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【特集】サン電子 Research Memo(5):2020年3月期は増収ながら損失幅が大きく拡大

サン電子 <日足> 「株探」多機能チャートより

■決算動向

1. 2020年3月期決算の概要
サン電子<6736>の2020年3月期の業績は、売上高が前期比3.9%増の26,220百万円、営業損失が2,252百万円(前期は200百万円の損失)、経常損失が1,875百万円(同352百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が3,440百万円(同985百万円の損失)と増収ながら一過性費用により損失幅が大きく拡大した。2020年2月14日付の修正予想に対しては、売上高、営業(経常)利益ともに上回る着地となっている。

売上高は、モバイルデータソリューション事業において、円高やMLCの売却というマイナス要因があったものの、需要が拡大しているDIが欧州等を中心に好調に推移し、増収を確保した。また、エンターテインメント関連事業及び新規IT関連事業についても前期の落ち込みから一定の回復を図っている。

損益面では、増収効果や各事業における原価改善により、売上総利益段階では増益となったものの、Cellebriteによる第三者割当増資に関連する諸経費(約22億円)の計上が利益を大きく圧迫し、損失幅が拡大した。もっとも、その要因を除けば、各事業で損益改善が進みつつあり、その点は評価できるポイントと言える。また、不採算事業のビジネスモデルの見直し等に伴い、今後使用する見込みのなくなった棚卸資産の評価損及び固定資産の減損により、構造改革費用として事業整理損(約11.5億円)※を特別損失に計上している。

※ホールシステム関連の事業評価損のほか、AR事業のビジネスモデルの見直し等に伴うもの。


財政状態は、事業整理損の計上により棚卸資産が一部減少したものの、「現金及び預金」の増加やM&A(詳細は後述)に伴う「のれん」計上(無形固定資産)などにより、総資産は前期末比61.1%増の43,107百万円に大きく拡大した。なお、「現金及び預金」の増加(前期末比10,167百万円増)はCellebriteの第三者割当増資によるものである。一方、自己資本についてもCellebriteの資本増強に伴って同45.8%増の12,564百万円に増加したが、自己資本比率は29.1%(前期末は32.2%)と若干低下した。なお、「受取手形及び売掛金」(流動資産)並びに前受収益(流動負債)がともに大きく増加しているのは会計方針の変更(総額表示)によりバランスしているものである。

2. 事業別の業績
(1) モバイルデータソリューション事業
売上高は前期比3.3%増の19,018百万円、セグメント損失は1,058百万円(前期は1,794百万円の利益)と増収ながら大幅な営業損失を計上した。売上高は、円高※1やMLCの売却というマイナス要因があった一方、世界的に需要が拡大しているDIは欧州やアジア・オセアニアを中心に好調に推移し、DIだけで見ると同12.8%増の18,947百万円と順調に伸びている。ただ、期初計画を若干下回ったのは、技術力が評価された長期契約のサービス受注が増加したこと(前期業績への寄与は限定的となる)や、機器販売が米国を中心に下振れたことが理由である。もっとも、同社では中長期のシェア確保を示す受注総額を重視しており、長期契約を含む受注総額※2ではおおむね計画どおりの成果を残すことができた。損益面では、Cellebriteの増資関連費用(約22億円)※3が大きく利益を圧迫したほか、将来に向けた研究開発費や固定費の増加等により、大幅な営業損失を計上した。

※1 海外子会社に係る項目(2019年12月末)の換算レートは1米ドル109.56円(前期は111.00円)。
※2 2020年3月期の受注総額は前期比17.5%増の201百万円米ドルと伸びている。
※3 FA費用のほか、人材流出防止や企業価値向上のためのインセンティブ(ボーナス及び株式報酬等)によるもの。


(2) エンターテインメント関連事業
売上高は前期比2.0%増の5,389百万円、セグメント利益は255百万円(前期は17百万円の利益)と増収及び大幅な増益を実現した。売上高は、前期大きく落ち込んでいた遊技機部品・コンテンツの販売が一部回復したことにより増収を確保した。ただ、パチンコホールの設備投資意欲が低調に推移するなかで、期初計画には届かなかった。損益面では、増収による収益の押し上げに加え、費用の効率化にも取り組んだことから大幅な増益となった。

(3) 新規IT関連事業
売上高は前期比28.9%増の1,523百万円、セグメント損失は343百万円(前期は827百万円の損失)と増収増益となり、損失幅が縮小した。売上高の大部分を占めるM2M事業は、自販機向け等のM2M通信機器の販売が好調に推移するとともに、費用の効率化により損失幅は縮小した。また、AR事業についても、まだ実証実験の段階ながら受託開発売上の計上などにより増収を確保するとともに、先行費用の一巡等に伴って損失幅は縮小した。今後は、マルチデバイス対応により、ソリューション中心のビジネスモデルへの転換(機器販売からソフトウェア提供によるサービス売上を軸とした展開)を図る方針である。O2O事業については、テイクアウト予約決済アプリ「iToGoプラットフォーム」が緩やかな伸びにとどまったことから、損失も微減となった。

(4) その他
売上高は前期比23.3%減の288百万円、セグメント損失は101百万円(前期は242百万円の損失)と減収ながら損失幅が縮小した。売上高はゲームコンテンツの販売が低調に推移したが、費用の見直し等により損失幅は縮小した。なお、前期にリリースした「DARK ECLIPSE(ダークエクリプス)」や「Op8♪(オーピーエイト)」については、ユーザーの獲得が思わしくなく、サービスを終了している。

3. 2020年3月期の総括
以上から、2020年3月期を総括すれば、1)Cellebriteによる一過性の増資関連費用の計上、2)モバイルデータソリューションにおける長期サービス契約の増加、3)ビジネスモデルの見直し等にかかる構造改革費用等が重なったことにより業績全体では大きく落ち込んだものの、4)重視するDIの受注総額が順調に伸びていることや、5)エンターテインメント関連事業を始めとする各事業の損益改善が進んできたことは、今後に向けてプラス材料と評価しても良いだろう。最大の注目点は、Cellebriteの第三社割当増資により約122億円の資金調達を実現したことである。既にM&Aを1件(詳細は後述)成約しているが、世界各地で需要が伸びている成長分野への投資資金を確保したことは大きな成果と言え、今後はその活用によりいかに利益成長につなげていくのかを具体的に示していくことが重要なテーマとなるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《EY》

 提供:フィスコ

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