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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 ―春の乱気流への対処方法―

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第53回 春の乱気流への対処方法

●春の乱気流

 昨年の1月から3月に大乱気流が発生しました。3月中旬にかけて世界の株式市場で3割から5割の株価暴落が発生しました。主因はコロナパンデミックでした。1年の時間が経過しましたが、コロナパンデミックはまだ収束していません。ワクチンの接種が始まっているのですが、まだ十分に行き渡ってはいません。

 新型コロナの感染は1年中生じることが分かりました。感染のピークとして、昨年4月、8月、本年1月の3回を経験しました。4ヵ月ほどのインターバルを挟んで感染ピークが発生しています。重要な特徴は世界の波動が同期化していることです。日本でも8月に感染ピークが観察されましたが、南半球でも真夏に感染ピークが生じました。新型コロナの感染は年中無休であることはっきりしてきたのです。

 日経平均株価は2月15日に30年ぶりに3万円の大台に乗せました。この日の朝、昨年10-12月期のGDP速報が発表されました。コロナで日本経済は大打撃を受けましたが、昨年7-9月期には年率23%、10-12月期にも13%の成長が実現したのです。この統計発表が日経平均3万円の背中を押したものと言えるでしょう。

 しかし、「好事魔多し」と言います。2月26日には日経平均が前日比1202円急落して2万9000円を割り込んでしまいました。前回コラムに記述した「春の乱気流」が鮮明に浮かび上がります。投資家はこのような局面で、どのように対応するのが良いのでしょうか。

●巨大経済対策

 「相場は相場に聞け」の言葉がありますが、乱高下する相場を取り扱うにはツールが必要になります。徒手空拳で狼狽するのは危険です。チャート分析のツールを用いて、相場変動を慎重に見極めることが大切になります。「節分天井、彼岸底」という言葉がありますが、節分から彼岸にかけての時期は相場が不安定になりやすいことを頭に入れておく必要があります。

 20年10-12月期の日本の実質GDPは543兆円になりました。コロナ前の20年1-3月期の実質GDPが546兆円でしたから、ほぼコロナ不況の落ち込みを回復したことになります。株式市場では昨年3月にコロナ暴録の底値を記録して、ほぼ1年間、上昇相場が続きました。その結果としての高値警戒が広がっているのです。

 株価反騰のきっかけは米国のトランプ大統領(当時)が打ち出した2兆ドル規模の経済対策でした。パウエルFRB議長は3月に2度の利下げを断行して、トランプ大統領と協調するかのように一気にゼロ金利政策に移行しました。この政策総動員が世界の株価を急反発させる原動力になりました。日本でも未曾有の財政出動が決定されました。3次にわたる補正予算で計上された追加支出は「真水」で73兆円に達します。GDPの14%に相当する巨大政策が策定されました。

 未曾有の対応が取られたのは財政政策だけではありません。コロナ対策の名目で実質無利子、無担保の貸し付けが無制限、無尽蔵に実行されました。その結果として、いわゆる「過剰流動性」が供給されることになりました。

●日経平均急落

 緊急事態宣言の発出で飲食業や宿泊業では深刻な困難が引き起こされています。GoToキャンペーンの推進がコロナ感染拡大を急加速させたことは間違いないでしょう。感染第3波下の日本では連日100名を超えるコロナ死者が発表されました。欧米と比較して圧倒的に少ないとはいえ、年率換算で4万人ペースの死者が生じる事態を軽視することはできません。

 日本の場合、ワクチンが国民の多数に行き渡るのは年末以降になると見られています。仮にワクチンが供給されても接種を希望しない人が多数になる可能性もあります。依然としてコロナの先行きは不透明極まりません。

 それでも、すでにGDPはコロナ前水準に肉薄しています。コロナ関連融資資金が「過剰流動性」として株式や不動産価格の暴騰をもたらしているとすると、現在推進されている経済政策に対する疑問符が浮上することも考えられます。

 2月24日の米議会証言でパウエルFRB議長は23年までインフレ率がFRB目標を下回り、場合によってはこれ以降も低迷が続くとの見通しを示しました。超金融緩和政策が長期間持続するとの見通しが広がって、NYダウは一時3万2000ドルを突破し、史上最高値を更新しました。

 しかし、本当に楽観ばかりでいいのでしょうか。金融市場はバブルの宴に潜むリスクに敏感になり始めているのです。その変化が表面化したのが2月25日のNY市場、翌26日の東京市場であり、株価が全面安の展開になりました。

●春の乱気流

 日本の場合、これらに加えて五輪という特殊な要因が影響を与えることになります。五輪がなければ、政府は「感染収束優先」の基本方針を当初から提示したと思いますし、東アジアのなかで、これだけ悪いコロナパフォーマンスを露呈することはなかったかも知れません。日本の人口当たりコロナ死者数は東アジアで最悪で、台湾の135倍、中国の17倍、韓国の1.8倍になっています。

 緊急事態宣言で人の移動が急減しましたが、2月入り後は明確に増大に転じています。これから緊急事態宣言が解除され、五輪に向けてイベント収容人数の引き上げ、聖火リレーの実施、GoTo再開などが重なってくれば、4月から5月にかけて感染第4波が再び深刻な事態を引き起こさないとは言い切れません。

 こうしたなかで、FRBのパウエル議長が金融政策の方向転換を示唆し始めれば、春の乱気流が本格調整に転じることも否定し切れません。衆議院総選挙は現時点では秋に実施されるとの見通しが有力ですが、政治情勢に重大な変化が生じる可能性も浮上します。

 高値波乱相場の対応で求められるのは機敏な動きと逆張りの発想、そして柔軟性です。状況の変化が目まぐるしいために、予め定めた基本シナリオは意味をなさなくなると考えておくべきでしょう。遠くを展望しつつも、必ず自分の足もとから目を離さない慎重対処がとりわけ重要な局面です。

(2021年2月26日記/次回は3月13日配信予定)


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