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【市況】明日の株式相場に向けて=AI空中戦、アルゴ炸裂の踏み上げ相場

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(29日)の東京株式市場は日経平均株価が714円高の2万7568円と大幅続伸、フシ目として強く意識されていた2万7000円ラインを突破し、更に上値追いが加速する格好となった。

 前日の日経平均高値引けの余韻に浸るなか、大納会を明日に控えたきょうの東京市場の値運びが注目されるところだったが、想定をはるかに超える強い地合だったといえる。米国では追加経済対策がトランプ大統領の署名を経て年明けを待たずに成立、これを受けてNYダウナスダック総合指数ともに過去最高値となり、そのリスク選好ムードが日本にも波及した。しかし、2万7000円ラインにどれほどの意味があったかは分からないが、ここを突き抜けるや、堰を切ったように買いの勢いが増し、日経平均の上げ幅は引け際750円近くにまで達した。「掉尾の一振というよりは、タイムアウト寸前に望外の巨大魚を釣り上げたような感じの展開だった」(中堅証券ストラテジスト)と市場関係者も驚きを隠せない。

 しかし、実際のところ個人投資家にすればそれほど体感温度の高い相場ではない。東証1部の売買代金は2兆2000億円に過ぎない。きょうの急騰劇は、ファーストリテイリング<9983>の4000円高が示唆するように、アルゴリズムによるプログラミング売買による影響が大きい。いわば実需買いではなく踏み上げを狙った先物主導の仕掛け、空中戦である。売り手不在だから上がるというメディア報道があったが、それは間違いで、売り手が上昇相場を作り出すように仕向けられている。「前日時点で空売り比率は40%弱と引き続き高く、こうしたショートポジションを取る向きはみなAIに焼かれてしまう。今年はそういう相場だったことを、きょうの急騰劇で改めて思い出させられた」(前出のストラテジスト)と売り方でもないのに半ば諦めたようなトーンで語る。人間の感性では勝てないというニュアンスにも聞こえる。

 米国の追加経済対策への期待でリスクオンというのは簡単だが、その程度の軽い論理では到底説明のつかない強さだ。同じ時間帯に取引が行われているアジア株市場はどうかといえば、香港株は堅調でも中国・上海株は軟調というように高安まちまちの展開で、日本のみが突出して高い。日本だけ正体不明のリスクオンである。「行き過ぎの反動はどこかで出るのだろうが、きょうの展開は売る側に強烈なインパクトを与えたことは確か。正直、売りは怖いという印象だ」(ネット証券マーケットアナリスト)という。

 いずれにせよ米国株市場が青空圏をひた走る状況で東京市場が崩れる道理はない。追加経済対策については、土壇場でトランプ大統領が署名するというシナリオはある程度織り込まれていたと思われるが、給付金については米下院の段階で2000ドルへの引き上げが可決された。ロビンフッダーいわゆる給付金トレーダー復活となれば、GAFAM+テスラの株高シナリオが再び描かれる可能性がある。東京市場も当然その影響を受けるだろう。

 また、新年は1月5日のジョージア州の上院選決選投票が気にされている。仮に上院を民主党が制しトリプルブルーが実現した場合、株式市場にはマイナス材料というのが、今の段階でのマーケットコンセンサスだが、これもどうなるか分からない。一時期はトリプルブルー歓迎だったが、その後は上院を共和党が押さえる可能性が高まるなか米国株の強調展開に合わせ解釈が変わった経緯がある。株式市場は過剰流動性が担保されていれば、あとの材料は短期的に株価に影響を与えても“ノイズ”に過ぎないというのが本音にもみえる。

 あすはいよいよ大納会を迎える。海外では米国で12月のシカゴ購買部協会景気指数の発表がある。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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