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【特集】日経平均1000円安の衝撃、新型コロナ禍に揺れる日本株市場の行方 <株探トップ特集>

15日の東京株式市場では、新型肺炎の感染拡大を背景とした世界同時株安の波にのまれ、日経平均が一時1000円を超える急落を余儀なくされた。果たしてマーケットはどこに向かうのか。

―肺炎の感染拡大を警戒し世界同時株安に、東京株式市場は当面上値の重い展開か―

 25日の東京株式市場で 日経平均株価は一時、前週末比1051円安と急落した。 新型肺炎の拡大が懸念され24日は世界同時株安となり、 NYダウは前週末に比べ1031ドル安と過去3番目の下げ幅を記録している。中国で発生した新型肺炎は、日本を含むアジア、それにイタリアなど欧州に広がり世界的な感染拡大が警戒されている。足もとの世界株安の状況をどう見れば良いのか、そして東京株式市場の行方はどうなるのか。

●世界同時株安で東京市場も急落、イタリアなど欧州にも警戒感波及

 25日の東京株式市場で日経平均株価は、3連休前の21日終値に比べ781円安の2万2605円と19年10月21日以来、約4ヵ月ぶりの安値水準で取引を終えた。一時、下落幅は1000円を超え2万2300円台に下落する場面もあった。この日の日経平均株価の急落は、東京市場が休場だった24日に発生した世界同時株安がもたらしたものだ。24日には、韓国などでの新型コロナウイルスによる肺炎患者の急増を受けアジア株式市場が軒並み安となったほか、イタリアやイランなどでも新型肺炎の感染拡大が表面化。イタリアFTSE・MIB指数が5%安、ドイツDAX指数も4%安と急落した。

 この流れを受けた前日のNYダウは前週末比1031ドル安と大幅安を演じた。新型肺炎の発生地である中国から距離が離れていることもあり、新型コロナウイルスへの警戒感が薄く株価が最高値圏にあった欧米株式市場は、「イタリアなどでの感染拡大を背景に一気に警戒感を強めた」(市場関係者)格好だ。

●オリンピックの東京開催見送りなら2万円割れの見方も

 米国株式市場の急落に関しては、IHSマークイットが発表した2月の米総合購買担当者景気指数(PMI)が49.6と50を下回り、6年4ヵ月ぶりの水準に低下したことも警戒された。東海東京調査センターの庵原浩樹シニアストラテジストは「新型コロナウイルスの影響を受けた、経済指標の悪化はこれから表面化する。特に、PMIの発表を受け米国のサービス業に警戒感が強まったことが嫌気された」という。

 この流れのなか、25日の日経平均株価は急落した。キャピタル・パートナーズ証券チーフマーケットアナリストの倉持宏朗氏は「この日の東京市場では、海外の短期筋の売りが膨らんだ。気になるのは、米国で流行しているインフルエンザの中に新型コロナウイルスの患者が紛れ込んでいないかだ。もし、新型コロナの患者が出た場合、NYダウは一段安もあり得る」と警戒する。

 この新型コロナウイルスの感染拡大は、株式市場の先行きに対する警戒感を強めさせている。「新型肺炎が拡大しパンデミック(爆発的な流行)となった場合、ヒト・モノ・カネの流れを止めてしまう」(庵原氏)ため、株式市場には疑心暗鬼が生まれ積極的な買いを入れることは見送られている。特に、日本は中国に近く感染拡大の懸念が強いうえに7月の東京オリンピックも近づいており、他国に比べても状況は緊迫化している。「もし東京での五輪開催が難しくなった場合、日経平均株価の2万円割れは覚悟しなければならないかもしれない」(市場関係者)との声も出ている。

●米国は一服後、最高値更新も、東京市場は中国景気の回復待ちか

 とはいえ、市場には足もとの株価急落で調整は大分進んだとの見方も少なくない。いちよしアセットマネジメントの秋野充成上席執行役員は「新型コロナウイルスの感染拡大は、4月頃をピークに夏場が近づくとともに収束に向かうとの見方も出ている。NYダウの急落は、米国の利下げや減税など財政刺激策を求める、政策催促の意味もあるだろう。NYダウは早ければ3月中に再度、最高値を奪回してもおかしくないと思う」という。

 前出の庵原氏も「米国の半導体産業は回復しており、個人消費などの内需は底堅い。いずれ新型肺炎は収束するとみれば、米国の優良株の急落場面は格好の買い場を提供している。NYダウも先行き再度、最高値更新に向かうことは十分見込める」と指摘している。

 ただ、NYダウと比べて日経平均株価の先行きには慎重意見が目立つ。前出の秋野氏は「米国のS&P500とTOPIX(東証株価指数)を指数化した価格差は過去最大水準に拡大しており、東京市場と米国市場の連動性が弱まっている。東京市場は、シクリカル(景気敏感型)マーケットの色彩が濃く、業績回復が見えてこないと上昇は期待しにくい。米国株式市場は堅調な値動きが期待できるため、日経平均株価は2万2000円前後が下値となるが、中国市場が回復する夏から秋口頃まで東京市場の上値は重く、米国との株価格差は一段と広がるだろう」と指摘する。特に「日本円は安全通貨の座をすでに降りている。新型コロナウイルスの感染が拡大する場面では、 円安・日経平均株価下落の日本売りが起こってもおかしくない」と同氏は警戒している。

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