【特集】平和RE Research Memo(3):分配金は7期連続でスポンサー変更後の最高値を更新
平和不リート <日足> 「株探」多機能チャートより
■平和不動産リート投資法人<8966>の業績動向
1. 2019年5月期の業績概要
当期における国内経済は、米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題等、海外における政治経済動向による不確実性の高まりの懸念材料を抱えてきたものの、引き続き企業収益の改善に伴う設備投資の増加、雇用・所得環境の着実な改善に伴う個人消費の緩やかな増加等により堅調に推移し、全体としては緩やかな回復基調を維持した。また、オフィスビルの賃貸マーケットは、景況感の改善による企業のオフィス需要の増加により堅調に推移し、レジデンス賃貸マーケットも、引き続き首都圏への継続的な人口流入超過や小世帯層の増加傾向により底堅く推移した。
このような環境下、同REITの2019年5月期(第35期)決算は、営業収益6,382百万円(前期比2.7%増)、営業利益3,036百万円(同3.2%増)、経常利益2,578百万円(同3.7%増)、当期純利益2,578百万円(同3.7%増)の増収増益で、2019年1月22日発表の期初予想をすべて上回った。資産入替が収益増に大きく貢献した上、既存物件でも稼働率の上昇と賃料単価の増加によって収益拡大が継続した。なお、REITでは、税引前利益の90%超を分配金として支払う場合には、法人税が免除されることから、当期純利益は経常利益と同水準となっている。
売却益等を除く実力ベースでは、1口当たり当期純利益は前期比90円増と好調であり、分配金を2,425円/口と同75円増とし、7期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。なお、前期と当期に分割して計上された三田平和ビル(底地)の譲渡益は、一部を分配金に充当するが、残額は内部留保することで将来の分配金支払い等の原資として活用する方針である。
ポートフォリオ全体の期中平均稼働率は98.03%と、過去最高水準に達した。積極的なリーシング活動が実を結び、レジデンスの稼働率は97.20%で過去最高水準を更新し、オフィスの稼働率も99.50%と高かった。加えて、オフィス、レジデンスともに賃料の増額改定が進展し、NOI利回り(実質利回りとも言う、(賃貸事業収入-賃貸事業費用)(年換算)/期中平均帳簿価額×100で計算)は5.38%と、6期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。
2. 財政状態
2019年5月期の財政状態は、総資産185,504百万円(前期末比1.3%増)、純資産95,462百万円(同0.1%増)、有利子負債82,467百万円(同2.1%増)であった。平均調達金利は0.863%と同0.002%pt上昇したのは、有利子負債の平均調達年数を6.84年から6.91年へと長期化したためである。ただ、今後は、主要金融機関との良好な関係のもと、比較的金利水準が高い過去の借入金が満期を迎えることで、緩やかな調達コストの低下が見込まれる。長期借入金固定化比率を90.7%(2019年7月17日現在では96.9%)として、将来の金利上昇リスクに備えている。さらに、鑑定LTV比率(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は40.9%と良好な水準を維持している。同REITでは、同比率40~50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って同比率の低下が続いており、借入余力が拡大したことで、より機動的な物件取得が可能になっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《MH》
提供:フィスコ