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【特集】日経平均2万円割れ、反発狙いでの注意点は?~Bコミさんに緊急インタビュー(上)
株探プレミアム・リポート
登場する銘柄
塩野義製薬<4507>、中外製薬<4519>、プラッツ<7813>、ドウシシャ<7483>、王子ホールディングス<3861>、日本製紙<3863>、日清製粉グループ本社<2002>、J-オイルミルズ<2613>、日清オイリオグループ<2602>、福山通運 <9075>、ハマキョウレックス<9037>、三井倉庫ホールディングス<9302>
株式相場は2月から深刻化したコロナショックの影響をひきずり、3月相場入りしてもなお、投資家のリスク回避姿勢に拍車が掛かる大荒れの状況が続いている。日経平均株価は市場で下値の節目とされる水準を次々と割り込み、ついに2万円を割り込む事態となってしまった。
リーマン・ショックに匹敵するほどの衝撃に、市場には日々凍りつくような悲観ムードが漂うが、こんな時こそ冷静に次の一手を考えたいところでもある。「この損をなんとか取り戻したい」「このままでは終われない」と、一発逆転の戦闘モードに入り反転の時期を狙う投資家も多いだろう。
今回は、個人投資家にも大人気の元ファンドマネージャーで、投資教育も行う「Bコミさん」こと坂本慎太郎さんが登場。今こそ仕込みたい有望銘柄や相場の見通し、メンタルの整え方などを聞いた
日経平均PBR1倍割れで、押し目買い水準感高まる
――株価が毎日のように爆下げし、個人投資家もかなりの痛手を食らっています。心理的にもハンパないダメージとなっていますが、反転のチャンスを狙うとしたら、どんな指標等をサインとすればいいでしょうか?
坂本慎太郎さん(以下、坂本): 下げのメドとしてよく参考にされる日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)1倍の水準、足元では2万700円どころですね。この前後の水準はやはり意識されていたとみられ、一時、株価はここで下げ止まっていました。
その後、急激な原油価格の下落や円高進行がコロナショックに追い打ちを掛けて、その下支えも割り込んでしまった状況になっていますが、頃合いとしてはそろそろ反転を狙って拾いだしてもいい時期だと考えています。
過去の大暴落時の例では、2008年のリーマン・ショック時、そして2011年の東日本大震災では1倍をさらに下回り、0.8倍というところまで突っ込む場面もありました。しかし、この時の日経平均株価構成銘柄の予想EPS(1株当たり純利益)はマイナスだったのに対して、現在は1600円をマークしています。企業にはこれだけ稼ぐ力があるのに、企業の解散価値であるPBR1倍割れの状態がいつまでも続くとは考えにくい、と捉えています。
もう少し先の5月の半ば頃になると2020年3月期決算の結果、及び21年3月期の計画が出揃います。このタイミングでは、この決算内容を反映する形でPBR1倍水準は2万1500円に切り上がっていくと想定しています。それを踏まえて押し目買いもしくは逆張りのプランを立てていくといいでしょう。
――PBR0.8倍まで下押したリーマン・ショックや東日本大震災の時よりは、足元の企業業績の環境は良いということなのですね。
坂本: 足元の予想EPSから見ればそうなります。さらに需給面からの好材料もあります。私は個人投資家の資金余力を確認するのに「MRF(マネー・リザーブ・ファンド)」の残高推移もチェックしています。この残高は現在12兆円にのぼり、現在もなお増加している点にも着目しています。
これは何を意味するかというと、個人は、株式購入から全く手を引こうと考えているのではなく、チャンスあらば押し目買い、または逆張りを狙っている表れと見ています。MRFはその名の通り、株式を購入するために証券口座に資金をリザーブする、つまり確保しておく役割をする投資信託の一種で、以前は銀行預金よりも有利な利回りが得られるのが魅力でした。
■MRFの純資産総額と日経平均株価の推移
注:日経平均株価は終値。MRFのデータは投資信託協会
ところが最近は主力どころの証券会社では、利回りはほぼゼロ。そうなると、株式を買う目的がないのであれば、あえて証券口座のMRFに資金を置いておくメリットはないはずです。
