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【特集】コロナとグロースが暴れ続けた2020年、来年は何が来る?
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第55回
前回記事「株価は今後、上下に強烈に振られる!? で、注目する「一石二鳥」の指標は」を読む
早いもので、2020年も年末が近づいてまいりました。今年は、年始から新型コロナウイルス(以下、コロナ)に振り回され、その拡大不安と終息期待に振り回され続けた1年でした。
特に、外出の自粛などで1年のイベントをほとんど体感せずに過ぎ去ったこともあり、抑揚もなくあっという間に過ぎ去った印象です。
そうした中で、なぜか株式市場だけは異様な高騰を見せ、現在のコロナや経済状況を前提とするといまだに違和感は拭えません。しかし、これも流動性相場が引き起こすひとつの歪な結果として記憶に刻んでおこうと思います。
さて、何はともあれ年末ということで、今年の株式市場の振り返りと、来年はどういった銘柄にフォーカスしていけばよいかを考えてみたいと思います。
といっても、株式市場全体については前述のとおりほぼバブル状態で上昇の背景がよく分からない、というのが正直なところです。そうした中で、より戦術的な観点から「市場内でどのような特性の銘柄が買われたのか」という点を、米国株、日本株それぞれについて詳しく見ていきます。
米国株の2020年パフォーマンス上位20銘柄は
手始めに、シンプルに2020年の年初から、どのような銘柄が上昇したのかを振り返ってみます。まずは、米国株(S&P500構成銘柄)からです。
表内の年初来リターンは、2019年12月31日引け時点から、足元12月15日の引け時点までの株価変化率を計算したものであり、数字の高い順に20銘柄を並べています。
トップはエッツイ(ETSY=コード、以下同)という銘柄で、ハンドメイドグッズを販売するEC(電子商取引)大手の急成長銘柄です。
ただ、今年に限ればハンドメイドマスクがすさまじい勢いで売れたらしく、表現が正しいかは分かりませんが「コロナ特需」で恩恵を受けた銘柄の代表格といえるでしょう。
■S&P500構成銘柄 2020年の株価パフォーマンス TOP20
出所:データストリーム
2位はエヌビディア〈ティッカーはNVDA、以下同〉ですが、それ以降にも4位のアドバンスト・マイクロ・デバイス〈AMD〉、7位のサービスナウ〈NOW〉ど、あらゆるモノがネットにつながるIoTや半導体関連といったテクノロジー業種(表中の青の下地)の銘柄が多く見られます。
一方で、医薬やヘルスケアもまとまってランクインしている(表内の黄で色付けした銘柄)ところを見ると、コロナ関連や健康意識の高まりなどが株価に反映されていると思われます。
少なくとも上位20社でいえば、半導体需要とヘルスケアの2業種だけで11銘柄と半数以上を占め、今年の世界の2大投資テーマがしっかりと反映された印象通りの結果です。
ちなみに10位のアライン・テクノロジーについては歯列矯正装置が飛ぶように売れたとのことでコロナはあまり関係ないようですが)。
日本株の2020年パフォーマンス上位20銘柄は
次いで、日本株です。計測期間、ランキング方法は米国株と同様で、こちらは母集団がTOPIX構成銘柄になります。
日本株は、米国株と比べてかなり極端に業種が偏ります。S&P500とTOPIXでは銘柄数が4倍程度の差があるため、単純に横比較はできませんが、上位銘柄のほとんどが情報通信(表中の青の下地)とサービス業(表中の緑の下地)になります。
■TOPIX構成銘柄 2020年の株価パフォーマンス TOP20
出所:データストリーム
情報通信については、ほとんどがデジタルトランスフォーメーション(DX)やあらゆるモノがネットにつながるIoT系のベンダーが占めています。そして、EC(電子商取引)サイトなどはテレワークなどと同様にコロナ特需による高パフォーマンス銘柄の典型例といったところでしょうか。
サービス業については、コロナ関連だけでなく様々な業態が雑多に含まれている印象で、おなじみの「エムスリー」もしっかりと顔を出していますが、面白い銘柄としては12位のKeePer技研<6036>あたりでしょうか。
洗車(カーコーティング)の企業ですが、コロナによる巣籠もりで公共輸送機関よりもマイカーを利用する機会が増えたことが好業績の一因のようです。加えて、IR(投資家向け広報)支援のアイ・アールジャパンホールディングス<6035>、PR TIMES<3922>の両者がランクインしているのも興味深い点です。
オンラインによるIRイベント需要の増加や、年前半の株価急落に伴う株主価値の棄損で、アクティビストなどからの株主提案に対する脅威が高まったことなどが理由として考えられるようです。
