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【特集】「景気敏感+半導体」、増額修正相次ぐ化学株に再評価の芽膨らむ <株探トップ特集>

市況上昇で化学メーカーには業績増額修正が相次いでいる。今後、世界景気が回復基調を強めれば製品販売の伸びや半導体関連事業などの成長で株価は一段の上昇が見込めそうだ。

―バリューとグロースの側面併せ持つ、EUV関連株などに投資妙味―

 16日の東京株式市場で日経平均株価は、前日比383円高の3万467円と大幅続伸。日経平均株価は15日に30年半ぶりに3万円回復を達成したが、買いの勢いは衰えず一段の上値を狙う状況が続く。この株価上昇の背景には、新型コロナウイルスワクチンの接種拡大による景気回復がある。製造業の比率が高い日本株には、海外投資家を中心に見直し買いが膨らんでいるようだ。また、品不足状態にある半導体関連株などへの物色人気も強い。この「景気敏感株」と「半導体関連株」などの材料性を併せ持つのが 化学株だ。

●自動車生産回復などでプラント稼働率は上昇

 化学業界を取り巻く環境は好転している。石油化学工業協会の調べによると、昨年3月に88.7%まで低下したエチレンのプラント稼働率は12月には94.2%まで上昇。好不況の目安となる90%を7ヵ月連続で上回った。エチレンは化学製品の基礎原料で、自動車生産の回復などが寄与している。また、石油化学製品の基礎原料となるナフサのスポット価格も足もとで1トン500ドル台に上昇しており、これを受け、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂の価格も値上がりし、化学製品の市況上昇が化学大手の業績を押し上げている。

●市況好転が寄与し大手化学に増額修正相次ぐ

 こうしたなか、化学企業には業績を増額修正する企業が相次いでいる。例えば、三井化学 <4183> は21年3月期の営業利益を520億円から725億円(前期比12%増)とする増額修正を発表した。ナフサ価格の上昇などを要因に挙げており、今期の増額修正は3回目となる。三菱ケミカルホールディングス <4188> も21年3月期の連結営業利益を40億円から230億円(同84%減)に増額修正した。自動車向け部材の回復やアクリル樹脂原料であるMMA(メタクリル酸メチル)市況の上昇などが寄与した。

 また、東ソー <4042> も塩ビ市況の改善に加え半導体向けに石英ガラスが伸び増額修正し、三菱ガス化学 <4182> も半導体パッケージ材料の「BT積層板」の好調などを背景に業績を見直した。更に昭和電工 <4004> は今期予想赤字幅の縮小を発表したほか、住友化学 <4005> も今期営業利益を増額している。

●信越化学は塩ビと半導体の好調で最高値圏駆け上がる

 市場関係者からは、「化学業界は自動車や住宅など幅広い産業に関係しており、景気敏感株としての性格を持つ。加えて、半導体事業を手掛ける企業も多く、成長性も併せ持つ銘柄が少なくない」(アナリスト)ことが評価されている。

 その代表例が、信越化学工業 <4063> だ。同社は塩ビ樹脂と半導体材料のシリコンウエハーで世界トップ。塩ビの中核である米子会社のシンテック社はバイデン政権の追加経済対策の恩恵を受けるとみられるほか、半導体業界には強力な追い風が吹いている。市場には、22年3月期の連結営業利益は4300億円前後と2期ぶりの最高益更新予想が浮上。株価は上場来高値圏を駆け上がり2万円乗せが視野に入っている。

●東洋合成や日産化、太陽HDなどに投資妙味

 大手総合化学株は、半導体関連なども手掛ける企業も多いが、景気敏感株の性格が強い。その点、中堅企業や電子材料に高いウエートを置く銘柄にはより投資妙味が膨らんでいる。日産化学 <4021> は半導体材料が業績を牽引しており、EUV(極端紫外線)下層膜などの需要が好調。21年3月期業績は最高益が見込まれている。株価も最高値圏でのもみ合いが続き、一段の上値追いが期待されている。同じく、EUV関連ではフォトレジスト向け感光性材料を手掛ける東洋合成工業 <4970> [JQ]の営業利益は今期最高益が見込まれている。

 東京応化工業 <4186> は半導体フォトレジストで世界トップ級の実力を持ち、業績拡大で株価はやはり最高値圏にある。JSR <4185> もフォトレジストなど半導体関連が堅調。同社は社外取締役にアクティビスト(物言う株主)関係者を起用したことも話題となった。株価は06年につけた3810円奪回が視野に入っている。

 更に、半導体封止材の住友ベークライト <4203> や半導体用の化学材料を手掛けるトリケミカル研究所 <4369> 、半導体パッケージのソルダーレジストなどを手掛ける太陽ホールディングス <4626> 、半導体に使われる高純度リン酸の国内トップ企業であるラサ工業 <4022> などには一段の上昇期待が強まっている。

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