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【特集】コロナ変異種の出現で原油相場が急落、世界経済の浮沈握るワクチンと集団免疫獲得の行方 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 米ファイザーと独ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチン接種が英国、米国、カナダ、シンガポール、サウジアラビアで始まった。このワクチンはさらに多くの国で承認される予定で、欧州委員会も販売許可を出した。米国では米モデルナが開発したワクチンについても米食品医薬品局(FDA)が緊急利用を許可し、接種が始まっている。来年にかけて利用可能なワクチンはさらに増える見通しだ。

●需要回復の柱はジェット燃料

 今後の世界経済はワクチン次第である。新型コロナウイルスの流行が抑制できそうであるとの見通しが固まると、石油需要は回復に向かうだろう。注目すべき需要回復の柱はジェット燃料である。航空業界は新型コロナウイルスの流行によって尋常ではない経済的な被害を受けているが、人々が従来のように各国を行き来できるようになれば、回復は本物であるといえるのではないか。

 ただ、ワクチンの効果が最も試されるのは来年の北半球の冬場であると思われる。それまでは予断を許さない。どれだけの航空会社がコロナ禍を生き残ることができるのか予想することは難しいが、ワクチン接種が始まったとはいえ当面は楽観できないだろう。

 効果が確認された後、主要国経済は段階的に活動を活発化させていくとしても、短期間で開発されたワクチンしか存在しない以上、恐る恐る経済を動かすしかない。長期的な効果が不明であるため、早々にアクセルを全開にするのは賢明ではない。東京オリンピックのような世界最大級のイベントは非現実的であるといえる。

●ワクチン期待相場は終わり、接種率が焦点に

 各社が開発したワクチンには十分な効果があるようだが、感染拡大を抑制する接種率の水準も問題となる。ワクチンが広く行き渡り、75%の人々が抗体を保有すれば集団免疫を獲得し、流行の抑制が可能であるとの指摘がある一方で、英国では新型コロナウイルスの変異種が確認されており、感染力が従来のウイルスよりも最大で7割強いと伝わっている。

 この変異した新型コロナウイルスが世界中に広がっていくとおよそ75%の人々が集団免疫を獲得しても流行の抑制には不十分であり、さらに広範囲なワクチン接種が必要となる。感染力の非常につよい麻疹(はしか)のように95%の人々が抗体を持っていなければ集団免疫を獲得できず、流行を抑制できないとなると現実的にはかなり厳しい。

 ワクチン接種についての様々なアンケート調査を見る限り、95%の人々が接種を受け入れるような国は見当たらない。5割程度の人々が前向きにワクチン接種を受け入れるとしても、新型コロナウイルスの流行抑制には不十分である。中国やロシアなど共産圏では接種を義務化することが可能かもしれないが、その他の国では不可能である。

 現実的にはありえないのだろうが、新型肺炎がはしか並みに強力な感染力を有するようになれば、ワクチンがあっても感染拡大を抑制することは難しい。リスクのある急ごしらえのワクチンを子どもたちに打てず、95%の集団免疫を得られないためである。

 各社が開発したワクチンが非常に有望であるとしても、接種率を十分に高められなければ流行の沈静化は困難である。救世主であるワクチンをもってしても経済活動を正常化できないと懸念されれば、原油価格の調整は深くなるだろう。ワクチン期待を軸とした相場が終わり、新型肺炎の感染力あるいは集団免疫獲得の可能性を探る相場へ移り変わっていくのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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