間接的にはコロナに絡む銘柄が多いですが、普通に生活しているとこんな潜在需要に気づかない点を振り返って知ることができる点も、株式投資のひとつの魅力といえるかもしれません。
2020年に米国株で高パフォーマンスだったのは、高成長の割高銘柄
続いて、少し定量的な観点から銘柄の傾向を見てみます。単純にリターンで並べるだけでなく、どのような特性を持った銘柄が上昇・下落したのか(つまりファクターリターンのようなもの)という大まかな傾向を測ります。
普段市場を詳しく見ている方にとっては当たり前の内容ですが、改めて事実として確認していきます。方法としては、足元の2020年12月15日時点での高リターン銘柄を抽出するまでは同様なのですが、計測する対象は、その上位銘柄群の2019年12月31日時点の主要ファクターの中央値です。
つまり、簡単にいえば、昨年末時点でどのような状態(ファクター)にあった銘柄が、2020年に非常に高いリターンを生み出したのかを見ることになります。
こちらも、まずは米国株からです。
見方としては、各数字は銘柄のパフォーマンスごとに上位50銘柄、上位10銘柄と銘柄群を分けたもののファクターの中央値の値と、参考までに全体の中央値を表示しています。「対中央値倍率」は、各銘柄群のファクターの中央値が全体の中央値の何倍に該当するのかを表したものになります。
■米国株 2020年高パフォーマンス銘柄の昨年末時点のファクター
出所:データストリーム
たとえば、利益成長率の項目は、TOP50銘柄が13%、TOP10銘柄が21%、中央値が8%となっており、TOP50銘柄の利益成長率は全体の1.7倍、TOP10銘柄は2.6倍に相当するという見方になります。
つまり、今年パフォーマンスの良かった銘柄は、昨年末時点ですでに全体を2倍程度上回る成長が予想されていたことになります。
同様に、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったバリュエーションも昨年末時点ですでに全体に比して2~3倍ほど高く、もともと割高な銘柄がそのまま買われ続けたことがよく分かります。
配当利回りは全体の10分の1と大変低い値になっており、これも整合的です。
これらから、2020年は年間を通して非常に強烈なグロース相場が発生し続けていたと結論付けることができます。本コラムでは過去に何度もグロース相場について解説しているので、ここでは詳細な説明は省きます(参考「ダウ3万ドルでかすむも、グロース株バブルが"健在"なわけ」)。
また、バリュー系指標ほどではないにしろ、ROE(自己資本利益率)も市場全体に比べて1.5倍程度と高い水準となっています。ここ数年延々と続くクオリティ選好の流れが継続しているようにも思われます。
しかし、理論的には高PBR株は高ROE株であることが多く、PBRの格差の方が大きいことから、これは高PBR株選好に高ROE株が巻き込まれただけかもしれません。
一方で、面白いのはベータ、ボラティリティといったリスク系のファクターです。こちらは、市場全体の水準よりも高くなっています。
一昔前(2014~17年くらい)は、低ベータ、低ボラティリティといったいわゆる「スマートベータ」的な銘柄が市場で猛威を振るっていましたが、今は変動性や市場全体に対する感応度の高い銘柄のほうが好まれる傾向にあるようです。
ただ、これも結果論として、過剰流動性に伴い一部のグロース銘柄に資金が一極集中することで、銘柄の過剰反応を起こしやすくなっている状況を反映しただけの可能性もあります。
2020年に日本株で高パフォーマンスだったのは、割高で低ベータ
続いて、日本株も同様に見てみますが、基本的に傾向は米国株と同様です。
■日本株 2020年高パフォーマンス銘柄の昨年末時点のファクター
出所:データストリーム
米国株との違いとしては、日本株の方が高PBR株の買われ方が強く、ベータがやや弱いといったところでしょうか。
いずれにしても、割高成長株が買われ、配当利回りは完全に無視され、高ROE株も好まれるといった傾向が年間を通じて地域を問わず世界的に進行していたというのが2020年のファクターの特徴といえるでしょう。
ここまでは、2020年の大まかな投資スタイルの全体像を眺めてきました。
しかし、これは少なくとも「過去」のデータです。株式投資で重要な点は、
「今まで強いグロース傾向が見られていたのは分かったが、2021年も何も考えずこのまま成長株を買っておけばいいのか?」という疑問に答えることでしょう。
これについては、当然ながら確実なことは誰にも分かりませんが、2021年はこの逆流のリスクが少し高まる可能性があります。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
株探ニュース
...
