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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 ―誰が大統領選の勝者か-

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第46回 誰が大統領選の勝者か

●想定通りの選挙結果

 11月3日に投開票日を迎えた米大統領選ではバイデン前副大統領が勝利した可能性が高まっています。幾つかの激戦州の開票結果が確定していないため、現時点で勝敗は最終決着していません。前回の本コラムで指摘の激戦6州のうち、4州でバイデン候補の得票がトランプ大統領を上回っています。2016年選挙では6州すべてでトランプ候補が勝利しました。その結果、獲得選挙人数が306対232でのトランプ圧勝になりました。

 今回は激戦4州でバイデン候補が勝利する流れで、さらにジョージア州でもバイデン候補が優勢であるため、このまま決着すると獲得選挙人数が305対233でのバイデン圧勝になります。2016年選挙ではクリントン候補の得票がトランプを286万票上回りましたが、今回はバイデン候補がトランプ大統領の得票を518万票上回っています。地滑り的なバイデン候補圧勝の開票結果になっています。

 ただし、トランプ大統領が敗北を認めていないため選挙結果の確定にはなお時間を要するものと見られています。それでも激戦州での両候補者得票数に大きな差がついているため、選挙結果が覆る可能性は小さいと考えられます。ここではバイデン候補勝利を前提に考察を進めたいと思います。

●すべての米国民への配慮が欠落

 トランプ大統領の敗因はトランプ大統領の白人中心主義的言動、自分ファーストの姿勢にあると考えます。コロナ感染症がパンデミックとなり、米国では20万人以上の死者が出ました。東アジアと比較して米国の被害が深刻化したのは米国人の肥満率が高いこと、多くの市民が十分な医療を受けられる状況にないことが強く影響したと見られます。CDC(米疾病予防管理センター)は本年1月末から10月の超過死亡者数(例年より多い死亡者数)が30万人に達したことを発表しました。コロナ死者数は公表数値よりも多い可能性があります。

 注目されるのはヒスパニックや黒人の超過死亡者数が著しく多いことです。トランプ大統領は自身がコロナ感染したと公表しましたが特別の治療を受けて迅速に復活し、マスク着用を批難しました。本当にコロナに感染したのかどうか疑わしい面もありますが、多くの米国人がトランプ大統領のコロナ軽視姿勢を嫌悪したと思われます。

 トランプ氏を大統領から引きずり下ろしたいと思う人をトランプ大統領が量産してしまったことが、選挙での敗北をもたらしたと言えます。それでもトランプ氏への投票は7200万票を超えており、大統領選後の米国融和は簡単に実現しないと思われます。

●株価急騰の背景

 11月6日発表の米雇用統計では雇用者数が約64万人増えて失業率が6.9%に低下しました。米国経済は順調な景気回復過程を進行しています。コロナ・パンデミックが発生していなければトランプ大統領再選の可能性はあったと思われます。この意味でコロナがトランプ退場の主因になったと見ることができます。ここで見落とせないのは、米国との貿易戦争に引き込まれた中国がトランプ退場を期待していたのではないかということです。

 選挙結果を受けて内外株価が急反発しました。内外政治関係者がトランプ大統領退場を歓迎していることがうかがわれます。選挙結果でバイデン氏が当選するとともに上下両院の過半数を民主党が確保する場合、バイデン候補が提示している大企業と富裕層に対する増税が実現する可能性が高まり、これが株価下落要因になることが警戒されていました。ところが、上院で共和党が半数を確保したため、この警戒感が後退し、株価上昇を勢いづけたと見られます。

 トランプ大統領は選挙敗北を認めず、政策対応を急激に鈍化させています。このため、追加経済対策の決定が先送りされる可能性が高まっています。こうしたことから、大統領選直後のラリーが一巡して小幅調整が発生する余地が生じているように見受けられます。

 日本経済は20年4-6月期に年率28.1%のマイナス成長を記録しました。統計開始以来最大のGDPの落ち込みになりました。しかし、11月16日発表の7-9月期GDPでは2桁の大幅プラス成長率が見込まれます。飲食、航空、鉄道、百貨店、化粧品などの業種の落ち込みは深刻ですが、経済全体は急速に浮上する方向性を強めています。

●国内株式市場にとっての重要局面

 さらに、マネーストックが未曾有の大幅増加を示しており、過剰流動性による資産価格バブルが発生する地合いが強まっています。日経平均株価が29年ぶりの高値を記録していますが、株式市場を取り巻く基本環境は良好な状態が当面維持される可能性が高いでしょう。

 こうしたなかで日本のコロナ新規陽性者数が8月7日のピークを更新しました。コロナ感染第3波が急拡大する様相を強めています。この感染拡大は季節性による面もありますが、最大の背景になっているのはGo Toトラベル事業の全国展開推進です。人の移動によってウイルスの拡散が推進されています。

 加藤勝信官房長官は「最大限の警戒感をもって対処している」と言いますが完全な言行不一致です。最大限の警戒感を持つならGo To 事業は即時中断しないとつじつまが合いません。菅首相は明瞭にGo To 事業の継続実施を示しています。つまり、菅内閣はコロナ感染拡大を推進、あるいはそこまでではなくとも基本的に容認しているのです。

 これと矛盾してしまうのが政府によるワクチンの巨額買い上げですが、この利権予算推進の事情があるためにコロナ警戒感を強く演出する必要性に迫られていると言えるでしょう。

 『金利・為替・株価特報』2020年11月16日号ではこの環境下での投資戦術について考察しています。国内株式市場が非常に重要な局面に差しかかっていると考えています。

(2020年11月13日記/次回は11月28日配信予定)

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