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【特集】窪田製薬HD Research Memo(1):近視進行抑制効果が期待される「クボタメガネ」、2021年内商品化の可能性

窪田製薬HD <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米クボタビジョン・インクを子会社に持つ持株会社である。現在は、加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者向けの遠隔医療眼科用モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」と、スターガルト病※及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の開発を主に進めている。また、2020年に入ってから、近視の進行を抑制または改善させる効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」の開発を加速していくと発表している。

※ スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。


1. 「クボタメガネ」の開発を加速
同社はメガネのいらない世界をつくるという理想を掲げ、「クボタメガネ」の開発を加速して進めている。同デバイスは網膜に人工的な光刺激を能動的に与える同社独自の技術(アクティブスティミュレーション技術※1)を用いており、自然光を受動的に用いる先行他社製品とは一線を画したデバイスとなる。網膜に光の刺激を与えることで眼軸長※2が短縮し、近視の進行抑制または改善効果が期待される。ヒトでの概念実証試験で眼軸長の短縮が確認されたことを受け、2020年内にプロトタイプの完成を目指す。まずは子供向けを対象に商品化し、販売地域については各国の規制状況を見ながら今後、決定していくとしており、早ければ2021年中にも商品化される可能性がある。世界における近視人口は年々増加しており、同社は潜在的な市場規模として2030年に全世界で最大1兆3千億円の市場の可能性を有していると見ており、今後の動向が注目される。

※1 アクティブスティミュレーション技術では、ナノテクノロジーを用いて能動的に特殊な映像を網膜に投影する技術で特許も申請中となっている。
※2 角膜から網膜までの長さ。成人の場合、平均約24mmで、1~2mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまうため、遠くが見えにくくなる(=近視)。


2. 開発パイプラインの状況
主要開発パイプラインのうち、「PBOS」については2020年8月にスイスの眼科大学病院と共同研究契約を締結した。同社は既に、AI技術を用いて「PBOS」で計測した患者の網膜断面データを基にして、3D画像を作成することに成功しているが、解像度の検証や、組織から滲出した液成分の滞留の有無の検出などの精度を高めるべく、ソフトウェアの改良と多数の患者データの収集を行う予定になっている。これらの研究は、パートナー候補企業との協議のなかで示された要件の1つとなっており、同研究によって目標の成果が得られれば、パートナー候補企業と販売契約を締結し、共同で臨床試験を進めていくものと予想される。スターガルト病治療薬候補の「エミクススタト塩酸塩」については、第3相臨床試験の被験者登録が完了し、2022年4月末までの経過観察期間に入っている。観察期間を経て有効性が確認されれば、販売承認申請を行うとともに販売パートナー契約の締結に向けた交渉を開始する予定にしている。NASA(米航空宇宙局)向けの宇宙飛行士用超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT※(以下、SS-OCT)」に関する開発プロジェクトは、2020年2月にフェーズ1の開発が終了し好評価を受けたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年は開発予算が絞られた影響で、フェーズ2の開始時期については2021年以降となる可能性が大きくなっている。また、2020年4月にLeo Pharma(デンマーク)と共同研究契約を締結して進められているVAP-1阻害剤候補化合物の評価についての結果は、半年から1年程度で判明すると見られるが、結果が良ければライセンス契約に発展する可能性がある。

※ OCT(Optical Coherence Tomography)は赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のことで、緑内障や加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者の診断用として使用される。


3. 業績動向
2020年12月期第2四半期累計の連結業績は、NASAからの開発受託金収入37百万円を事業収益として計上し、営業損失については研究開発費の減少を主因として1,292百万円(前年同期は1,530百万円の損失)とほぼ会社計画どおりに進捗した。通期見通しに関しては事業収益で40百万円、営業損失で3,000百万円を見込んでいる。2020年12月期下期は「クボタメガネ」を中心に研究開発費が増加する。なお、2020年6月末の手元キャッシュは約71億円となっており、当面の事業活動を行うに当たっての資金は十分に確保されている。また、2020年7月に第三者割当による新株予約権を発行しており、今後、同予約権の行使が進むことによって26億円程度の資金調達が可能になると見られる(行使価格290円を前提)。

■Key Points
・近視の進行を抑制または改善する効果が期待される「クボタメガネ」は2020年内にプロトタイプの完成を目指す
・「PBOS」は販売パートナー契約締結に向けて、機能強化に向けたソフトウェア改良に着手
・2020年12月期は営業損失で30億円と前期並みの水準となる見通し

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《EY》

 提供:フィスコ

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