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【特集】新フロンティア「宇宙開発関連」株、1兆ドル争奪戦で狙える精選10銘柄 <株探トップ特集>

宇宙ビジネスの市場は今後、急拡大が予想されている。しかし、民間で競争力のあるロケットを作ることができないと、独自の打ち上げ手段を失い国益の大きな損失となる。

―米中交え国際的な競争が激化、日本も官民挙げて巨大市場の開拓に邁進へ―

 初の有人宇宙飛行が成功してから、今年で60年。この歳月を経て、宇宙はいまや巨大なビジネスの「フロンティア」として、高い関心を集めている。特に近年は宇宙開発 を巡る競争が激化。国家レベルでは米国が2月に探査機を火星に着陸させたほか、2024年にも再び宇宙飛行士を月面に送る「アルテミス計画」を進めている。また、中国も月探査など宇宙開発に注力している。加えて、民間企業では世界のベンチャー企業による宇宙船の開発やロケット打ち上げ、更には宇宙旅行に向けた動きも進展しており、宇宙ビジネスは本格的な急成長軌道に乗ろうとしている。宇宙産業の将来像を探った。

●米スペースXなど民間企業の活躍で新ステージに突入

 宇宙技術に関して、現在民間企業で突出しているのは米国の電気自動車(EV)大手、テスラを率いるイーロン・マスク氏が代表を務める「SpaceX(スペースX)」と言えるだろう。4月23日に行われた同社のCrew-2ミッションでは、日本人宇宙飛行士・星出彰彦氏らが搭乗する新型民間宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」がISS(国際宇宙ステーション)に向けて打ち上げられ、24日にISSとのドッキングに成功した。この記念すべき出来事を、「宇宙ビジネス」の戦いの幕開けと捉えた投資家も世界には数多くいるだろう。

 今回、Crew-1ミッションで使用された再使用部品などを一部用いることでコストの削減を実現した。この成功によって、さまざまな意味で宇宙ビジネスの可能性が大きく広がったため、今後も多数の民間企業が参入、関与を強めてくることで、宇宙ビジネスの盛り上がりが期待される。また、中国は4月29日、独自の宇宙ステーション「天宮」の建設に向けて、重要な役割を果たすコアモジュール「天和」の打ち上げに成功したと発表している。中国は構成パーツを約10回に分けて輸送し、22年の本格運用開始を見込んでいるようだ。米中が鎬(しのぎ)を削る場所、という意味でも宇宙は非常に重要な位置づけとなっている。

●40年代の市場規模は世界で1兆ドル超と急成長の可能性

 長期的な宇宙ビジネス市場規模は、40年代に世界で1兆ドル(約109兆円)以上になると試算する見方が出ている。ロケットや衛星のコスト低下が更に進むことにより、宇宙ビジネスの参入障壁が低下し、通信衛星サービスの伸長に加えて、宇宙観光や小惑星探査といった新しい産業が創出されることで市場が拡大していくというシナリオだ。19年3月に公表された総務省の資料によれば、50年には1兆8000億ドル(約196兆円)規模にまで膨らむとも予測、国内の宇宙ビジネス市場は16年の約9兆円が同32兆円に膨らむとみられている。

 しかし、このように巨大な成長市場がある一方、政府は民間で競争力のあるロケットを作ることができなければ、日本独自の打ち上げ手段を失い、自立的に宇宙にアクセスすることができなくなることから、国益が失われる可能性が有るとして、危機感を表明している。宇宙基本計画においても、宇宙活動の自立性や競争力確保の観点からその重要性が示されている。このため、部品・コンポーネントなどの先端的な基盤技術を開発していくことが喫緊の課題とされており、中小・ベンチャーを含む産業界と、国やその研究機関が連携し、戦略的に取り組んでいくことが不可欠となる。

●30年頃に「基幹ロケット発展型」の打ち上げも

 なお、文部科学省が今年4月に公表した「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会中間まとめ骨子案」では、低・静止軌道、月面などを対象としたミッション(官ミッションの安全保障、防災、アルテミス計画などを含む)に対応するため、30年頃の初号機打ち上げを目指して大幅な低コスト化を実現するための「基幹ロケット発展型」の開発を進めるとしている。そのために、民間主導による新型宇宙輸送システムとの部品の共通化による量産効果や完全再使用化などにより、抜本的なコスト低減を図る方針だ。ほかにも、将来宇宙輸送システムに必須となる抜本的低コスト化の方策として、設計を宇宙仕様からJIS仕様など需要の多い民間市場仕様に変更、宇宙輸送システムの打ち上げ回数の増加による量産効果、3Dプリント技術やデジタルツイン技術の活用などが想定されているようだ。

