【市況】【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─ ターゲットを絞り、業績安心感ある銘柄の値幅取りを捉える
RAKAN RICERCA 代表取締役 会長 村瀬智一
「ターゲットを絞り、業績安心感ある銘柄の値幅取りを捉える」
●決算を手掛かりとした個別物色の展開か
日経平均株価は連休明けの6日、米国市場の強い値動きが支援材料となるなか、ゴールデンウイーク前に落としていたポジションの買い戻しを中心に大きく反発。上げ幅は一時600円を超え、終値で2万9300円を回復。7日も前日の高値水準で底堅い値動きを見せており、強弱感の対立しやすい25日移動平均線レベルを捉えている。海外勢の断続的なインデックス買いによる指数へのインパクトが大きく、一部ではショートカバーの動きもあったと考えられる。米国では新型コロナウイルスのワクチン接種が順調に進んでおり、米疾病対策センター(CDC)では7月までに新規感染者数は急減するとの見解を示している。また、雇用に関する良好な経済指標も相次いでおり、経済活動の正常化への期待は大きいだろう。
一方、米国市場の上昇に伴うリスク選好の流れは、日本株にも需給面での波及効果が期待されるが、政府は現在発令されている東京、大阪、兵庫、京都の緊急事態宣言について、今月31日まで延長するほか、愛知県と福岡県も対象地域に加える方針を固めた。日本のコロナ対策が後手後手で迷走しているように映るなか、米国同様の市場反応は見込みづらいだろう。
また、10~14日の週は3月期決算発表がピークを迎え、2300社を超える企業が決算を発表する。週末の14日だけでも1000社近くが予定されており、機関投資家などは週を通じて積極的な売買を手控えるとみられる。このため、先物主導によるインデックス売買に振らされやすくなりそうだ。また、決算を手掛かりとした個別物色の動きが想定されるものの、発表企業数の多さから対象は絞り込みづらくなる。足もとでの進捗率の高い銘柄や直近で上方修正を行っている銘柄などに狙いを定める形で、業績安心感のある銘柄への値幅取りの動きを捉えたい。
●来週の活躍期待「注目5銘柄」
◆ミライト・ホールディングス <1417>
ブロードバンド・ネットワークの導入やICTシステムの構築、ビルソリューション、モバイルネットワーク事業などを展開。足もとではコロナ禍におけるテレワーク、オンライン授業といったリモート環境整備に伴う需要や、文教向けパソコン販売などが伸びており、4月27日に21年3月期の連結経常利益を従来予想の243億円→313億円(前の期は232億円)に28.8%上方修正している。株価は調整が続いているものの、75日移動平均線レベルで底堅い値動きをみせている。なお、5月14日に決算発表が予定されている。
◆ダイセル <4202>
機能性フィルムやポリスチレンシート、樹脂コンパウンド製品、有機化学品などを手掛ける化学メーカー。食品・生活雑貨、電池・電子機器、建材、自動車・工業、医療・医薬、農畜水産の6つの用途向けに商品・原材料を提供する。21年3月期4-12月決算は減収減益で着地したが、足もとでは自動車生産などの回復に伴いエアバッグ用インフレーター(ガス発生装置)などで販売数量の増加が見られる。株価は900円処で上値を抑えられてボックス圏での推移が続くが、足もとで75日移動平均線を支持線としたリバウンドを見せている。5月12日に決算発表を予定。
◆H.U.グループホールディングス <4544>
臨床検査と検査試薬を中心にヘルスケア分野で事業を展開。 PCRおよび特殊検査受託は感染者数の増加に伴い検査受託数が増加。PCR、高感度抗原定量検査は合わせて約2万5000件/日以上の検査受託キャパシティーを整備している。株価は3750円辺りで上値を抑えられているが、利食いを交えながらも上昇トレンドは継続。なお、5月14日に決算発表が予定されている。
◆イリソ電子工業 <6908>
自動車部品や産業機器、コンシューマー機器のコネクターの開発・製造を手掛ける。ADAS(先進運転支援システム)向けや、電動化の進展に伴って新たに自動車に搭載されているパワートレイン向けなど販売が好調。また、車載向けを主力とするものの、ロボット関連や5G関連といった成長分野向け製品の需要拡大も見込む。株価は5500円処で上値を抑えられているが、下値は上昇する75日移動平均線が支持線として機能しており、煮詰まり感も台頭。なお、5月10日に決算発表を予定。
◆ソフトバンク <9434>
「5G」と「AI」を社会変革の中心に位置付け、5Gの通信インフラをベースに、高度なAIが組み込まれたプラットフォーム構築を推進。グループにLINEと経営統合した新生Zホールディングス <4689>を擁し、国内最大規模の顧客と企業に対するチャネルを有する通信・ITグループに。2月4日に21年3月期第3四半期累計決算を発表。併せて21年3月期連結営業利益を従来予想の9200億円→9700億円に5.4%上方修正。第3四半期累計の営業利益の対通期進捗率は86.8%と順調であり、通期上振れ期待も。株価は足もとで三角保ち合いが煮詰まっており、上値を抑える25日移動平均線と下値を支える75日線が収れんし攻防を見せている。5月11日に決算発表を予定。
2021年5月7日 記
株探ニュース