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【特集】波風立たぬOPEC総会に?! サウジアラムコIPO控えて思惑 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 石油輸出国機構(OPEC)関係筋の話として、12月5日の総会で来年6月まで協調減産の期間を延長する公算であると伝わった。現行の減産合意は来年3月までとなっており、3ヵ月間延長されるだけである。

 この関係筋によると、来年3月前にも会合が予定されているが、来月の会合で減産規模や期間を維持すると発表するよりも、先手を打つ形で減産期間の延長を発表するほうが 原油相場の安定につながるという判断のようだ。世界経済は減速しており、OPEC総会で協調減産の修正について特に発表がなければ、石油の需給見通しに楽観的であるという間違ったシグナルを送ることになりかねない。

 12月半ばにサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)が予定されていることは、OPEC総会で何かしらの発表があることを期待させる。3月前の会合にすべての決定を先送りにすることは、原油相場の下落を招く可能性が高い。暫定的に減産期間を3ヵ月間延長するほうが妥当である。

 ただ、3ヵ月延長したところで原油相場の下支えにはならない。ただの現状維持であり、むしろ落胆を招く可能性が高い。そもそも、来年3月前にもOPEC総会が行われる予定であるというのが不可解である。12月の総会が通過点として扱われているようだ。原油市場では12月会合の決定内容に関して思惑を巡らせてきたが、ロシアやサウジアラビアなど主要な産油国はあまり重視していない可能性が高い。日量120万バレルの協調減産が維持され、減産期間が来年6月まで延長される見通しであることよりも、来年の総会の日程のほうが目を引く。

●12月の総会はただの飾りにすぎない?

 想像でしかないが、OPEC総会のスケジュールは、サウジの国営石油会社であるサウジアラムコの新規株式公開(IPO)に左右されているのではないか。サウジ国内におけるアラムコのIPOは12月半ばの予定であり、OPEC総会の決定が原油市場を動かすことを極力避けようとしている印象だ。サウジ当局者は協調減産の今後について口をつぐんでいる。来月の総会がただの飾りにすぎないという認識が広がっていくなら、総会後の原油価格の変動は限りなく抑制されるだろう。

 サウジアラムコが12月半ばに国内市場に上場した後、注目されるのは国外市場での上場時期である。サウジアラビアが石油を中心とした経済から脱皮し、新たな発展を遂げていくためにはサウジアラムコの上場で得られる資金が不可欠であり、サウジにとっては是が非でも成功させなければならない。OPEC総会が原油相場を変動させるのは時期的に好ましくないのである。減産規模や期間について続報がなければ、今回のOPEC総会は原油相場の一時的な材料にしかならないのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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