【特集】急騰前夜、“電子書籍ルネサンス” 新章突入で「大化け期待の5銘柄」 <株探トップ特集>
スマートフォンやタブレットの普及を背景に電子書籍が好調だ。違法コピーへの対策が進みマーケットの成長性に再びスポットライトが当たり始めた。
―雌伏を経て新たにめくられる相場のページ、株価変身ストーリーを堪能せよ―
電子書籍の市場拡大が急だ。ここにきて、にわかに株式市場でも関連銘柄にスポットライトが当たり始めた。電子書籍は、近年一段と顕著となっている出版不況とは裏腹に構造的なフォローウインドが吹いている。 スマートフォンは高齢化にも関わらず普及に陰りが見られない。比較的若い世代ではひとり1台はおろか、場合によっては2台保有する人も少なくない。また、モバイル端末ではタブレットも大きく市場の裾野を広げている。総務省調査によると、2017年時点でスマートフォンの世帯保有比率は75%、タブレットで36%に達しており、これが電子書籍需要を後押ししている状況だ。また、米アマゾンの「Kindle」や楽天 <4755> の「Kobo」といった電子書籍リーダーも全国的に普及を果たしたことで、ユーザー層の基盤を支えている。
●電子書籍は“構造的好況”で市場拡大続く
紙の出版物が年々減少する一方で、電子出版市場は高成長が続いている。もちろん、この傾向は今年に入っても顕著に数字に反映されており、全国出版協会によると、今年上半期時点で、紙の出版物が前年同期比4.9%減の6371億円に対し、電子出版は22%増の1372億円と2割を超える伸びを示した。電子出版のコンテンツとして主力となっているのは コミックで、上半期は27.9%増の1133億円と、電子出版総額に占める割合は8割を超え、なおかつ小説などの書籍・雑誌を合わせた全体ベースの伸び率を上回っている。
特に、最近では1冊ごとに売り切る従来の販売形態にとどまらず、徐々にその形態が洗練化されている。無料のマンガアプリなどで多くのユーザーを囲い込み、そこに広告を掲載して企業からの収入を収益源とする形式や、定額読み放題のサブスクリプション型の課金なども普及している。これら新形態の収益モデルが軌道に乗ってきた。
加えて、これまで業界に影を落としていた海賊版サイトの駆逐がビジネス環境を急速に改善させている。電子書籍業界は17年に人気漫画などを違法コピーして掲載した「漫画村」の影響で大きなダメージを受けたが、最近は著作権教育の浸透やウイルス感染のリスク排除に向けた取り組みなどが強化され、海賊版サイト対策が進展している。関連企業の中には複数社で海賊版サイトへの対策を目的に連合を結成し、正規版を保護する動きが強まるなど、業界を取り巻く風向きは大きく変わってきた。
また、直近では「漫画村」の運営者が相次いで逮捕されるなどで、その違法性が広く認知されることになった。これを契機に、株式市場でも関連銘柄への投資資金の流入が改めて加速する方向となりつつある。
●急騰性に富み、天井の高さが魅力の銘柄群
電子書籍関連株は、値動きが軽く天井の高い銘柄が多いのが特長だ。株価の調整局面が長かった分、株式需給面からも売り物が枯れており、大幅な水準訂正余地が意識されている。業績面からのアプローチはもちろん重要だが、デジタルコンテンツを扱っている関係で、いったん拡大局面に入れば収益成長スピードが速いことがマーケットにも認知され始めた。足もとは国内上場企業の決算発表がほぼ終了したが、同分野にビジネス展開する企業の決算短信をみると一様に「電子書籍が好調」という言葉が目立つ。
関連銘柄としては電子書籍の先駆け的存在であるパピレス <3641> [JQ]や電子書籍取次最大手のメディアドゥホールディングス <3678> 、家庭用ゲームやスマホゲーム開発の大手で電子コミックアプリ「マンガUP!」を展開するスクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 、電子コミックアプリ「めちゃコミック」運営のインフォコム <4348> 、コンテンツ配信が売り上げの8割を占め電子書籍も手掛けるエムアップ <3661> 、出版業界の大御所で電子書籍への傾注を明示するKADOKAWA <9468> 、情報技術専門書及びスマホ向けコンテンツ作成に強みを持ち、電子書籍販売で利益を伸ばすSEホールディングス・アンド・インキュベーションズ <9478> [JQ]などが挙げられる。
また、忘れてならないのが電子コミックアプリ「LINEマンガ」を展開するLINE <3938> や、ヤフー <4689> の傘下で、マンガを主力に売り上げの70%以上を電子書籍配信サービスが担うイーブックイニシアティブジャパン <3658> 。直近マザーズ市場IPO銘柄ではマンガアプリなどの配信用サーバーの開発を行うLink-U <4446> [東証M]。このほか、昨年12月にマザーズに上場した「マンガBANG!」を運営するAmazia <4424> [東証M]などがマークされる。