大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
前回記事「株価は今後、上下に強烈に振られる!? で、注目する「一石二鳥」の指標は」を読む
早いもので、2020年も年末が近づいてまいりました。今年は、年始から新型コロナウイルス(以下、コロナ)に振り回され、その拡大不安と終息期待に振り回され続けた1年でした。
特に、外出の自粛などで1年のイベントをほとんど体感せずに過ぎ去ったこともあり、抑揚もなくあっという間に過ぎ去った印象です。
そうした中で、なぜか株式市場だけは異様な高騰を見せ、現在のコロナや経済状況を前提とするといまだに違和感は拭えません。しかし、これも流動性相場が引き起こすひとつの歪な結果として記憶に刻んでおこうと思います。
さて、何はともあれ年末ということで、今年の株式市場の振り返りと、来年はどういった銘柄にフォーカスしていけばよいかを考えてみたいと思います。
といっても、株式市場全体については前述のとおりほぼバブル状態で上昇の背景がよく分からない、というのが正直なところです。そうした中で、より戦術的な観点から「市場内でどのような特性の銘柄が買われたのか」という点を、米国株、日本株それぞれについて詳しく見ていきます。
米国株の2020年パフォーマンス上位20銘柄は
手始めに、シンプルに2020年の年初から、どのような銘柄が上昇したのかを振り返ってみます。まずは、米国株(S&P500構成銘柄)からです。
表内の年初来リターンは、2019年12月31日引け時点から、足元12月15日の引け時点までの株価変化率を計算したものであり、数字の高い順に20銘柄を並べています。
トップはエッツイ(ETSY=コード、以下同)という銘柄で、ハンドメイドグッズを販売するEC(電子商取引)大手の急成長銘柄です。
ただ、今年に限ればハンドメイドマスクがすさまじい勢いで売れたらしく、表現が正しいかは分かりませんが「コロナ特需」で恩恵を受けた銘柄の代表格といえるでしょう。
■S&P500構成銘柄 2020年の株価パフォーマンス TOP20
順位 | 銘柄名 | ティッカー | 業種 | 年初来 リターン |
---|---|---|---|---|
1 | エッツィ | ETSY | 小売 | 284% |
2 | エヌビディア | NVDA | テクノロジー | 126% |
3 | エル・ブランズ | LB | 小売 | 111% |
4 | アドバンス・マイクロ・デバイス | AMD | テクノロジー | 107% |
5 | ペイパルHD | PYPL | 資本財 | 104% |
6 | フェデックス | FDX | 資本財 | 89% |
7 | サービスナウ | NOW | テクノロジー | 89% |
8 | アルベマール | ALB | 化学 | 84% |
9 | フリーポート・マクモラン | FCX | 天然資源 | 81% |
10 | アライン・テクノロジー | ALGN | ヘルスケア | 81% |
11 | ウェスト・ファーマS | WST | ヘルスケア | 76% |
12 | アイデックス・ラボラトリーズ | IDXX | ヘルスケア | 75% |
13 | ケイデンス・デザインS | CDNS | テクノロジー | 75% |
14 | ロリンズ | ROL | 消費財 | 74% |
15 | キャタレント | CTLT | ヘルスケア | 74% |
16 | テラダイン | TER | テクノロジー | 72% |
17 | シノプシス | SNPS | テクノロジー | 72% |
18 | アマゾン・ドット・コム | AMZN | 小売 | 71% |
19 | クアンタS | PWR | 建設資材 | 68% |
20 | ラムリサーチ | LRCX | テクノロジー | 68% |
2位はエヌビディア〈ティッカーはNVDA、以下同〉ですが、それ以降にも4位のアドバンスト・マイクロ・デバイス〈AMD〉、7位のサービスナウ〈NOW〉ど、あらゆるモノがネットにつながるIoTや半導体関連といったテクノロジー業種(表中の青の下地)の銘柄が多く見られます。
一方で、医薬やヘルスケアもまとまってランクインしている(表内の黄で色付けした銘柄)ところを見ると、コロナ関連や健康意識の高まりなどが株価に反映されていると思われます。
少なくとも上位20社でいえば、半導体需要とヘルスケアの2業種だけで11銘柄と半数以上を占め、今年の世界の2大投資テーマがしっかりと反映された印象通りの結果です。
ちなみに10位のアライン・テクノロジーについては歯列矯正装置が飛ぶように売れたとのことでコロナはあまり関係ないようですが)。
日本株の2020年パフォーマンス上位20銘柄は
次いで、日本株です。計測期間、ランキング方法は米国株と同様で、こちらは母集団がTOPIX構成銘柄になります。
