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【特集】「5G元年」に急浮上するMR関連株、ホロレンズ2が開く空間革命 <株探トップ特集>

次世代通信規格「5G」の商用サービス開始と合わせて、5Gと親和性の高いサービスとして注目されているのがVRやAR、そしてMRだ。同関連株として要注目となる銘柄を検証した。

―3Dオブジェクトに「触れ」て「共有」することも可能、医療をはじめ多様な活用見込む―

 2020年は、次世代通信規格「5G」の商用サービスが本格的に始まる。政府は「デジタル元年」と位置づけており、「5G元年」ともなる。政府は巨大IT企業による市場寡占を規制する新法を1月召集の通常国会に提出するほか、5Gの整備も新法で加速させる計画だ。そんななか5Gと親和性が高いサービスとして注目されているのがVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、そしてMR(複合現実)だ。

●5Gのサービス本格でARやVR、そしてMRは新成長局面に突入

 19年の株式相場では、5G関連株を物色する流れのなかで東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> 、アンリツ <6754> 、レーザーテック <6920> など半導体や電子部品株を中心とする上昇が強まったが、この流れは20年も続くことが見込まれる。しかし、5Gの商用サービスが本格化することより、物色対象もハードからソフト・サービスといった形でシフトしてくる可能性が高そうだ。

 5Gの実効速度は4Gの約100倍となる10Gbpsに達する「超高速」であるほか、1平方キロメートルあたり100万台という大量の端末と接続できる「多数同時接続」と、従来の約10分の1となる1ミリ秒(0.001秒)程度の「超低遅延」という3つの特徴をあわせて実現する。これにより、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の基盤となることが期待されている。

 その上で、5Gと親和性が高いサービスとして注目されるのが、VR、ARやMRだ。VRはヘッドマウントディスプレイ(HMD)やVRゴーグルといったデバイスを装着してコンピューター上で作成された仮想空間・映像空間の中に、実際にいるかのような没入感のある体験ができる技術としてゲームなどで普及している。ARは現実世界に、コンピュータグラフィックス(CG)などによって現実には無い新たな情報を付与し、現実世界を拡張させることが特徴であり、「ポケモンGO」のほか、「Googleマップ AR案内機能」や視聴者がARでコスメを試せる「AR Beauty Try-On」、それにライブ演出、観光、広告などといった形で幅広く活用されている。

●MRは現実世界と仮想世界をリンク、手術訓練などに応用が可能

 そしてMRは、実際に見えている現実世界の上に仮想世界をリンクさせるものだ。3D表示が可能なホログラフィックコンピューターと専用のHMDを組み合わせて、現実の空間のなかに現れたホログラムの3D映像を見て、実際の手や体の動きで操作できる技術である。例えば、ポケモンGOのようなゲームなら、3Dキャラクターに近づいたり、さまざまな角度から眺めたり触れたりするようなこともできる。

 米マイクロソフトは昨年11月、米国や日本でウエアラブル端末「ホロレンズ2」の出荷を始めており、現実世界に3次元の映像や文字を重ねて見られるゴーグル型で、機械の修理や医療現場の研修といった用途を見込んでいる。「ホロレンズ2」の価格は3500ドル(日本での参考価格は約38万円)とやや高額ではあるが、工場の設備移設のシミュレーションや手術の訓練といった用途であれば、費用対効果は高いとみられている。トヨタ自動車 <7203> では、販売店のサービスエンジニア向けに試験導入しているほか、三浦工業 <6005> は、21年をメドにホロレンズを使った仮想現実技術をボイラーなどのメンテナンス現場に導入する計画である。MRにおいてデータ量の増大やリアルタイム性など既存の通信インフラでは解決できない課題などが、5Gの普及によるネットワークの進化により解決され、新たなニーズも見えてくることになる。エンターテインメント分野のみならず、教育や医療など幅広い分野での活用が見込まれることになるだろう。

●「ホロレンズ2」関連の大塚商会やHENNGE、グレイスなど

 「ホロレンズ2」の認定リセラー(再販する事業者)では、情報サービス大手の大塚商会 <4768> とマイクロソフトのプロダクトを中心とした独立系のシステムインテグレーターである日本ビジネスシステムズ(東京・港区)が担当している。日本ビジネスシステムズのパートナー企業として、企業向けクラウドセキュリティーサービス「HENNGE One」を提供しているHENNGE <4475> [東証M]のほか、クラウドサービスのインターネットイニシアティブ <3774> 、トレンドマイクロ <4704> はセキュリティー対策を実現するソリューションの提供を行っている。また、ホロレンズのMR導入開発支援の認定パートナーであるネクストスケープは、豆蔵ホールディングス <3756> のグループ会社である。

 大東建託 <1878> は、全国の建築事業部にホロレンズを配備し、3D建物を用いたプレゼンテーションを行う営業支援ツールとしての運用を展開しているほか、三井住友建設 <1821> は、トンネル内に、補修履歴や調査・点検記録を3D表示させ、現状との比較ができるトンネル・メンテナンス・ナビゲーションシステム「MOLE-FMR(モール-Field Mixed Reality)」を開発している。メディア関連|マニュアルコンサルティングのグレイステクノロジー <6541> は、MRを使用し音声とともにユーザーを誘導する完全誘導型AIマニュアルである「GRACE VISION」を開発している。

●遠隔医療に現実味、イメージワンやオプティム、JMDCに注目

 また、ホロレンズ2では、「解像度」と「視野角」がそれぞれ2倍に改善され、また「10本の指」の認識以外に、3Dオブジェクトそのものに「触れ」たり、ボタンのように手で「押す」といったこともできる。更に、同一空間にいる複数台のホロレンズで、設置した3Dオブジェクトを「共有」することができるため、現場の医療従事者が、治療を監督する医師に情報を提供するといった遠隔治療が進歩することだろう。医療従事者向けの学習ツールのほか、リハビリやセラピー目的での利用、遠隔地にいる専門医が執刀医と視界を共有しながら指示を出せるといったことが可能となる。

  遠隔医療としては、株価の割高感はあるが、医療従事者専門サイト「m3.com」を展開するエムスリー <2413> のほか、医療画像システムのヘルスケアソリューションを展開するイメージ ワン <2667> [JQ]、エムスリーとIoTプラットフォームサービスを展開するオプティム <3694> 、ヘルスビッグデータ事業や遠隔医療事業を展開するJMDC <4483> [東証M]などが、関連銘柄の中核的な位置づけになりそうである。

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