●大化け候補エントリー、この5銘柄に要注目
そして今回は、材料性や成長性、株式需給などから選りすぐった電子書籍関連で大化けの可能性を内包する5銘柄をエントリーした。
【ブランジスタは16年の伝説的大相場の記憶蘇るか】
ブランジスタ <6176> [東証M]は880円台を横に走る75日移動平均線をサポートラインに上値追い再開前夜の感触。16年2月から5月にかけて1100円台の株価を数ヵ月で1万6000円近くまで大化けさせた驚異的な上昇パフォーマンスは市場でも話題となった。旅行情報を扱う「旅色」を主力に電子雑誌を展開する。地方自治体との連携では7誌を発行し好評を博している。また、ECサイト支援ビジネスも好調で収益に貢献しており、19年9月期は増収増益を見込む。同社の親会社はネクシィーズグループ <4346> で16年の大相場は秋元康氏がプロデュースする新作ゲーム「神の手」が物色人気の発端となったが、その潜在的な脚力は群を抜く。<急騰性5・中期的上値余地4>
【富士山MSは来期急回復で4ケタ台復帰有望】
富士山マガジンサービス <3138> [東証M]は目先急動意となったが、中期的にみて水準訂正はこれからで7月17日の高値890円奪回を通過点に4ケタ大台活躍が想定される。昨年3月下旬には1988円の高値まで急騰した経緯があるほか、その直前までほぼ2年間にわたり1000~1500円のゾーンを地相場としていた。時価はまだ底値圏にある。オンライン書店を運営するが、デジタル雑誌分野で電通 <4324> と設立した合弁会社が業容拡大に寄与している。また、ニュースサイトを手掛けるイード <6038> [東証M]とは出版社向けECサイト運営事業で提携し、今後の展開に期待が大きい。20年12月期は営業利益段階で今期予想比6割前後の増益が有力視される。<急騰性5・中期的上値余地4>
【ビーグリーはPER超割安、悪目買いチャンスに】
ビーグリー <3981> は15日に大陰線を引いて大幅安となったが、絶好の悪目買い好機となった形だ。17年3月上場時に2545円の高値をつけている。19年12月期上期(1-6月)の営業利益は2億8600万円(前年同期実績は8900万円の赤字)と黒字化を果たした。通期は前期比54%増の7億9700万円を計画するが十分達成が可能。PERは10倍前後の水準で割安感が際立つ。電子コミック「まんが王国」を主力展開するが、クオリティー向上や無料ページコンテンツ数の拡大など利用促進策でユーザー層開拓を進めている。スマートフォン向けRPGの配信も年内に計画しており、一段の業容拡大が期待できる。<急騰性4・中期的上値余地5>
【インプレスは超低位・小型の強みを生かす展開】
インプレスホールディングス <9479> は130円近辺と極めて低位に位置し、時価総額50億円前後の小型株ということもあって人気化したときの爆発力に期待が大きい。15年3月に、時価と同水準の130円台から440円まで一気に駆け上がった実績がある。同社はデジタルコンテンツに傾注している。コンテンツホルダーとの協業による電子コミックプラットフォーム事業が好調で収益牽引役を担っており、19年4-6月期は営業利益が前年同期比2.5倍の1億400万円と高変化をみせた。20年3月期は2億5000万円と前期比2割増益を見込んでいる。配当利回り1.5%前後の有配企業ながらPBR0.5倍台は評価不足歴然だ。<急騰性4・中期的上値余地3>
【アンファクはスクエニとの連携で更なる飛躍へ】
and factory <7035> [東証M]は業績の飛躍的な成長を背景に株価も大きく居どころを変えることになりそうだ。出版社と連携してスマートフォン向けマンガアプリなどを手掛けるが、17年8月期以降売上高・利益ともに目を見張る伸びを示している。19年8月期は伸びが鈍化する見通しながら、それでも売上高は前期比2倍の38億7000万円、営業利益は同40%増の5億1100万円を見込む。電子コミックアプリを運営するスクエニHDと資本業務提携し、スマホ向けアプリを共同開発していることもポイントとなる。株式需給面では7月末に株式分割(1対2)を実施しており個人投資家も参戦しやすくなっている。<急騰性4・中期的上値余地3>
電子書籍ルネサンスで大化け期待の5銘柄
銘柄 <コード> 急騰性 中期的上値余地
富士山MS <3138> ☆☆☆☆☆ ◆◆◆◆
ビーグリー <3981> ☆☆☆☆ ◆◆◆◆◆
ブランジスタ <6176> ☆☆☆☆☆ ◆◆◆◆
アンファク <7035> ☆☆☆☆ ◆◆◆
インプレス <9479> ☆☆☆☆ ◆◆◆
※急騰性は☆が多いほど強く、中期的上値余地は◆が多いほど大きい
株探ニュース