【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 祭日明けが見極め時か
株式評論家 植木靖男
「祭日明けが見極め時か」
●アベノミクス上昇初期と酷似
あたかも龍が天を翔るが如き上昇相場をみせてきた日経平均株価だが、さすがにここへきて急ブレーキがかかった。米国長期金利の想定外の上昇から高PERのナスダック指数が上げ止まったことが要因である。
確かに米長期金利は足もと、急激に水準訂正をみせ1.3%台に乗せた。一方で期待インフレ率も2%となり、にわかにFRB(米連邦準備理事会)の対応が注目されるようになった。
1981年には16%近辺にあった米長期金利は、以降40年間下げ続けてきたが、昨年を底に眠れる獅子が目を覚ましたかのように動意をみせ始めた。おそらくトレンドとしては上げ下げを繰り返しながら、今後、数年間は水準を高めることになろう。となると、太平の世に慣れた、すなわち超低金利時代の景色は大きく変わっていかざるを得ないかもしれない。
では、株価はこれをきっかけにどのような展開となるのであろうか。
まず、米国株でみると、追加経済対策、そして巨額のインフラ投資への期待、ワクチンによるコロナ収束、経済の正常化、結果としての企業業績の回復と、これらをお題目のように日々繰り返し唱和して、実体経済と株価のギャップをものともせず、投資家は高所恐怖症と闘いながら株高を信じて株式を買ってきた。
今後はどうなるのか。過去を振り返れば、13年春のアベノミクスと円安を唱えて買い上がった上昇相場に相似していることに気づく。
当時ほどのスケールはないが、動きは酷似している。これに当てはめると、日柄でみても、また高値近辺での値動きをみても、まだ余裕がありそうだ。これを前提にすれば、ここでの小幅もみ合いは想定内であり、おそらく2月最終週前半(祭日明け)までが休止期間、その後に再騰態勢に入ると期待している。すなわち長く休めば休むほどリスクは大きくなる。
なお、余談であるが、日々コロナ新規感染者数が公表される。それは午後3時ごろだ。つまり、株式市場の大引け時だ。面白いことにと言っては不謹慎だが、引け間近に「おーっ」と思うほど上げたり下げたりすることがある。それがいずれも感染者数の多寡と一致する。大まかな数字が漏れているのだろうが、そのことよりいかに株価がコロナの状況にセンシティブになっているのかに驚かされる。
●グロース株にも二極化の動き
さて、当面の物色対象をどうみればよいのか。
20年3月以降の今回の上昇相場の主役はあくまでも情報通信、グロース株である。この上昇相場がなお続くとの前提に立てば、グロース株を追いかけるのが筋だ。もちろん、その合間を縫って景気敏感株が出没するのは当然であるが…。
ただ、そのグロース株も、どうやらここへきて二極化しつつあるのも事実。その理由はいろいろあるが、ともかく投資家としてはしっかり画然と判別する必要がありそうだ。グロース株の一部は1月に高値をとって下落しつつあり、また一部はこの2月に入ってにわかに元気が出て高値を取りにいっている。
たとえば、東京エレクトロン <8035> 、信越化学工業 <4063> 、エムスリー <2413> 、村田製作所 <6981> 、レーザーテック <6920> などは前者であり、一方、ソニー <6758> 、日本電産 <6594> 、アドバンテスト <6857> 、NTT <9432> などは後者の典型だ。
どちらを選択するかは投資家次第であろう。中長期狙いであれば前者、また短期狙いならいうまでもなく後者である。景気敏感株なら非鉄、海運の値動きに注目したい。
2021年2月19日 記
株探ニュース