022>、JR東<9020>、JAL<9201>、ANA<9202>、OLC<4661>、など陸運、空運、レジャー関連などのアフターコロナ関連、が大幅高となっている。

 セクターでは、鉱業、不動産業、海運業、空運業、陸運業などが上昇率上位となっている。一方、精密機器、パルプ・紙、情報・通信業、食料品、水産・農林業などが下落率上位に並んでいる。東証1部の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は35%となっている。

 前日に発表された5月のISM製造業景況指数は61.2と、前月の60.7から上昇し、市場予想の61.0も小幅ながら上回った。新規受注が64.3から67.0へと大きく上昇し、約17年ぶりの高水準となる一方、入荷遅延の指数は75.0から78.8へと上昇し、1974年4月以来の高水準に。仕入れ価格指数も89.6から88.0へ僅かに低下したが、依然、リーマンショックに端を発する景気後退局面入り直前の2008年半ば以来の高水準にあることを考慮すると、原材料市況の逼迫感が伝わってくる。そのほか、生産指数が62.5から58.5へ、雇用が55.1から50.9へとそれぞれ4ポイント以上低下したことなども踏まえると、製造業者が原材料不足や労働者の確保困難といった問題から、強い需要に対応した供給ができていない状況が引き続き窺える。

 共和党が知事を務める州の多くでは、失業手当の延長を廃止する動きが出ていることや、週次の新規失業保険申請件数がパンデミック以降の最低水準を更新し続けていることを踏まえれば、今後、労働市場での需要と供給のバランスは取れてくると予想されるが、今回の、ISMの雇用項目の結果をみる限り、失業者の労働市場への復帰はまだまだ道半ばなのかもしれない。

 次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、委員会メンバーの金利見通しを示すドットチャートの発表があるほか、テーパリング(資産購入縮小)議論への踏み込みがあるかどうか、など、非常に注目点が多い。ただ、これまでの雇用に関する指標には、バラつきがあり、改めて今週末の雇用統計への注目度が高まってきた。これを確認するまでは、どうにも方向感が掴みにくく、今週の株式市場は週末まで一進一退の展開にとどまりそうだ。

 しかし、こうした中でも、物色が全く見られないわけではなく、前週同様、アフターコロナ関連株の戻り基調が鮮明だ。政府は新型コロナウイルスのワクチンに関し、高齢者向けの確保にめどがついたとみて12~64歳の一般向けの接種にも本格的に着手するとし、今月21日からは職場や大学でも接種できるように体制を整えていく方針と伝わっている。遅れていた国内でのワクチン接種スピードが一段と加速してきていることを窺わせるニュースフローが増えており、陸運、空運、旅行サービス、レジャーなど、関連銘柄の戻り基調が強まっている。

 商品市況でのインフレ進展が小休止していることで鉄鋼や非鉄金属などの資源関連株については、これまでのように一本調子での上昇が見込みにくくなっている。また、半導体などハイテク株も、米雇用統計や次回のFOMCを確認するまでは動きにくい。これらを踏まえると、ワクチン接種の加速という確かな事実と、これまでの出遅れ感の解消が見込みやすい、アフターコロナ関連が脚光を浴びる展開が少なくとも今週いっぱいは続くと見ておきたい。
《AK》

 提供:フィスコ

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