日本株は、米国株と比べてかなり極端に業種が偏ります。S&P500とTOPIXでは銘柄数が4倍程度の差があるため、単純に横比較はできませんが、上位銘柄のほとんどが情報通信(表中の青の下地)とサービス業(表中の緑の下地)になります。
■TOPIX構成銘柄 2020年の株価パフォーマンス TOP20
順位 | 銘柄名<コード> | 業種 | 年初来 リターン |
---|---|---|---|
1 | チェンジ<3962> | 情報・通信業 | 439% |
2 | サイバーリンクス<3683> | 情報・通信業 | 409% |
3 | ブイキューブ<3681> | 情報・通信業 | 392% |
4 | ダントーHD<5337> | ガラス・土石製品 | 339% |
5 | GMOグローバルサインHD<3788> | 情報・通信業 | 281% |
6 | メドピア<6095> | サービス業 | 256% |
7 | フロンティア・マネジメント<7038> | サービス業 | 247% |
8 | コーア商事ホールディングス<9273> | 卸売業 | 245% |
9 | キャリアリンク<6070> | サービス業 | 238% |
10 | エル・ティー・エス<6560> | サービス業 | 221% |
11 | IRジャパンHD<6035> | サービス業 | 218% |
12 | KeePer技研<6036> | サービス業 | 206% |
13 | メディカル・データ・ビジョン<3902> | 情報・通信業 | 196% |
14 | アイティメディア<2148> | サービス業 | 196% |
15 | ベイカレント・コンサルティング<6532> | サービス業 | 189% |
16 | ヤーマン<6630> | 電気機器 | 179% |
17 | エムスリー<2413> | サービス業 | 172% |
18 | Ubicomホールディングス<3937> | 情報・通信業 | 165% |
19 | レノバ<9519> | 電気・ガス業 | 164% |
20 | PR TIMES<3922> | 情報・通信業 | 161% |
情報通信については、ほとんどがデジタルトランスフォーメーション(DX)やあらゆるモノがネットにつながるIoT系のベンダーが占めています。そして、EC(電子商取引)サイトなどはテレワークなどと同様にコロナ特需による高パフォーマンス銘柄の典型例といったところでしょうか。
サービス業については、コロナ関連だけでなく様々な業態が雑多に含まれている印象で、おなじみの「エムスリー」もしっかりと顔を出していますが、面白い銘柄としては12位のKeePer技研<6036>あたりでしょうか。
洗車(カーコーティング)の企業ですが、コロナによる巣籠もりで公共輸送機関よりもマイカーを利用する機会が増えたことが好業績の一因のようです。加えて、IR(投資家向け広報)支援のアイ・アールジャパンホールディングス<6035>、PR TIMES<3922>の両者がランクインしているのも興味深い点です。
オンラインによるIRイベント需要の増加や、年前半の株価急落に伴う株主価値の棄損で、アクティビストなどからの株主提案に対する脅威が高まったことなどが理由として考えられるようです。
間接的にはコロナに絡む銘柄が多いですが、普通に生活しているとこんな潜在需要に気づかない点を振り返って知ることができる点も、株式投資のひとつの魅力といえるかもしれません。
2020年に米国株で高パフォーマンスだったのは、高成長の割高銘柄
続いて、少し定量的な観点から銘柄の傾向を見てみます。単純にリターンで並べるだけでなく、どのような特性を持った銘柄が上昇・下落したのか(つまりファクターリターンのようなもの)という大まかな傾向を測ります。
普段市場を詳しく見ている方にとっては当たり前の内容ですが、改めて事実として確認していきます。方法としては、足元の2020年12月15日時点での高リターン銘柄を抽出するまでは同様なのですが、計測する対象は、その上位銘柄群の2019年12月31日時点の主要ファクターの中央値です。
つまり、簡単にいえば、昨年末時点でどのような状態(ファクター)にあった銘柄が、2020年に非常に高いリターンを生み出したのかを見ることになります。
こちらも、まずは米国株からです。
見方としては、各数字は銘柄のパフォーマンスごとに上位50銘柄、上位10銘柄と銘柄群を分けたもののファクターの中央値の値と、参考までに全体の中央値を表示しています。「対中央値倍率」は、各銘柄群のファクターの中央値が全体の中央値の何倍に該当するのかを表したものになります。
■米国株 2020年高パフォーマンス銘柄の昨年末時点のファクター
ランキング | 12カ月先予想 | 実績 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
利益 成長率 | PER | PBR | 配当 利回り | ROE | ベータ | ボラティ リティ | |