しかし、それでもMRFの残高が増えている、つまり投資家が証券口座から資金を引き上げていないということは、将来、買いのチャンスが来た際には買い出動しようとして待ち構えているからだと考えています。
――人によっては損が膨らみ、心が折れかけている状態で、押し目買いもしくは逆張りするのはハードルが高そうです。ただし、永遠に下がり続ける相場がないと考えれば、数回に分けて買うのもありなのでしょうか。
坂本: どこが底値になるのかは、機関投資家であろうと個人投資家であろうと、誰も正確な時期はわかりません。ここが底値と一気に資金を投入するのは、リスクが高く、避けなくてはなりません。投資でリスクを抑える王道は分散。近いうちに反発局面が来るという相場観に立つ場合でも、購入時期を数回に分けて行う時間分散が欠かせません。
ここで、強調しておきたいのは、過去の経験則からは日経平均株価の底値はPBR1倍程度、最悪でも0.8倍程度で今回も前例に従う可能性はありますが、反発に転じても上値は重いと私は考えています。
その理由の詳細は次回に譲ります。上値は重くなるという見解から、今回、逆張り戦略を取るにしても、一気に損を取り戻そうとは考えないことです。期待通りの反発局面が来ても、損の一部を回収しようという構えで、資金を配分してほしいということです。
本来実力あり&円高メリット銘柄に着目
――株価の上値がしばらく重いという点については、この後詳しく教えていただくとして、まずは押し目買いをする際、どんな銘柄に目を付けたらいいのですか?
坂本: オーソドックスなところでは、指数に連動しやすい大型株が候補となります。いわゆる「βが1」と言われる銘柄ですね。
「βが1」というのは日経平均株価など市場平均が2%上昇したら、同じ2%の上昇率となりやすい銘柄になります。現時点では、自動車や精密機器などのいわゆる景気敏感業種にβが1近辺の銘柄が多く見られます。
例えば、有料会員向けとなりますが、日本経済新聞電子版の「β値高位(低位)ランキング」などが参考になりますね。個人が提供するサイトになりますが、ネット検索して調べる方法もあります。
大型株で比較的、安定的なものを狙いたいという人は、内需系、特に薬品株などが面白いでしょう。最近は日本企業が発売するブロックバスターと呼ばれる高シェア、高売上高の医薬品が海外でも健闘しており、今後も外国人の注目度は増していくと見ています。具体的には塩野義製薬<4507>、中外製薬<4519>などが候補になるでしょう。
とりわけ、売り上げ全体で営業利益が占める割合が高い企業が好ましいと考えていますが、そうした観点からは塩野義を有望視しています。
■塩野義製薬 <4507>の月足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
――塩野義は最終利益の伸びも堅調で、足元のPERは12倍台で低水準、配当利回りは約1.8%と魅力的ですね。
坂本: 一方の中外は、同社が創薬し、18年に発売を開始した血友病治療薬の「ヘムライブラ」の好調に期待しています。これまでの血友病向けの治療薬に比べて投薬の煩わしさが少ない点がこの薬のメリットで、こちらも国内のみならず、海外でも好調であることに注目しているところです。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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登場する銘柄
塩野義製薬<4507>、中外製薬<4519>、プラッツ<7813>、ドウシシャ<7483>、王子ホールディングス<3861>、日本製紙<3863>、日清製粉グループ本社<2002>、J-オイルミルズ<2613>、日清オイリオグループ<2602>、福山通運 <9075>、ハマキョウレックス<9037>、三井倉庫ホールディングス<9302>
文/福島由恵(ライター)、構成/真弓重孝(株探編集部)
坂本慎太郎さんのプロフィール:
