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【特集】農産物輸出「5兆円」へ、菅首相“肝いり”新戦略ポテンシャルは <株探トップ特集>

菅首相は1日、農林水産物・食品の輸出立国に向けた戦略策定を指示。2030年輸出額5兆円達成への取り組みを強化する。

―19年9121億円からの成長戦略で関連株にスポットライト―

 政府は今月1日、 農産物の輸出拡大を目的とした関係閣僚会議を開いた。このなかで菅義偉首相は野上浩太郎農林水産相らに「農林水産物・食品の輸出立国確立に向けて、年末までに具体的な戦略を策定してほしい」と指示。輸出額を2030年までに5兆円(19年は9121億円)に引き上げる政府目標の達成に向けた取り組みを加速させる考えを示した。農産物の輸出拡大は首相の肝いり政策のひとつとされ、官房長官時代には関係閣僚会議の議長を務めた経緯がある。足もとではオンラインで「第4回“日本の食品”輸出EXPO」(14~16日)が開催されるタイミングでもあり、関連銘柄に焦点を当てた。

●農水省は21年度概算要求を増額

 1日に開かれた「農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」の冒頭で、加藤勝信官房長官は「今年3月に新たな輸出額目標として30年までに5兆円とすることを閣議決定しており、菅内閣においても取り組みを更に進めていきたい」と述べた。同会議の資料によれば、国内の食品市場は人口減を背景に縮小すると予想している半面、世界の市場規模は30年までに1360兆円と15年比較で約1.5倍に拡大すると予測。世界の農産物輸出市場については、01年の4144億ドルから18年には1兆4486億ドルへと約3.5倍に伸長した一方、同期間の日本の輸出額は3020億円から5661億円と約1.9倍にとどまっており、日本の農産品は味や品質で世界に通用するブランド力を持っていることを考えれば輸出増のポテンシャルは高いと指摘している。

 菅首相は会議での議論を踏まえ「市場が求めるものを作るという発想で改革を行っていけば、目標は十分に実現可能だ」と強調。農水省に今年4月発足した「農林水産物・食品輸出本部」を中心に、輸出先への働きかけや輸出に対応できる施設の整備を進める考えを明らかにした。農水省は輸出拡大に向けて組織を再編し「輸出・国際局(仮称)」の設置を検討しているほか、21年度予算の概算要求では関連項目で増額を要求。グローバル産地づくりの強化に36億円(20年度当初予算5億円)、輸出本部の下での輸出先国の規制緩和・撤廃に向けた取り組みの強化及び輸出手続の円滑化に32億円(同17億円)、輸出向け衛生管理施設の整備に79億円(同15億円)、戦略的なマーケティング活動の強化に56億円(同28億円)、食産業による海外展開及び多様なビジネスモデルの創出に14億円(同7億円)を計上している。

●期待高まる関連企業の商機拡大

 関連銘柄としては、農業総合研究所 <3541> [東証M]に注目したい。同社は主力の「農家の直売所」事業に加え、海外輸出入やEC(電子商取引)販売などを通じて生産者直送農作物を提案する農産物流通事業を展開。また、6次産業化(1次産業としての農業、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業を含めた経営形態)のサポートなどを行う農業コンサルティング事業も手掛けており、ビジネス機会が一段と増えそうだ。

 有機野菜などを通信販売するオイシックス・ラ・大地 <3182> は、子会社を通じて香港への越境EC事業の売り上げ拡大を図っているほか、米国48州を対象にビーガン(動物性食品を食べない人のこと)食のミールキットを宅配するサブスクリプションサービスを運営。日本の安全でおいしい農作物を提供している。

 農産物の輸出拡大は、食の安全・安心情報管理システム「FOODS eBASE」を提供しているeBASE <3835> の追い風になりそうだ。このシステムでは一貫した食品の情報共有によって、消費者へ正確な品質の表示ができ、食の安全への取り組みをスムーズに行えることから輸出拡大による需要増が見込まれる。

 このほか、日本貿易振興機構(ジェトロ)の農林水産物・食品輸出協力リストに名を連ねている石光商事 <2750> [JQ]、神栄 <3004> 、兼松 <8020> 、鴻池運輸 <9025> 、日本通運 <9062> 、ヤマトホールディングス <9064> 、山九 <9065> 、日新 <9066> 、澁澤倉庫 <9304> 、川西倉庫 <9322> 、東洋埠頭 <9351> 、上組 <9364> 、加藤産業 <9869> などにも注目したい。

●農業を効率化する企業にも注目

 生産者がグローバル市場で戦うためには、農業の効率化や品種改良などが重要なカギを握る。 種苗を販売するカネコ種苗 <1376> やサカタのタネ <1377> 、肥料大手の多木化学 <4025> やOATアグリオ <4979> 、各種農薬を提供している北興化学工業 <4992> やクミアイ化学工業 <4996> 、 農機大手の井関農機 <6310> やクボタ <6326> の活躍が期待されるほか、農産物の包装資材を手掛ける日本製麻 <3306> [東証2]も恩恵を受けそうだ。

 また、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して超省力・高品質生産を実現するスマート農業の関連銘柄も見逃せない。農水省は21年度予算の概算要求で、スマート農業総合推進対策事業として55億円(20年度当初予算は15億円)を計上している。

 主な関連銘柄としては、栽培計画などをクラウド上で管理する「農場物語」を手掛けるイーサポートリンク <2493> [JQ]、技能の可視化・継承などを支援する農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を扱うキーウェアソリューションズ <3799> [東証2]、農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」を提供するセラク <6199> 、農業ICT事業「NCXX FARM(ネクスファーム)」を展開するネクスグループ <6634> [JQ]、GNSS(全球測位衛星システム)技術を駆使した精密農業機器を手掛けるトプコン <7732> などが挙げられる。

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