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【通貨】為替週間見通し:ドル・円は伸び悩みか、米経済指標はドル買い材料にならない可能性

米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより

【先々週・先週の概況】
■中東情勢の緊張緩和で円売り継続

先々週・先週(2019年12月30日-2020年1月10日)のドル・円は下げ渋り。米国防総省は1月3日、トランプ大統領の指示でイラン革命防衛隊の司令官への攻撃を実施し、殺害したことを明らかにしたことから、中東地域における地政学的リスクは急激に高まり、リスク回避的なドル売り・円買いが活発となった。イラン側が報復措置として駐イラク米軍基地をミサイル攻撃したことから、リスク回避的な円買いはさらに拡大し、ドル・円は一時107円65銭まで下落した。

しかしながら、イランのザリフ外相の「事態激化や戦争を求めていない」と発言したことや、トランプ米大統領が8日に行った国民に向けた演説で、「イランとの戦争を求めていない」との見方を伝えたことから、中東情勢の緊張状態はある程度緩和された。米国株式市場はトランプ大統領の発言を好感し、反発。外為市場では株高を意識してリスク選好的なドル買い・円売りが活発となった。

10日のニューヨーク市場でドル・円は、主に109円台半ばで推移した。この日発表された12月米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比+14.5万人にとどまり、雇用者数の増加幅は市場予想を下回った。平均時給の伸び率も市場予想を下回ったことから、米国債利回りはやや低下。ドル・円は一時109円69銭まで買われたが、米長期金利の低下や株安を意識して上げ渋り、109円55銭で10日の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:107円65銭-109円69銭。

【今週の見通し】
■ドル・円は伸び悩みか、米経済指標はドル買い材料にならない可能性

今週のドル・円は伸び悩む展開が予想される。中東情勢の緊張状態はある程度緩和されており、リスク回避的な取引は縮小しつつある。ただ、今週発表される12月消費者物価指数など米国のインフレ関連の経済指標が、現行の米金融政策に大きな影響を与える可能性は低いとみられる。米国金利の先高観が再浮上するとの見方は少ないことから、インフレ関連の経済指標が市場予想と一致してもドルの上昇は小幅にとどまりそうだ。

中国の劉鶴副首相は1月13日からワシントンを訪れる予定で、米国との通商協議における第1段階の合意署名への期待が広がっているが、米中通商協議における最終的な合意形成は2021年以降になるとの見方も出ている。そのため、第1段階の合意署名を受けてリスク選好的なドル買い・円売りが大きく広がる可能性は低いとみられる。ドル・円は心理的節目の110円に接近しているが、現時点でこの水準を明確に突破するだけのドル買い材料は揃っていないとの見方が多い。14日に発表される12月の米消費者物価コア指数(CPI)は前年比+2.3%でインフレ率は11月実績と同水準と予想されており、ドルの押し上げ要因にはなりにくいだろう。

市場参加者の間では「米連邦準備制度理事会(FRB)は2020年末まで現行の政策金利を維持する」との見方が広がっており、早期の追加利下げは想定しづらい。しかしながら、インフレ、雇用関連の経済指標が市場予想を大幅に上回る状況にならない限り、利上げも見込めない状況が続くと予想される。

【米・12月消費者物価コア指数(CPI)】(14日発表予定)
14日発表の12月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+2.3%と、11月実績の+2.3%と同程度のインフレ率となる見通し。インフレ鈍化の懸念はないものの、市場予想と一致しても利上げ観測につながらないとみられる。

【米・12月小売売上高】(16日発表予定)
16日発表の12月小売売上高は、前月比+0.3%で伸び率は11月実績を上回る見通し。ブラックフライデーの景況感が反映され、市場予想を上回る伸びを記録した場合、個人消費回復への期待が広がり、ドル買い材料になり得る。

予想レンジ:108円50銭-110円50銭

《FA》

 提供:フィスコ

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