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【特集】シンバイオ製薬 Research Memo(1):21年12月期の黒字化に向け「トレアキシン(R)」の自社販売体制を構築

シンバイオ <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

シンバイオ製薬<4582>は、患者数は少ないが医療ニーズの高い「がん、血液、希少疾病」領域をターゲットに、臨床試験段階からの開発を進めるバイオベンチャーである。主要開発パイプラインは悪性リンパ腫向け治療薬として適応拡大が進んでいる「トレアキシン(R)」や骨髄異形成症候群(MDS)向けに開発が進む「リゴセルチブ」のほか、2019年9月に抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル(BCV)」のグローバルライセンス契約を米キメリックス<CMRX>と締結、新たに海外でも開発を進めていく方針で、将来的にグローバル・スペシャリティファーマになることを目指している。

1.2021年12月期の黒字化実現に向けたポイント
2021年12月期の黒字化実現に向けたポイントとして同社は、「トレアキシン(R)」の自社販売体制構築、付加価値の高い液剤タイプ(RTD製剤)の販売開始、「トレアキシン(R)」の適応拡大の3つを主要ポイントとして掲げており、現在までそれぞれ順調に進捗している。「トレアキシン(R)」は2020年12月でエーザイ<4523>との販売契約終了後に自社販売体制に移行するが、2020年12月期第2四半期までに専門性の高い営業・マーケティング人材の採用や基幹システムの導入、自社物流体制の構築、コールセンターの設置が完了し、その準備は整った。また、RTD製剤については2020年9月23日に販売承認を取得したことを発表、2021年1月に販売を開始する予定となっている。既存の凍結乾燥注射剤タイプからの切り替えを進めていくことで、薬価ベースで売上高100億円の早期達成を目指す。自社販売の開始とRTD製剤への切り替えによって、「トレアキシン(R)」の利益率向上が見込まれるほか、販売承認申請中の再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に適応拡大されれば、対象患者数が従来から約2倍に拡大することになる。承認取得時期は2021年第3四半期以降となる見通しで、順調に進めば2021年12月期での営業黒字化が達成可能になるものと予想される。

2.その他開発パイプラインの動向
「リゴセルチブ」(注射剤)については、導入元のオンコノバ・セラピューティクス<ONTX>(以下、オンコノバ)(米)が高リスクMDSを対象とした国際共同第3相臨床試験のトップライン(主要評価項目)データを2020年8月24日に発表した。主要評価項目である全生存期間において、比較群との間で有意差が得られなかったことを明らかにしており、今後、詳細な統計解析を進めていく予定となっている。また、キメリックスから導入した「BCV」(注射剤)は、グローバルアドバイザリーボードの意見を踏まえて、未だ治療薬が無い造血幹細胞移植後に発症するアデノウイルス感染症(小児向け)を対象とした国際共同第2相臨床試験から行う方針を固め、その準備に着手している。アデノウイルス感染症で承認が取れれば、その他のDNAウイルス感染症に適応拡大し、造血幹細胞移植後のマルチウイルス感染症や、臓器移植後の感染症の治療薬及び予防薬として開発を進めていくことにしている。なお、「BCV」については製造権も取得しているため、現在、臨床試験に向けて製造委託先を選定している段階にある。

3.業績動向
2020年12月期第2四半期累計(2020年1月-6月)の業績は、売上高で前年同期比32.1%減の1,360百万円、営業損失で1,839百万円(前年同期は2,015百万円の損失)となった。売上高は「トレアキシン(R)」の仕入先工場での品質問題が長引いており、仕入れ量の減少が減収要因となっている。費用面では、国内での検品体制強化によるコスト増があったものの、研究開発費やその他販管費の抑制に取り組んだことが営業損失の縮小要因となった。

2020年12月期の業績見通しは、2020年9月17日に修正を行い、売上高で前回予想比10.6%減の3,043百万円とした一方で、営業損失が4,592百万円と、前回予想の5,090百万円から損失幅を縮めている。2021年12月期の黒字化実現に向けて必要な投資や「BCV」の開発費を除いて、その他すべての経費の見直しを実施し、販管費を期初計画から大幅に絞り込んだことが主因だ。また、同社は、ザ・メディシンズ・カンパニー(以下、メディシンズ)(米)に対してライセンス契約不履行による損害賠償を求めた裁判において、米国ICC(国際商業会議所)での仲裁の最終判断がなされたことを2020年9月1日に発表しており、弁護士費用を含めた仲裁手続きに係る諸費用の50%(495万米ドル)をメディシンズから受け取ることとなる。これを受けて、当期純損失については、前回予想の4,803百万円から3,796百万円へと縮小している。

4.中期経営計画
同社は中期経営計画の業績目標として、2022年12月期に売上高10,816百万円、営業利益1,482百万円を掲げており、営業利益率で持続的に10%以上を目指していく考えだ。ただ、今回2020年12月期の通期業績予想を修正したことによる影響を考慮したうえで、中期経営計画における数値について精査しており、改めて修正開示するとしている。2021年2月に新たな中期経営計画を発表する予定だが、そのなかでは「トレアキシン(R)」に加えて、「リゴセルチブ」や「BCV」の今後の開発戦略についても明らかになるものと思われる。

■Key Points
・2020年12月期第2四半期累計業績は「トレアキシン(R)」の品質問題が続き2ケタ減収となるも、黒字化に向けた営業・物流体制の構築は完了
・2020年12月期の損失額は期初計画から縮小する可能性も
・BCVのグローバル展開が進めば売上成長ポテンシャルは一段と拡大

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

 提供:フィスコ

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