【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 罫線の“罫”に従うとき
株式評論家 植木靖男
「罫線の“罫”に従うとき」
●円安は日本売りか、あるいは神風か?
東京市場は年初から手荒な洗礼を受けているようだ。大波、小波の繰り返しから、その上昇、下降の累積株価は日経平均ベースでみて、3ヵ月ほどで大雑把に6000円ほどになる。
つまり、上昇、下降を上手に乗り切れば+6000円、逆に後手後手に回れば-6000円となる。日本株は動きが乏しく面白みがないと嘆く投資家がいるが、とんでもない誤解だ。こうした荒い値動きとなった背景は、いうまでもなく2つの想定外の懸念材料にある。
ひとつは、 新型肺炎の拡大だ。発生はお隣の中国とはいえ、わが国にも感染者の増加に加えて、サプライチェーンの分断、中国への輸出の減少、インバウンド訪日客の減少といった影響がある。折しも消費増税の影響も重なり、今年1-3月期のGDPは10-12月期と同じマイナス成長が避けられない情勢にある。20年度ベースでも、新型肺炎の拡大が長引けばマイナス成長もあり得るという。
これに加え、もう一つの想定外は円安だ。わずか2日間で2円以上の急激な円安は異常といえる。ドル高というより円安である。その理由は、これもふたつ。ひとつは需給だ。日本の投資家は個人、年金、銀行などが列をなして米国債券、株式に走っていること、わが国企業による海外企業に対する大型買収などが指摘されている。もう一つは、純粋な日本売りだ。景気減速を売っているのだ。
もし、円安の真因が後者だとすれば、新しい円安時代の到来かもしれない。だが、ここ30年にわたるデフレは円の過大評価、つまり円高によるとすれば、ひょっとして日本経済への追い風、つまり神風となるやもしれない。注目したい。
●株価が材料を振り回す
さて当面の株価は、ここ1ヵ月ほどの値動きからして米国株が堅調である限り、下値は2万3000円どころであると証明された。もっとも、上値も新型肺炎が終息しない限り、2万4000円どころが妥当であろう。すなわち、レンジ相場が想定されよう。
では、物色はどうみれば良いのか。今は株価が材料を振り回している。上昇すれば好材料がまぶたに焼きつくし、下がれば目の前に悪材料が身構える。人間の性(さが)としては致し方ないのであるが、こうしたときは罫線(チャート)の“罫”が指示するところに素直に従うのが常道である。
とはいうものの、罫線に頼るだけではチャブつくことも多い。罫線は日足、週足、月足と多面的に活用すべきであろう。
ところで、今回はこうした視点から次の3銘柄に注目したい。優良株はとかく理屈で考えてしまうだけに、省いた方が無難だ。
まずはテラスカイ <3915> だ。国内パブリッククラウドサービス市場は、2023年には1兆6940億円になるとIDCジャパンは発表している。この20年2月期は大幅増収増益予想だ。
東京都競馬 <9672> 。平成バブル時の躍動感が忘れられない。
最後は一発向きに、廣済堂 <7868> に注目したい。典型的な仕手株の雰囲気を持っている。
ただし、以上の銘柄は逃げるときは間髪を入れずまっしぐらに抜け出すことも肝要だ。
2020年2月21日 記
株探ニュース