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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 ―波乱相場に打ち克つ方策-

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第31回 波乱相場に打ち克つ方策

●企業収益と株価

 3月10日に年次版TRIレポート2020『低金利時代、低迷経済を打破する最強の資産倍増術』(コスミック出版)を上梓しました。会員制レポート『金利・為替・株価特報』の年次版として2013年より刊行を始めたものです。2013年と2020年は会計年度対応、それ以外の年は暦年対応で出版してきました。今回がシリーズ第8弾になります。このシリーズのなかで株価急騰予測を示した年が2年あります。2013年版と2017年版です。過去10年間の 日経平均株価推移を見ると、株価が大幅上昇した年は2013年と2017年です。この両年は、前年10-12月期に株価暴騰を予測しました。そして、その通りの結果になりました。

 2016年版を出版した際は中国株価暴落のさなかでした。世間は中国経済の崩壊予測一色に染まっていましたが、2016年版TRIレポートでは中国株価と中国経済の底入れ予測を提示しました。実際に中国株価は2月に底入れしました。2017年版は米国大統領選直後に出版しました。世間ではトランプが当選すればドルと米国株価は暴落と言われていましたが、年次版TRIレポートでは本の帯に NYダウ2万ドル、日経平均2万3000円を明記し、実際にその通りの現実が生じたのです。

 宣伝めいて恐縮ですが、TRIレポートは金融市場の変動を極めて正確に予測し続けてきています。日経平均株価の大幅上昇が2013年と2017年に生じた最大の理由は、この2年の企業利益増加率が高かったことです。株価決定の最重要要因が企業収益動向なのです。2020年版では企業収益減少傾向から株価下方圧力が存在することを指摘しました。

●投資パフォーマンス向上の極意

 2020年度版TRIレポートには株式投資運用で失敗しない『最強・常勝五箇条の極意』を記載しています。詳しくは同書をご高覧賜りたく思いますが、今回のような株価暴落局面での損失を回避することが非常に重要になります。同書にも記述していますが、積極的な資金運用での投資パフォーマンスを向上させるために必須の要素は、「適正な売買タイミング選定」と「情報力」です。五箇条の極意とは、基本的に「適正な売買タイミング選定」と「情報力」に関するものなのです。

 会員制レポートでは1月23日執筆号で株価下落予測を提示しました。世の中には無数の情報が氾濫しています。大事なことは、信頼できる情報源を確保することです。優良なパフォーマンスを上げている投資家は、必ず優れた情報源を確保しているものです。

 ただし、優れた情報を確保するだけでは投資の高いパフォーマンスには直結しません。優良な情報を活用する正しい投資手法を体得しておくことが必要不可欠なのです。今回のような暴落局面でも、優れた情報と正しい投資手法を確実に実行していれば、損失を完全に回避することが可能になり、さらに巨大な利益を計上することも不可能ではなくなります。

 後出しじゃんけんで言うのなら意味はありませんが、事前に適正な予測を提示し、その上で適正な投資手法を用いることができれば、これは実戦に十分に役立つことになるのです。

●三つの節目

 NYダウが38%も暴落しました。1ヵ月での38%暴落は歴史的なものです。この1ヵ月間に三つの重要な節目がありました。第一は2月25日の米CDC(疾病対策センター)呼吸器疾患センター・メッソニエ所長による米国でのコロナウイルス感染拡大見通し提示です。この頃、トランプ大統領は温かくなればコロナウイルスは消えると、のんきな発言を繰り返していました。メッソニエ発言を契機にNY株価急落が始動しました。

 第二は、3月9日にトランプ大統領が大規模経済対策策定の方針を示したことです。株式下落を止めることはありませんでしたが、この方針提示によって米金利と為替レートの方向転換が生じたのです。

 第三は、2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策が議会で決定されたことです。これがNYダウ急反発の背景です。株式投資で高いパフォーマンスを上げる鍵のひとつが「適正な売買タイミング選定」ですが、適正な売買タイミング指標を注視していた人は、「売り」と「買い」のベストタイミングを事前に掌握できたと思います。

 日経平均株価はNYダウに連動する傾向を有しています。NY株価の急反発を受けて日経平均株価も急反発をしました。しかし、ここから先は日米のファンダメンタルズの相違にも目を向けることが必要になってきます。

 米国の2兆ドル経済対策決定、FRBのゼロ金利政策決定は極めて迅速かつ大胆なものでした。ところが、これと好対照をなしているのが日本の政策対応です。

●リスクファクターの捕捉

 1990年のバブル崩壊始動から30年の時間が経過しました。日本経済だけが完全に成長から取り残されて、衰退の30年に苦しむことになりました。その最大の要因は政策対応力の欠落です。最大の戦犯は財務省だと言って差し支えありません。バブル崩壊初期の対応を誤り、その後も最悪の政策運営を続けてきました。

 その財務省が安倍内閣の下で日本銀行をも完全支配下に置いてしまいました。安倍内閣はアベノミクスが成功したと主張しますが、客観的なデータがアベノミクスの失敗を証明しています。たしかに企業収益は激増しましたが、これは労働者への分配所得を著しく圧縮した裏返しでしかありません。

 日本経済は消費税増税の影響で2018年10月から不況に移行しています。そこに本年に入ってからのコロナ効果が加わり、激烈な景気後退が発生しています。安倍内閣は3月26日の閣議でようやく景気後退を認めましたが1年以上遅い不況認定です。

 コロナ対策では迅速、簡素、直接の三要件を満たす施策を直ちに実行するべきです。消費税率ゼロ、10万円の給付金一律支給を速やかに実施するべきですが、安倍内閣の対応は”too little, too late”(少なすぎる、遅すぎる)になる可能性が高いと思われます。

 また、安倍内閣がPCR検査を徹底的に妨害してきたために、これから日本で爆発的感染拡大が生じる可能性が高まっています。2021年の五輪を開催できる保証も現時点ではありません。当面は金融市場のリスクファクターをしっかり把握しておかなければなりません。

(2020年3月27日記/次回は4月11日配信予定)


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