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【特集】泉州電業 Research Memo(3):20年10月期はコロナの影響等で前期比21.5%の営業減益

泉州電 <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2020年10月期の連結業績
(1) 損益状況
泉州電業<9824>の2020年10月期の連結業績は、売上高74,288百万円(前期比11.2%減)、営業利益3,124百万円(同21.5%減)、経常利益3,382百万円(同19.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,351百万円(同13.4%減)となった。

減収の要因は、コロナの影響で主な向け先である工作機械業界等での生産が停滞し、建設・建築・住宅市場で工事の進捗が滞ったことに加え、期中の平均銅価格が前期比で3.7%下落したことによる。銅価格の低下などで売上総利益率は前期の15.8%から16.3%へ上昇したが、減収により売上総利益は12,078百万円(前期比8.7%減)となった。コロナの影響に伴う経費減により販管費は同3.1%減となったが、売上総利益の減少を補えずに営業利益は同21.5%減となった。

期間中の設備投資額は223百万円(前期1,363百万円)、減価償却費は588百万円(同543百万円)であった。投資の主な内訳は、旧埼玉営業所隣地取得55百万円、STECビル改修工事36百万円等である。

(2) 財務状況
2020年10月期末の資産合計は前期末比1,187百万円減の67,401百万円となった。流動資産は同847百万円減の43,664百万円となったが、主に現金及び預金の増加2,489百万円、受取手形及び売掛金の減少1,796百万円、商品の減少281百万円などによる。固定資産は同340百万円減の23,737百万円となったが、主に減価償却費増や除却による有形固定資産の減少277百万円などによる。

負債合計が前期末比1,848百万円減の26,991百万円となった。流動負債は同1,787百万円減の24,262百万円となったが、主に支払手形及び買掛金の減少1,679百万円による。固定負債は同61百万円減の2,728百万円となったが、主に退職給付に係る負債の増加156百万円などによる。純資産合計は、主に利益剰余金の増加1,679百万円などにより、同660百万円増の40,409百万円となった。

2. 2020年10月期の商品別概況(単体ベース)
商品別の状況(単体ベース)は以下のとおりであった。

(1) 機器用・通信用電線
取扱商品の中では比較的付加価値が高く、銅価格の変動の影響が少ない商品である。売上高は24,299百万円(前期比13.0%減)となった。半導体製造装置関連など堅調に推移したものもあったが、米中貿易摩擦やコロナの影響を受け工作機械向けや自動車関連向けが低調に推移した。比較的銅価格の影響は少ないが、数量ベースでも前期比で減少となった。

(2) 電力用ケーブル
主に建設用(ビル、工場、病院及び学校等の大型施設など)に使われる電線であるが、競争も激しく利益率は低い。オリンピック関連施設の竣工などもあり比較的堅調に推移していたが、第2四半期後半(2020年3月中旬)以降はコロナの影響を受け失速した。その結果、売上高は24,173百万円(前期比9.4%減)となった。

(3) 汎用被覆線
主に電力用より細い電線で、住宅などに用いられる。電力用ケーブルほどではないが、やはり2020年3月以降コロナの影響が出て需要は低調だった。加えて銅価格の影響を受けやすいので、売上高は6,906百万円(前期比9.2%減)となった。

(4) その他電線
主に中小メーカー向けの銅裸線の販売であるため、販売価格はほぼ銅価格にスライドする。さらに末端での需要そのものも弱含みであったことから、売上高は2,987百万円(前期比19.9%減)となった。

(5) 非電線
電線以外の商品が含まれる。各種の加工品、付属品、周辺機器などで、主要製品はソーラー関連の部品及び加工品※とワイヤーハーネス関連だが、銅価格の影響は比較的小さく相対的に利益率の高い部門である。しかし米中貿易摩擦やコロナの影響でワイヤーハーネス等の需要が低迷し、売上高は11,140百万円(前期比13.1%減)となった。

※ソーラー関連は、ケーブルだけの場合は「電力用ケーブル」に、コネクター及び加工品が付いた場合は「非電線」に区分けされている。

(6) 子会社の状況
会社は「近年は連結決算において子会社の貢献度が大きくなってきている」と述べているが、2020年10月期における単体(親会社)ベースの営業利益は2,729百万円であり、連結決算(3,124百万円)に占める割合は87.4%(前期91.9%)であった。数字的にも子会社の貢献度が上がってきていると言える。特にエヌビーエス(株)、太洋通信工業(株)が好調であった。今後は子会社群の動向も注視する必要がありそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《ST》

 提供:フィスコ

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