TOP10 | 21% | 37.4 | 8.9 | 0.1% | 23.4% | 1.7 | 37% |
対中央値 倍率 | 2.6 | 2.0 | 2.9 | 0.1 | 1.3 | 1.6 | 1.6 |
中央値 | 8% | 18.4 | 3.1 | 1.9% | 17.8% | 1.0 | 23% |
TOP50 | 13% | 25.4 | 7.0 | 0.1% | 29.0% | 1.4 | 30% |
対中央値 倍率 | 1.7 | 1.4 | 2.3 | 0.1 | 1.6 | 1.3 | 1.3 |
たとえば、利益成長率の項目は、TOP50銘柄が13%、TOP10銘柄が21%、中央値が8%となっており、TOP50銘柄の利益成長率は全体の1.7倍、TOP10銘柄は2.6倍に相当するという見方になります。
つまり、今年パフォーマンスの良かった銘柄は、昨年末時点ですでに全体を2倍程度上回る成長が予想されていたことになります。
同様に、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったバリュエーションも昨年末時点ですでに全体に比して2~3倍ほど高く、もともと割高な銘柄がそのまま買われ続けたことがよく分かります。
配当利回りは全体の10分の1と大変低い値になっており、これも整合的です。
これらから、2020年は年間を通して非常に強烈なグロース相場が発生し続けていたと結論付けることができます。本コラムでは過去に何度もグロース相場について解説しているので、ここでは詳細な説明は省きます(参考「ダウ3万ドルでかすむも、グロース株バブルが"健在"なわけ」)。
また、バリュー系指標ほどではないにしろ、ROE(自己資本利益率)も市場全体に比べて1.5倍程度と高い水準となっています。ここ数年延々と続くクオリティ選好の流れが継続しているようにも思われます。
しかし、理論的には高PBR株は高ROE株であることが多く、PBRの格差の方が大きいことから、これは高PBR株選好に高ROE株が巻き込まれただけかもしれません。
一方で、面白いのはベータ、ボラティリティといったリスク系のファクターです。こちらは、市場全体の水準よりも高くなっています。
一昔前(2014~17年くらい)は、低ベータ、低ボラティリティといったいわゆる「スマートベータ」的な銘柄が市場で猛威を振るっていましたが、今は変動性や市場全体に対する感応度の高い銘柄のほうが好まれる傾向にあるようです。
ただ、これも結果論として、過剰流動性に伴い一部のグロース銘柄に資金が一極集中することで、銘柄の過剰反応を起こしやすくなっている状況を反映しただけの可能性もあります。
2020年に日本株で高パフォーマンスだったのは、割高で低ベータ
続いて、日本株も同様に見てみますが、基本的に傾向は米国株と同様です。
■日本株 2020年高パフォーマンス銘柄の昨年末時点のファクター
ランキング | 12カ月先予想 | 実績 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
利益 成長率 | PER | PBR | 配当 利回り | ROE | ベータ | ボラティ リティ | |
TOP10 | 17% | 35.0 | 4.7 | 0.4% | 16.5% | 0.8 | 45% |
対中央値 倍率 | 1.9 | 2.3 | 3.9 | 0.2 | 1.8 | 0.8 | 1.7 |
中央値 | 8% | 15.3 | 1.2 | 2.1% | 9.3% | 1.1 | 27% |
TOP50 | 18% | 22.9 | 3.0 | 1.1% | 14.5% | 1.0 | 35% |
対中央値 倍率 | 2.1 | 1.5 | 2.5 | 0.5 | 1.6 | 0.9 | 1.3 |
米国株との違いとしては、日本株の方が高PBR株の買われ方が強く、ベータがやや弱いといったところでしょうか。
いずれにしても、割高成長株が買われ、配当利回りは完全に無視され、高ROE株も好まれるといった傾向が年間を通じて地域を問わず世界的に進行していたというのが2020年のファクターの特徴といえるでしょう。
ここまでは、2020年の大まかな投資スタイルの全体像を眺めてきました。
しかし、これは少なくとも「過去」のデータです。株式投資で重要な点は、
「今まで強いグロース傾向が見られていたのは分かったが、2021年も何も考えずこのまま成長株を買っておけばいいのか?」という疑問に答えることでしょう。
これについては、当然ながら確実なことは誰にも分かりませんが、2021年はこの逆流のリスクが少し高まる可能性があります。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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