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【特集】自民党総裁選は菅氏圧勝、「スガノミクス相場」始動で買われる株 <株探トップ特集>

自民党総裁選では、菅義偉官房長官が勝利し、総理大臣に就任することが確実となった。市場には「既得権益を打破して規制改革を進める」と語る同氏の政策に期待する声が多い。

―16日の臨時国会で新首相誕生へ、総選挙実施を意識し相場躍動も―

 14日に行われた自民党総裁選では、菅義偉官房長官が圧勝した。これにより、菅氏が自民党総裁に選出された。16日の臨時国会で指名を受け、総理大臣に就任する見込みだ。菅政権の発足に向け、今後は同氏の経済政策である「スガノミクス」を本格的に織り込む局面に入る。また、早ければ10月総選挙を予想する声も少なくない。11月の米大統領選も近づくなか今秋のマーケットは政治が最大の焦点となる。

●菅氏が全体の70%の票を獲得、岸田、石破両氏に大差で勝利

 14日に投開票された自民党総裁選挙は、有力派閥の支持を受けた菅氏が勝利した。有効投票数534票のうち菅氏が377票と全体の70%を獲得。2位の岸田文雄政調会長の89票、3位の石破茂元幹事長の68票を大きく上回った。これに対して、市場からは「ほぼ予想通りの結果となった」との見方が出ていた。今後は16日から臨時国会が召集され、新首相を選出する首班指名選挙が行われる。ここで自民党総裁となった菅氏が新総理に選出されるのは確実であり、菅政権が発足することになる。

●新閣僚人事にも注目、通信・放送関連株に思惑も

 首相就任が確実視されている菅氏は、安倍政権の路線を継承する姿勢を打ち出しているが、更に「縦割り行政、前例主義、既得権益を打破して規制改革を進める」とも述べている。「菅氏の政権が長期政権となれるかどうかは、来年9月の自民党総裁選で再任されるかによる。その意味で、閣僚人事で派閥の意思を重視するのか、あるいは独自色を出すのかが注目される。情勢次第で、長期政権となる可能性はある。すでに織り込んでいる面はあるが、基本的には菅政権の発足は株式市場にはプラスに働くだろう」と証券ジャパンの大谷正之調査情報部長はみている。

 新政権発足に絡む閣僚人事では、新たな官房長官に誰がなるか、目玉の人事があるか、などがポイントだ。一部には、橋下徹・元大阪市長(日本維新の会前代表)が総務大臣として入閣するといった思惑もある。同氏が総務相として入閣した場合、足もとでは通信料金引き下げ思惑で下落基調にあるNTTドコモ <9437> やKDDI <9433> などの通信株や日本テレビホールディングス <9404> やテレビ東京ホールディングス <9413> など放送局といった銘柄に一段の動きが出てくることも予想される。

●当面の焦点は「衆院解散・総選挙」の有無、10月実施の観測も

 また、市場では「近く解散・総選挙があるかどうかが最大の焦点」(アナリスト)とみる声は少なくない。衆院議員の任期は来年10月までであり、それまでに衆院選挙は実施されることになる。問題は、その時期だが、秋以降になるとインフルエンザの流行とともに新型コロナウイルスの感染問題も再度厳しさを増すこともあり得る。更に、来年の東京五輪の実施も不透明なうえに、景気の先行きも見通しづらくなるかもしれない。となると、安倍首相の辞任表明とともに内閣支持率が回復した今秋に解散・総選挙を実施する可能性は強まる。市場には今月解散、来月25日に衆院選の投開票との観測も根強い。「いま選挙をやれば自民党は勝利するだろう」と前出の大谷氏はみている。

 選挙投開票機器のムサシ <7521> [JQ]や選挙通知用封筒のイムラ封筒 <3955> [東証2]、それにグローリー <6457> や西尾レントオール <9699> 、ティーオーエー <6809> などの選挙関連株の動向も注目される。更に、新型コロナ対策に絡み菅氏は第3次補正予算の編成を検討する姿勢をみせており、大成建設 <1801> など建設株が動意づくことも考えられる。

●スガノミクス関連株が本格動意へ、通信、地銀株など

 総選挙の有無は不透明感が残るものの、いずれにせよこれから菅新政権による「スガノミクス」相場が始まる。まずは「Go Toトラベル」や「Go Toイート」といった政策が促進され、JR東日本 <9020> やJR東海 <9022> 、それに串カツ田中ホールディングス <3547> やぐるなび <2440> といった銘柄の動向に関心が集まりそうだ。

 前出の通信株については、菅氏は過去に携帯電話料金を巡って大幅な引き下げ余地に言及したこともあり、ソフトバンク <9434> を含む大手3社の株価はすでに軟調に推移している。その一方、割安料金で携帯業界に新規参入する楽天 <4755> は、上昇基調を強め明暗が分かれている。

 また、菅氏が「数が多すぎる」と発言した地方銀行は今後、業界再編の波が一気に押し寄せそうだ。「地銀連合構想」を掲げるSBIホールディングス <8473> を軸に福島銀行 <8562> や清水銀行 <8364> 、大東銀行 <8563> などの動向が注目される。

不妊治療や少子化対策、官庁DX関連など注目

 更に、菅氏は不妊治療の保険適用の実現に意欲を示している。不妊症治療剤などを手掛ける富士製薬工業 <4554> 、あすか製薬 <4514> 、グループ会社が不妊の代替治療に応用される医療機関向けサプリメントを取り扱うニチモウ <8091> 、妊娠検査薬などを手掛けるミズホメディー <4595> [東証2]などは要マークだ。また、少子化対策の保育支援でJPホールディングス <2749> やグローバルキッズCOMPANY <6189> 、幼児活動研究会 <2152> [JQ]など。

 地方活性化に絡み農業改革では、井関農機 <6310> や丸山製作所 <6316> 、スマート農業に絡むオプティム <3694> やネポン <7985> [東証2]やセラク <6199> など。更にデジタル庁創設への観測から、ITbookホールディングス <1447> [東証M]やキャリアリンク <6070> 、それにチェンジ <3962> 、KYCOMホールディングス <9685> [JQ]など官庁デジタルトランスフォーメーション(DX)関連銘柄への期待も高まっている。

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