大学卒業後、メーカー勤務を経て、国内証券会社のディーラーとして活躍。その後は大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネージャーと株式のストラテジストの実績を積んだ後、独立。現在はこころトレード研究所の所長として主に個人投資家向けに投資教育を行い、情報発信も続けている。短期から中長期までの幅広い時間軸における投資経験が豊富なのが強み。個人でも日本株を中心に為替、商品先物、不動産投資を手掛けており、「Bコミ」というハンドルネームで活動中。投資情報番組のラジオNIKKEIや日経CNBCなどにも出演、著書は『脱イナゴでしっかり儲ける20銘柄バスケット投資術』(東洋経済新報社)、『伝説のトレーダーに50万円を1億円にする方法をこっそり教わってきました。』(SBクリエイティブ)など
大学卒業後、メーカー勤務を経て、国内証券会社のディーラーとして活躍。その後は大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネージャーと株式のストラテジストの実績を積んだ後、独立。現在はこころトレード研究所の所長として主に個人投資家向けに投資教育を行い、情報発信も続けている。短期から中長期までの幅広い時間軸における投資経験が豊富なのが強み。個人でも日本株を中心に為替、商品先物、不動産投資を手掛けており、「Bコミ」というハンドルネームで活動中。投資情報番組のラジオNIKKEIや日経CNBCなどにも出演、著書は『脱イナゴでしっかり儲ける20銘柄バスケット投資術』(東洋経済新報社)、『伝説のトレーダーに50万円を1億円にする方法をこっそり教わってきました。』(SBクリエイティブ)など
株式相場は2月から深刻化したコロナショックの影響をひきずり、3月相場入りしてもなお、投資家のリスク回避姿勢に拍車が掛かる大荒れの状況が続いている。日経平均株価は市場で下値の節目とされる水準を次々と割り込み、ついに2万円を割り込む事態となってしまった。
リーマン・ショックに匹敵するほどの衝撃に、市場には日々凍りつくような悲観ムードが漂うが、こんな時こそ冷静に次の一手を考えたいところでもある。「この損をなんとか取り戻したい」「このままでは終われない」と、一発逆転の戦闘モードに入り反転の時期を狙う投資家も多いだろう。
今回は、個人投資家にも大人気の元ファンドマネージャーで、投資教育も行う「Bコミさん」こと坂本慎太郎さんが登場。今こそ仕込みたい有望銘柄や相場の見通し、メンタルの整え方などを聞いた
日経平均PBR1倍割れで、押し目買い水準感高まる
――株価が毎日のように爆下げし、個人投資家もかなりの痛手を食らっています。心理的にもハンパないダメージとなっていますが、反転のチャンスを狙うとしたら、どんな指標等をサインとすればいいでしょうか?
坂本慎太郎さん(以下、坂本): 下げのメドとしてよく参考にされる日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)1倍の水準、足元では2万700円どころですね。この前後の水準はやはり意識されていたとみられ、一時、株価はここで下げ止まっていました。
その後、急激な原油価格の下落や円高進行がコロナショックに追い打ちを掛けて、その下支えも割り込んでしまった状況になっていますが、頃合いとしてはそろそろ反転を狙って拾いだしてもいい時期だと考えています。
過去の大暴落時の例では、2008年のリーマン・ショック時、そして2011年の東日本大震災では1倍をさらに下回り、0.8倍というところまで突っ込む場面もありました。しかし、この時の日経平均株価構成銘柄の予想EPS(1株当たり純利益)はマイナスだったのに対して、現在は1600円をマークしています。企業にはこれだけ稼ぐ力があるのに、企業の解散価値であるPBR1倍割れの状態がいつまでも続くとは考えにくい、と捉えています。
もう少し先の5月の半ば頃になると2020年3月期決算の結果、及び21年3月期の計画が出揃います。このタイミングでは、この決算内容を反映する形でPBR1倍水準は2万1500円に切り上がっていくと想定しています。それを踏まえて押し目買いもしくは逆張りのプランを立てていくといいでしょう。
――PBR0.8倍まで下押したリーマン・ショックや東日本大震災の時よりは、足元の企業業績の環境は良いということなのですね。
坂本: 足元の予想EPSから見ればそうなります。さらに需給面からの好材料もあります。私は個人投資家の資金余力を確認するのに「MRF(マネー・リザーブ・ファンド)」の残高推移もチェックしています。この残高は現在12兆円にのぼり、現在もなお増加している点にも着目しています。
