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【特集】非鉄株「スーパーサイクル」突入へ、グリーン投資拡大で一斉蜂起 <株探トップ特集>

世界的な環境投資の流れは、非鉄株には追い風。コモディティー関連株のなかでも、環境重視の潮流が逆風となる石油株から非鉄株へと投資先を乗り換える動きも見込まれている。

―銅価格は史上最高値に上昇、供給不足も意識され長期的な株高局面に―

 非鉄価格が上昇基調を強めている。この背景には、中国や米国の景気回復期待によるベースメタルである銅やアルミニウムなどへの需要拡大観測がある。特に、電気自動車(EV)などの生産には大量の銅やアルミなどが使われるとみられていることも追い風で、いまや非鉄市況は「スーパーサイクル」に突入したとの観測も強まっている。このなか、非鉄関連株には一段高期待が膨らんでいる。

●銅など商品市場に投資資金が大量流入

 足もとで銅価格が急上昇している。ロンドン金属取引所(LME)の銅3ヵ月物は7日に1トン=1万400ドル前後に上昇。2011年2月の最高値(1万190ドル)を10年ぶりに更新した。10日には1万700ドル台へと上昇しており、年初の時点では8000ドル近辺にあっただけに、この半年弱で3割強の上昇を演じている。

 銅価格上昇の要因となっているのが、最大の需要国である中国の景気回復に加え、新型コロナウイルスワクチンの接種拡大に伴う米国の経済再開期待と大規模な財政政策による銅需要の回復観測だ。更に、米国の大規模な財政出動とゼロ金利政策であふれた大量の資金が、格好の投資先として銅などコモディティー(商品)市場に流れ込んでいるとの見方は強い。

●コロナ禍で生産増難しくタイトな需給状況は続く

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は、「銅価格は目先的には1万ドル乗せで達成感からの一服があるかもしれない。しかし、EVの普及など環境投資拡大の追い風もあり、中長期的には一段の上昇はあり得るだろう」と今後の展開を予想する。

 EV1台当たりの銅の使用量はガソリン車の3~4倍に膨らむとの試算もあるほか、EV充電スタンドや風力タービン向けなどグリーンエネルギー関連に銅需要が増加するとの期待が強い。更に、需要が高まる一方で大幅な供給増の見通しは立たない。世界的にみて近年は新たな有望な銅鉱山は見つかっていないことに加え、コロナ禍のなか労働者の感染対策のため銅鉱山での産出量を増やすことは難しい状態となっている。このため「銅市況は先行きの供給不足も意識する状況」(芥田氏)にある。

●グリーンマネーの流入が長期市況上昇を招く

 そんななか、市場で高まるのが銅を中心とした非鉄市況が「スーパーサイクル」に突入したとの観測だ。非鉄関連では2000年前半から11年頃にかけてBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)と呼ばれる新興国の経済成長を背景に市況が長期上昇した。

 今回は、世界的な景気回復期待に加え環境投資の拡大を視野に入れた「グリーンマネー」の流入が非鉄市況の上昇を支えている。市況の上昇は銅に限らずニッケルやアルミなどにも広がっている。ニッケルはEVの電池材料向けへの需要に対する期待から今年2月には1トン=1万9000ドル台と14年9月以来の水準に上昇した。その後、いったん下落したが、4月下旬以降は再び上昇基調を強めている。

●アルミは中国の環境規制で需給引き締まる

 アルミは足もとで1トン=2500ドル近辺と18年春以来、約3年ぶりの高値水準に上昇している。年初からは2割強の値上がりだ。アルミもEVの軽量化に絡んで需要増期待が強いが、更に中国の環境規制がアルミ市況の上昇要因となるとの見方がある。アルミの生産では大量の電気が必要とされるが、中国は60年までに「二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ」を目指しており、これまでのようにアルミ生産でCO2排出量の大きい石炭火力発電による電気をふんだんに使うことは難しくなるとみられている。このためアルミの需給は中長期的な引き締まりも予想されている。

 コモディティー市場のなかの投資配分も、世界的なCO2削減の潮流が逆風となる石油に対して、非鉄はEV向けなどのグリーン投資の需要増が見込めるため、石油に向かっていた投資資金が非鉄に流れてくるともみられている。今後、環境投資を意識したマネーは非鉄株に向かっていくことが予想される。

●アサヒHD、松田産業、アサカ理研、黒谷など

 個別銘柄でまず注目されるのは、大手非鉄の住友金属鉱山 <5713> や三菱マテリアル <5711> 、DOWAホールディングス <5714> などだ。住友鉱の決算は前期に続き、今期も増配が予定されるなど堅調。全体相場が落ち着けば、大手非鉄株には見直し買いが期待できる。また、ニッケル関連で大平洋金属 <5541> 、亜鉛で東邦亜鉛 <5707> 、アルミ関連で日本軽金属ホールディングス <5703> やUACJ <5741> なども活躍が見込める。

 また、貴金属リサイクルを手掛けるアサヒホールディングス <5857> やアサカ理研 <5724> [JQ]、松田産業 <7456> などにとっては銅価格などの上昇は追い風。加えて非鉄金属加工の黒谷 <3168> や黄銅棒・線材の日本伸銅 <5753> [東証2]、それに非鉄金属商社の白銅 <7637> 、銅鉱石などの探査・開発を手掛ける日鉄鉱業 <1515> 、レアメタルなどを手掛けるアルコニックス <3036> などに注目したい。

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