【特集】新型コロナ「第3波」襲来を警戒、年末商戦はECシフトへ <株探トップ特集>
巣ごもり消費や在宅勤務などでECサイトを利用する人が増えている。今年も残すところ2ヵ月を切り年末商戦が活発化しているが、そこでも主役はECのようだ。
―感染拡大予防で消費行動に変化、年中行事もリアル店舗からネット通販へ―
2020年も残すところあと2ヵ月を切ったが、例年11月から12月にかけては、小売業界では年末商戦 が話題になる時期でもある。今年は特に、ソニー <6758> や米マイクロソフトが新型ゲーム機を発売することでゲーム関連への関心が高まることが予想されており、いまだ堅調な売れ行きが続く任天堂 <7974> の「ニンテンドースイッチ」と相まって、ゲーム業界にとって大きな刺激となろう。
一方で今年は「コロナ禍」で迎える初めての年末商戦であることも忘れてはならない。感染予防のため、Eコマース(EC)での買い物をする人は着実に増えており、足もとで警戒される「第3波」の襲来もこの傾向を強める可能性がある。今年の年末商戦はECが熱くなりそうだ。
●ネットショッピング利用世帯は増加
総務省統計局が発表した「家計消費状況調査」によると、ネットショッピング利用世帯の割合は、緊急事態宣言や一斉休校などによる外出自粛要請の影響で5月に50.5%と初めて5割を突破した後も高水準の推移が続き、9月度は49.9%と前年同月に比べて6.9ポイントも上昇した。実店舗が営業時間の短縮や入場時間ごとの予約制など、「3密」を避けるための施策をとる一方、消費者側も密集した場所へ買い物に行くことには抵抗があるため、家でゆっくりと商品を選ぶことができるECの活用が増えているようだ。
また、「コロナ禍」により、消費者が自宅で過ごす時間が増えていることも、ネットショッピングの利用を増やしている。リモートワークやオンライン学習の利用拡大で、インターネット広告などにより商品情報が消費者の目に入る機会が多くなっていることも、ECの集客につながっている。
●ECが年末商戦の主役に
こうしたことから20年の年末商戦では、以前からECを利用していた人は、実店舗に行く機会が減る一方でECの購買機会を増やし、「コロナ禍」を機に新たに利用を始めた人は年末商戦の売り上げに貢献するといった消費行動の変化が起きる可能性が高い。ネットショッピング利用世帯の割合は例年、年末にかけて増える傾向にあり、今年はコロナ禍により、更にその傾向が強まることになりそうだ。国は異なるが、中国アリババ集団の「独身の日」(11月11日)に向けたセールで、累計取引額が4982億元(約7兆9000億円)と過去最高を記録したことはその証左となろう。
また、アマゾンの「Amazonサイバーマンデー」をはじめ、12月にはセールが多く予定されていることも、今年は例年以上にEC需要に刺激を与え、関連銘柄の業績にも好影響を与えそうだ。
●総合大手やファッション通販サイトに注目
ECで注目されるのはやはり大手ECサイトだが、支出額の増減に寄与するファッションなどにも注目したい。
楽天 <4755> の第3四半期(7-9月)決算で、ショッピングEC流通額は、前年同期比29.3%増に拡大。国内EC流通総額も同11.7%増の1兆986億円に膨らんだ。同社では、20年12月期通期業績予想について、株式市況の影響を大きく受ける証券サービスを除いた連結売上高で2ケタ成長を目指すとしており、トップラインの拡大が続く見通し。
Zホールディングス <4689> は、第2四半期(7-9月)のショッピング事業取扱高が前年同期比51.3%増と急拡大した。ZOZO <3092> の子会社化が大きく寄与したが、ZOZOTOWN本店を除いても同12.0%増と伸長。新規購入者数が上期で同38.0%増となったことが貢献した。
そのZOZOの第2四半期累計(4-9月)決算で、商品取扱高は1856億円(前年同期比16.3%増)となった。新型コロナウイルスの影響のうち、ポジティブ要素(デジタルシフト)がネガティブ要素(需要減)を上回ったとしており、21年3月期通期計画の3873億円(前期比12.2%増)に対する進捗も順調だ。
エニグモ <3665> は、4月の総取扱高は急減したが、5月以降はV字回復を達成し、6月以降では前年同月比30%増を上回って推移しているという。第2四半期累計(2-7月)単独決算で総取扱高は前年同期比11.0%増と拡大しており、下期業績へも好影響を与えそうだ。
●新型ゲーム機でメリット受けるECにも注目
また、今年の年末商戦では、新型ゲーム機の登場でゲームが例年以上に注目されていることから、ゲーム機を扱うECにも恩恵はありそうだ。
ビックカメラ <3048> の20年8月期決算では、ビックカメラ単体のEC売上高が前の期比51.6%増と大幅に伸長。子会社コジマ <7513> も同35.8%増となり、その他を含め連結EC売上高は同37%増と成長した。同社では今期の取り組みとしてインターネット通販事業の拡大を掲げており、EC売り上げの増加基調は続きそうだ。
ゲオホールディングス <2681> の第2四半期累計(4-9月)決算で、小売サービスにおけるEC関与売上高は前年同期比23.3%増となった。同社では、認知度の向上と物流整備を図ることで更なる拡大を目指しており、今後の成長に期待が持てる。
●製菓・製パン材料のcottaなども
このほか、製菓・製パン用の材料・レシピなどのECサイトを運営するcotta <3359> [東証M]は、第4四半期(7-9月)の売上高が前年同期比約40%増になったと発表した。緊急事態宣言による巣ごもり需要でパンや菓子の手作りが広がり、4-6月は同約70%増だったが、その後も手作りの習慣が定着していることがうかがえる。
更に、健康食品や化粧品などを取り扱う北の達人コーポレーション <2930> や、靴とファッションの通販サイトを運営し、上期決算で採算改善を確認したロコンド <3558> [東証M]などにも注目したい。
株探ニュース