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【特集】マンションもアンチエイジング、長寿命化促進でキラめく好望株セレクト <株探トップ特集>

国交省の後押しでマンションの長寿命化に尽力する動きが広がりつつある。追い風を受ける関連企業に商機が訪れており、株式市場でも脚光を浴びる可能性がでてきた。

―忍び寄る建物老朽化と管理不全リスク、国交省の再生支援で取り組みが活発化へ―

 国土交通省は5日、老朽化したマンションの再生を補助する「マンションストック長寿命化等モデル事業」を創設すると発表した。背景には築30年以上の高経年といわれるマンションが増加し、建物の老朽化や管理組合の担い手不足などが喫緊の課題に浮上していることが挙げられ、同省は再生モデルとなる事業を支援することで先導的な長寿命化手法を全国に普及させたい考え。中長期的な資産価値の維持・向上に寄与する物件のアンチエイジング需要は今後更に高まることが予想され、関連企業に追い風となりそうだ。

●高経年マンション増大へ

 「マンションストック長寿命化等モデル事業」は、再生計画を策定する前段階の調査・検討に対して支援する「計画支援型」と、工事実施を支援する「工事支援型」の2つで構成され、4月中に募集を開始する予定となっている。計画支援型は区分所有が10人以上、かつ耐用年数の2分の1を経過しているマンションが対象で、補助は定額で年500万円。工事支援型は計画支援型の要件に加え、25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定し、計画と積立額が概ね一致していることが条件で、事業費の3分の1を補助する。

 国交省の試算によれば、18年末時点で197万8000戸だった築30年以上の分譲マンション数は23年末に275万3000戸、28年末には366万8000戸に拡大する見込み。一般的に築30年を超えると外壁や給排水管に傷みが目立ち始め、安全性の問題などから生活に支障をきたす恐れがある。老朽化が進むと建て替えや大規模修繕が必要となるが、居住者らの権利を定める区分所有法や住人の高齢化の影響で合意形成が難しく、建て替えに至ったのは準備中も含めて19年4月時点でわずか278件にとどまっているのが実情。高齢化の進展や空き家の増加で修繕金の徴収が滞るなど、修繕工事が計画的に実行できない物件が増えつつあるなか、居住者や管理組合の経済的・心理的負担の軽減につながる大規模修繕の長周期化に向けた取り組みが求められている。

●長谷工、日本ハウズなどに商機

 国交省の後押しもあってマンションの長寿命化に尽力する動きが広がるとみられるが、既に高松コンストラクショングループ <1762> や長谷工コーポレーション <1808> 、野村不動産ホールディングス <3231> 、三井不動産 <8801> などサービスを提供している企業は多い。

 また、マンションの資産価値の維持・向上を目的とした事業を手掛ける管理会社にもビジネスチャンスがありそうだ。管理会社は各居住者からの管理費や修繕積立金の収納を代行するほか、月次報告書や年次決算報告書の作成、設備の管理、長期修繕計画の作成などを行っており、大手の一角を占めるのが日本ハウズイング <4781> [東証2]だ。同社は管理ストックの増加に注力しており、管理受託実績は19年9月末時点で45万6108戸。12日に発表した20年3月期第3四半期累計(19年4-12月)の連結決算は、管理委託料の値上げ効果などもあって、営業利益は前年同期比37.4%増の46億1700万円となった。

 このほか、東急不動産ホールディングス <3289> 傘下の東急コミュニティーのマンション管理戸数は19年12月末時点で84万3701戸(うち総合管理は52万5869戸、施設管理は31万7832戸)と業界トップクラスを誇り、長谷工グループの管理戸数は19年12月末時点で56万4079戸と順調に拡大。賃貸管理サービスを提供するグッドライフカンパニー <2970> [JQ]や、マンション管理事業を手掛けるセントラル総合開発 <3238> [東証2]などにも注目したい。

●再生販売企業にも注目

 マンションの長寿命化が進むと、それに伴って中古流通市場が活発化することが見込まれる。国内は依然として新築志向が根強いものの、内外装をリフォームすれば新築と変わらない住み心地が得られることから、新築を買うより安く済む中古の利点に関心を寄せる人が増えてきている。米国では住宅流通市場の80%以上を中古住宅(戸建てを含む)が占めているのに対し、日本は15%程度であり市場が一段と拡大する余地がある。

 インテリックス <8940> は中古マンションを一戸単位で取得し、最適なリノベーションを施したあと、アフターサービス保証をつけて販売するリノヴェックスマンション事業が主力。イーグランド <3294> は首都圏を地盤に戸建てやマンションの中古住宅再生事業を展開しており、利益率の確保に重点を置いて物件の仕入れを厳選する方針を掲げている。

 プロパスト <3236> [JQ]はマンションの分譲開発や賃貸開発とともに、中古物件をバリューアップして売却する事業を展開し、ラ・アトレ <8885> [JQG]も再生不動産販売が主要事業のひとつ。スター・マイカ・ホールディングス <2975> 子会社とツクルバ <2978> [東証M]は昨年12月、リノベーションマンション販売事業で業務提携した。

 これ以外では、中古不動産の総合プラットフォームを運営するGA technologies <3491> [東証M]のビジネス機会も増えそうだ。

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