これは何を意味するかというと、個人は、株式購入から全く手を引こうと考えているのではなく、チャンスあらば押し目買い、または逆張りを狙っている表れと見ています。MRFはその名の通り、株式を購入するために証券口座に資金をリザーブする、つまり確保しておく役割をする投資信託の一種で、以前は銀行預金よりも有利な利回りが得られるのが魅力でした。
■MRFの純資産総額と日経平均株価の推移
注:日経平均株価は終値。MRFのデータは投資信託協会
ところが最近は主力どころの証券会社では、利回りはほぼゼロ。そうなると、株式を買う目的がないのであれば、あえて証券口座のMRFに資金を置いておくメリットはないはずです。
しかし、それでもMRFの残高が増えている、つまり投資家が証券口座から資金を引き上げていないということは、将来、買いのチャンスが来た際には買い出動しようとして待ち構えているからだと考えています。
――人によっては損が膨らみ、心が折れかけている状態で、押し目買いもしくは逆張りするのはハードルが高そうです。ただし、永遠に下がり続ける相場がないと考えれば、数回に分けて買うのもありなのでしょうか。
坂本: どこが底値になるのかは、機関投資家であろうと個人投資家であろうと、誰も正確な時期はわかりません。ここが底値と一気に資金を投入するのは、リスクが高く、避けなくてはなりません。投資でリスクを抑える王道は分散。近いうちに反発局面が来るという相場観に立つ場合でも、購入時期を数回に分けて行う時間分散が欠かせません。
ここで、強調しておきたいのは、過去の経験則からは日経平均株価の底値はPBR1倍程度、最悪でも0.8倍程度で今回も前例に従う可能性はありますが、反発に転じても上値は重いと私は考えています。
その理由の詳細は次回に譲ります。上値は重くなるという見解から、今回、逆張り戦略を取るにしても、一気に損を取り戻そうとは考えないことです。期待通りの反発局面が来ても、損の一部を回収しようという構えで、資金を配分してほしいということです。
本来実力あり&円高メリット銘柄に着目
――株価の上値がしばらく重いという点については、この後詳しく教えていただくとして、まずは押し目買いをする際、どんな銘柄に目を付けたらいいのですか?
坂本: オーソドックスなところでは、指数に連動しやすい大型株が候補となります。いわゆる「βが1」と言われる銘柄ですね。
「βが1」というのは日経平均株価など市場平均が2%上昇したら、同じ2%の上昇率となりやすい銘柄になります。現時点では、自動車や精密機器などのいわゆる景気敏感業種にβが1近辺の銘柄が多く見られます。
例えば、有料会員向けとなりますが、日本経済新聞電子版の「β値高位(低位)ランキング」などが参考になりますね。個人が提供するサイトになりますが、ネット検索して調べる方法もあります。
大型株で比較的、安定的なものを狙いたいという人は、内需系、特に薬品株などが面白いでしょう。最近は日本企業が発売するブロックバスターと呼ばれる高シェア、高売上高の医薬品が海外でも健闘しており、今後も外国人の注目度は増していくと見ています。具体的には塩野義製薬<4507>、中外製薬<4519>などが候補になるでしょう。
とりわけ、売り上げ全体で営業利益が占める割合が高い企業が好ましいと考えていますが、そうした観点からは塩野義を有望視しています。
■塩野義製薬 <4507>の月足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
――塩野義は最終利益の伸びも堅調で、足元のPERは12倍台で低水準、配当利回りは約1.8%と魅力的ですね。
坂本: 一方の中外は、同社が創薬し、18年に発売を開始した血友病治療薬の「ヘムライブラ」の好調に期待しています。これまでの血友病向けの治療薬に比べて投薬の煩わしさが少ない点がこの薬のメリットで、こちらも国内のみならず、海外でも好調であることに注目しているところです。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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