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【特集】安値もみ合いの金、米中協議の進展巡りせめぎ合う強弱感 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 金の現物相場は11月、米中の通商協議の進展期待を受けて一段安となり、8月5日以来の安値1445.80ドルをつけた。ただ、第1段階の署名が来年にずれ込むとの見方や、長期的な合意に対する懸念が下支え要因となり、その後は安値圏でのもみ合いとなった。

 中国が第1段階の協議で関税の一部撤廃を要求、米国もそれに合わせて要求を引き上げており、景気見通しが大きく改善した。ただ、3日にトランプ大統領がロンドンで記者団の質問に対し「中国との貿易合意に期限はなく、来年の米大統領選後でも良い」と述べたことで金は一時1480ドル台に急騰、米株は急落した。米中とも景気の先行き不透明感は強い。

 中国が11月24日に発表した指針では、知的財産権の侵害に対する罰則を強化するとしており、協議が進んでいることが伺える。ただ、関税撤廃に関する米国の当局者らのコメントは少なく、段階的な撤廃をどこまで受け入れるかが焦点である。また、米国が15日に予定している1560億ドル分の中国製品に対する追加関税に関して、合意できなければ発動するとの発言もあり、協議の行方を確認したい。

 一方、米国で香港人権法が成立し、通商協議に対する影響が懸念された。中国は報復措置として米軍機・艦艇の香港立ち寄り禁止を発表しているが、協議への影響は限られるとみられる。しかし、香港の区議会議員選挙で民主派候補が圧勝し、民意が示されるなか、デモ隊と警官隊が再び衝突しており、中国が介入すると金価格の先行き懸念が強まる可能性がある。

●米大統領の発言で貿易摩擦に対する懸念が強まるか

 トランプ米大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミニウムに関税を課すと発表した。通貨切り下げによって米国の農業部門に悪影響を与えていると指摘されているが、意図的な通貨切り下げはないとの見方もあり、両国は米国と協議するとしている。
 米国の農産物購入については、米中の通商協議の第1段階に盛り込まれており、米大統領が来年の大統領選に向けて農家の票を集めようとしている。これが新たな貿易摩擦に発展すると、金の強材料となる可能性が出てくる。

 英国で12日に総選挙を控えていることも当面の焦点である。17年の総選挙で保守党の過半数割れを予測したユーガブの調査によると、今回の総選挙で保守党が過半数の議席を獲得する見通しとなった。ジョンソン英首相の保守党が過半数を獲得すると、欧州連合(EU)と合意した離脱協定案を議会で通過させ、来年1月末にEU離脱を達成する可能性がある。

 ただ、EU離脱を実現しても、次は離脱移行期間の交渉を控えている。保守党は移行期間を来年末で終えるとしているが、将来の関係について合意に達するには時間が足りないとみられている。合意に達したとしても手続き上の問題があり、英国は新たな合意なき離脱に直面する可能性があるという。先行き不透明感が残ると、金の下支えになるとみられる。

●金のコールオプションにまとまった買い

 金の内部要因では、米中の通商協議の進展期待などを受けてファンド筋の手じまい売りが進む場面も見られたが、安値を買い拾う動きもあり、買い意欲が強い。また、ニューヨーク金のコールオプションにまとまった買いが入っており、株安に対するヘッジとなっている。

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は12月2日時点で889.16トンとなり、1ヵ月前から25.52トン減少した。テクニカル面で悪化し、投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは11月12日の26万7066枚が当面の底となり、26日時点は27万1634枚となった。安値で買い戻す動きが出ており、下支えになった。

 ニューヨークの金オプション市場で11月27日、2021年6月限の権利行使価格4000ドルのコールオプションが3.50ドルで5000枚成立した。

 英フィナンシャル・タイムズ紙の25日付の金に関する記事で、米国の医療保険給付金に防衛費と連邦債務の利払いを加えると、米連邦政府の税収を超えると指摘されている。米国が支払いを続けるには資産価格が上昇するか、米連邦準備理事会(FRB)が紙幣を印刷する必要があるとしており、株安に振れると、財政危機が表面化する可能性がある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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