 これまで宇宙ビジネス関連と言えば、ロケット製造開発に関わる企業や素材関連、衛星データの活用や衛星テレビサービスを手掛ける企業などがメインとなっていた。しかし、米国ではヴァージン・ギャラクティックのような宇宙旅行会社も登場してきているうえに、更なるコスト減に向けた施策が具体的に実現してくるなかで、新たなビジネスも創出されてくることになるだろう。以下、宇宙関連の有望銘柄を紹介したい。

●明星電や進和、ペプドリ、さくらネットなどに注目

東レ <3402> ~同社は炭素繊維複合材料を手掛けるが、最適設計による軽量化が図れ宇宙用途に最適な材料といわれており、ロケットの上部衛星搭載部や段間部、固体ロケットブースターケースなどに使用されている。また、人工衛星の多くの部材においても使用。

ニコン <7731> ~21年4月に宇宙航空機関連部品の受託生産においては全米トップクラスに位置づけられているMorf3D Inc.(モーフ3D社)に出資、子会社化している。インターネット接続や地球観測画像の取得・分析の需要などから市場が急拡大している中小型衛星向けに、精密加工技術を組み合わせた受託加工ビジネスを展開していく計画だ。

トヨタ自動車 <7203> ~宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、燃料電池車(FCV)技術を用いた月面でのモビリティ「有人与圧ローバ(ルナ・クルーザー)」の共同研究を進めている。宇宙服なしで活動できる与圧キャビンを備えていることが最大の特徴だ。燃料電池をエネルギー源としており、月面で1000キロメートル以上の走行を可能にするようだ。

IHI <7013> ~IHIエアロスペースにおいて、ロケット飛翔体の総合メーカーとして、固体燃料技術を応用し、科学観測や実用衛星打ち上げ用ロケットの開発を行う。また、日本が開発を担当した実験棟「きぼう」では、船外実験プラットフォームや船外パレットの他に船内実験室に搭載される実験ラックや実験装置、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の曝露パレットなどを担当した。

明星電気 <6709> [東証2]~宇宙ステーション搭載観測機器メーカーであり、衛星搭載用Xバンド送信機や小型衛星に搭載し、2GHz帯の電波を用いて地上からのコマンド受信、地上へのテレメトリ送信を行う衛星搭載用1Mbps Sバンド送受信機のほか、衛星搭載用モニターカメラ、衛星搭載用デュアルアンテナGPS受信機などを手掛けている。

三菱ケミカルホールディングス <4188> ~民間企業として世界初となる月面探査の実現を目指している。ロボット・宇宙開発ベンチャーのダイモン社(東京都大田区)との間で、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部材及び熱可塑性樹脂材料の提供や技術支援を内容とするパートナーシップ契約を締結。宇宙空間や月面での使用実績を積み重ね、製品開発と月面基地部材など用途開発を加速する。

進和 <7607> ~技術部航空宇宙機器課において、航空機やロケットの生産に使用される治工具の設計・製作をはじめ、生産ラインの省力化・自動化構築やメンテナンスなどトータルサポート事業を展開する。H-2Bロケットの燃料タンク製造にかかる特殊溶接装置や治具で実績を持つ。

ペプチドリーム <4587> ~17年にJAXAと、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟を利用した高品質タンパク質結晶生成実験において、協力関係を発展させた戦略的なパートナーシップ契約を締結している。「きぼう」利用を通して、日本発・世界初の医薬品創成の早期実現に挑戦。

さくらインターネット <3778> ~日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」の開発・利用促進を行うアライアンス「xData Alliance(クロスデータアライアンス)」を18年に発足。宇宙データのオープン&フリー化で多様な宇宙ビジネス創出に取り組む。

日立造船 <7004> ~21年2月にJAXAと世界で初めての宇宙での全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた実証実験に関する共同研究契約を締結している。16年から全固体リチウムイオン電池の共同開発を行っており、試作した電池を実際の宇宙環境において評価・検証をするべく、軌道上で実証実験を実施する。

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