【市況】国内株式市場見通し:米中の部分合意で上値トライ、次は欧州と企業業績
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■日経平均3週ぶりに上昇、米中協議の進展に期待
前週の日経平均は3週間ぶりに上昇に転じた。9月雇用統計を受けて景気減速懸念が和らぎ4日のNYダウは大幅続伸したことから、週明け7日の日経平均は小幅高でスタートした。しかし、米中貿易協議の行方に対する警戒感が根強く、朝方の買いが一巡するとマイナスへ転じた。8日の日経平均は上昇した。7日のNYダウは3日ぶり反落したものの、米中貿易交渉で部分的合意の可能性があるとの見方から、米長期金利が上昇するとともに円相場は1ドル=107円台前半の円安となったことを好感し、日経平均は前日比119円高で始まった。その後、連休明けとなった中国・上海総合指数の堅調展開が支援材料となり、後場には前日比253.99円高まで上げ幅を広げる展開となった。トランプ政権が中国の政府機関や監視カメラ企業を禁輸措置の対象に加えたと発表し、米中摩擦への懸念が再び強まり8日のNYダウが313ドル安と続落した流れを受け、9日の日経平均も反落した。ただ、朝安後は10日から開かれる米中閣僚級協議の結果を見極めたいとの思惑が台頭、後場は日銀によるETF(上場投資信託)買いもあり、マイナス圏でもみ合う展開となった。米中閣僚級協議への期待から9日のNYダウは反発したものの、米中貿易問題を巡る協議に関して、「進展がなかった」との情報が日本時間の朝方に伝わり、10日の日経平均は売り先行で始まった。米国側が中国との部分的合意に通貨協定を含めることを検討と伝わると日経平均は上昇に転じた。個別では、吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞したことで旭化成<3407>にご祝儀的な買いが向かった。トランプ大統領が中国副首相と会談する予定を明らかにし、米中が通商協議で部分的に合意するとの期待から10日のNYダウが大幅続伸となったことを受けて、11日の日経平均は一段高でスタートした。その後、一時1ドル=108円台まで円安が進んだことや、上海総合指数の続伸が支援材料となり日経平均は前日比268.79円高まで一時上げ幅を広げる場面があった。決算発表を受けたファーストリテイリング<9983>や構造改革案を開示したセブン&アイHD<3382>を中心とした小売株がけん引役に。
■日経平均は22000円台回復へ、経済指標には注意
今週の日経平均は、米中貿易協議の部分合意を好感して9月26日以来となる22000円台を回復し、上値を試す展開となりそうだ。米中貿易協議については、10月15日の対中関税引き上げの先送りが報じられるとともに、トランプ大統領は中国の劉鶴副首相と会談し、第1段階として中国が米農産物の購入、米国は中国の為替操作国認定取り消しが決まったと報じられている。ただし、詳しい内容は明らかとなっていない。部分的合意で1日から15日に実施が延期されていた対中国関税の引き上げが回避され、当面の米中貿易摩擦の懸念が後退した効果は大きい。CME225先物(円建て)は大証比240円高の22040円となっており、まずは22000円の大台を意識してリスクオンの展開入りが意識される週明けとなりそうだ。ただし、今週は米中貿易問題以外にも、不透明材料も抱えている州でもある。18日に設定されている対EU報復関税の発動予定日だ。欧州については英離脱延期法が定めるEUとの離脱案合意期限もある。英国のEU離脱(ブレグジット)期日を今月31日に控えて、17日のEU首脳会議で英政府が離脱協定に合意できない場合、19日までに英国は離脱延期を要請することが義務付けられている。ジョンソン英首相は、離脱延期はしないと明言していることから、市場に混乱が生じる懸念もある。こうしたブレグジット問題に加えて、14日の中国9月貿易収支、16日に米9月小売売上高、18日に中国 7-9月期 GDPと、市場に影響が大きい米中の経済指標の発表が予定されており、不安定要素を複数抱え込んでいる週ともなっている。そのため、米中部分合意を織り込んだ後は、経済指標に日経平均は一喜一憂する展開となることも予想される。さらに、翌週に目を転じると22日が即位礼正殿の儀により株式市場は休場、23日の日本電産<6594>による発表を皮切りに、3月期決算企業の第2四半期決算が本格化するというスケジュールを睨んで、積極的な売買は手控えられる可能性もある。
■物色は業績相場へ移行を準備
物色的には、旭化成の吉野彰名誉フェローのノーベル化学賞の受賞でリチウムイオン電池関連や電線地中化関連の人気が継続する期待がある。また、決算発表や構造改革の発表を受けてファーストリテイリング<9983>やセブン&アイHD<3382>、良品計画<7453>などが上昇したことを受けて、業績相場への移行も進んできそうだ。今期業績を下方修正した安川電機<6506>についても、売り一巡後は下げ幅を縮め、周辺の中国関連、設備投資関連への売り波及が見られなかったことは収穫だった。唯一、11日の相場で主要指数が上昇する中、マザーズ指数のみが3日続落となったことが懸念されるところである。
■さくらレポート、9月訪日外客数
主な国内経済関連スケジュールでは、14日は体育の日の祝日で休場、15日に日銀支店長会議、10月の地域経済報告(さくらレポート)、8月第三次産業活動指数、16日に9月訪日外客数、17日に9月首都圏新規マンション販売、18日に9月消費者物価の発表が予定されている。
《FA》
提供:フィスコ