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【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「喜べぬ“円安”」

株式評論家 富田隆弥

新型肺炎の影響で苦しい展開が続く日本株だが、一方で米国株は堅調が続いており、NYダウ平均は3万ドル、ナスダック総合は1万ポイントという大台目標に迫っている。米国は新型肺炎の影響を受けにくく、企業業績も好調で世界の投資マネーの流入が続いている。

◆ただ、そんな快晴続きの米国市場にも少し雲が張り出してきた気がする。例えば、アップルが新型肺炎の影響で1-3月期の売上高予想が達成できないと発表した。中国でサプライチェーン(供給網)が止まり、iPhoneの供給が制限されるからだが、米国においても新型肺炎の影響は無視できず、アップル同様に業績を修正する企業が出てきてもおかしくはない。

◆20日(夜間含む)の為替市場で「円安」が大きく進んだ。ドル・円は112円台へ、ユーロ・円は121円台へ、どちらも一気に2円もの円安だ。この急激な円安には日本当局による「介入」思惑が囁かれている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの機関投資家が「米国株買い、ドル買い」に動いたとの声も聞かれる。

◆日本は10-12月GDPのマイナス成長など景気後退が鮮明だが、それでも「日本政府は何も策を打たない」との批判が出ていた。それだけに為替の介入思惑は否定できない。

◆ただ、この「円安」で日本の企業や株式市場が救われるかは疑問だ。ハイテクなど輸出産業は業績面で多少支援されるだろうが、中国での生産停止や訪日外国人の減少、それに消費増税の影響をカバーできるものではない。そして、ドル建てで見た場合の日本株では円安は株価下落につながるので外国人投資家は困惑しよう。

◆そして「ドル」は対円、対ユーロともに上昇しており、米国の輸出産業には痛手となる。それを無視してNYダウ、ナスダックは快進撃を続けることができるだろうか。これらの背景を踏まえて米国株に少し雲が張り出してきたと感じている。NYダウ、ナスダックともチャートは強い上昇基調を描いており、大台の目標達成も時間の問題と言えるが、チャートの過熱信号も無視できず、日足の下値抵抗線や25日移動平均線など下値の注意ポイントを注視しておきたい。

日経平均株価は2万3000円台で乱高下しているが、日足の好転にはダブルトップの2万4115円(1月17日高値)突破が必要で、それを果たすまでは調整基調にあることを頭に入れておきたい。騰落レシオ74%が示す如く個別株の多くが厳しい状況にあり、いまはまだ「様子見も一策」と思われる。

(2月20日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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