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【特集】日本乾溜工業 伊東幸夫社長インタビュー <福証単場会銘柄に注目!>

伊東幸夫氏(日本乾溜工業 代表取締役社長)

―「100年企業」に向けての盤石な経営基盤を目指す事業展開!―

 地方証券取引所の上場銘柄は、全国的な「知名度」の低さなどから、東証銘柄の陰に隠れてしまいがちだが、そこにはキラリと光る優良な企業が多く存在する。福岡証券取引所の単独上場会社の会(通称:単場会)http://fse.irnavi.minkabu.jp/にもそんな魅力溢れる銘柄がある。この単場会銘柄企業のトップが、自身の言葉でビジネスモデルや成長戦略、経営課題などを語ってくれている。インタビュー記事からは、持続的成長を目指す各社の取り組みが理解でき、思わず応援したくなるほどに熱い意気込みが伝わってくる。4年目となるこの単場会銘柄の特集をご覧になり、ポートフォリオの再検討に役立てていただきたい。

●伊東幸夫氏(日本乾溜工業 代表取締役社長)

 九州福岡市に本社を置く日本乾溜工業(1771)[福証]では、「環境にやさしく安全な社会の創造に向けてあくなき挑戦を続ける」を理念に掲げ、「建設」を柱に「防災安全」、「化学品」の3事業を展開している。現在、2021年9月期を最終年度とする中期事業計画を展開する同社の「100年企業」の実現を目指す成長戦略と現状について、伊東幸夫社長に話を聞いた。

【1】貴社の事業の状況について伺います。
貴社では、当該期の業績をどう分析し、評価されていますか? また、今後の見通しについてはどのようにお考えですか?

 直近の2019年9月期第2四半期までの業績の状況ですが、期首から今までにない受注残高を抱えてのスタートとなりました。主力とする建設事業では、企業間競争の激化や建設労働者不足などによる建設コストの上昇により依然として厳しい環境で推移しましたが、高速道路の標識や防護柵などの大型工事が順調に進捗したことや、熊本地震からの復旧・復興関連の土木資材の販売などが増加したことにより、売上高は前年同期を上回る結果となりました。

 また、今後の見通しにつきましては、当社が主力事業とする建設業界において、東京オリンピック・パラリンピックなどの建設関連工事により、国内の公共投資は一定の水準が見込まれるものの、当社が営業エリアとする九州管内での効果は限定的であるため、資材費や人手不足に伴う労務費などの建設コストの高騰など経営環境は依然として厳しい状況が続くものと予想されます。

【2】「建設」「防災安全」「化学品」の3つの事業展開についてお聞きします。
「環境と安全を通じて社会に貢献する」という理念のもと、3事業を展開されています。貴社ビジネスの特徴やこだわり、そして新たな事業展開の可能性についてお話し下さい。

 当社は、地域社会の「環境」と「安全」を提供する建設事業部、個人への「安心」そして「安全」を提供する防災安全事業部、生活の中での「環境」と「安心」を提供する化学品事業部の3事業部で「環境」・「安心」・「安全」をキーワードに事業に取り組んでいます。

 特徴についてですが、主力とする建設事業部においては、建設会社でありながら商社的な機能も持っていることが大きな特徴のひとつです。「メーカー代理店」として幅広い建設資材を扱い、自社で工事を行います。また、商社として建設会社様に対して商品の販売を行うことも多々あります。防災安全事業部においては、専門知識を保有した営業マンが、官公庁や民間の工場に防災用品や産業安全衛生保護具といった商品を納め、化学品事業部においては北九州市にある工場内で、タイヤ製造に欠かせない不溶性硫黄と当社オリジナル製品である「雑草アタック」を製造しています。このように、一つの企業がメーカーでありながらも商社の側面も有し、工事も行う業態をとっていることが当社最大の特徴だと考えています。

 当社は、九州一円を網羅するように、各地域に密接した営業拠点を構えながら、交通安全施設の工事や、がけ崩れ防止などの人命に係わる工事やトンネル、橋梁、水路などの維持・補修を行っており、皆さんが日常的に目にする様々なものが私たちの仕事と深く係わっています。防災安全事業に関しても、身体を直接的に守る商品や防災用品を取り扱っており、「安全・安心」に直結しています。当社ビジネスの最大の特徴は、事業を通して「安心」と「安全」を地域の皆様にお届けできることだと私は考えています。

【3】中期経営計画について伺います。
 2021年9月期を最終年度とする新しい中期経営計画がスタートしています。同計画では「100年企業に向けた強固な足場づくりとして、グループ一体での営業力・技術力結集から、地域・業界での絶対的存在感を発揮する」ことを目標に掲げられています。
これについて、現在の進捗状況はいかがでしょうか? 具体的なご説明をお願いいたします。また、目標達成のための重要課題についても、お話をお聞かせください。

 中期経営計画では、基本テーマとして【Compliance】(コンプライアンス)、【Communication】(相互理解)、【Challenge】(挑戦)、【Creation】(創造)を定め、頭文字の“C”をとり、「“4C”コンシャス(意識する)」をスローガンにより一層「建設」「防災安全」「化学品」の3分野の事業領域の拡大を図るとともに、収益力の向上と財務基盤の強化や「働き方改革」に代表される事業構造の改善にも積極的に取り組み、「100年企業に向けた強固な足場づくりとして、グループ一体での営業力・技術力結集から、地域・業界での絶対的存在感を発揮する。」ことを目標に掲げ、人材・組織力の強化と企業統治の向上を目指してまいります。

 中期経営計画の進捗状況についてですが、4Cの1つに掲げていた『コンプライアンス』について企業価値の向上を果たすためにも、コンプライアンス体制の再構築に取り組みました。新たにコンプライアン室を設置し、役職員のコンプライアンス意識の浸透を図るため、コンプライアンス研修を実施しています。

 また、2019年4月1日に熊本県に本社を構える「株式会社大邦興産」が当社グループの一員となりました。グループ全体のシナジーを追求し、一層の地域貢献を果たすことを目標として、事業に取り組んでまいります。

 さらに、当社は2019年9月期に創立80周年を迎えます。100年企業に向けて新時代「令和」におきましても、変わらぬ経営理念のもと、時代が求めている「安全」を地域社会へ拡充し、企業価値向上に引き続き努めてまいります。

【4】経営のリスクについてお話をお願いします。
貴社のビジネス展開におけるリスクは何でしょうか? また、想定されるリスクがどのように業績に影響するとお考えでしょうか?

 当社グループの業績は、国及び地方自治体の公共投資予算が反映されます。当社が主力とする建設事業において、官公庁が発注する公共事業の予算が削減された場合には、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。しかし、当社が提案する工法及び建設資材は、安全を創出する交通安全施設工事、防災・減災に関連する斜面崩壊防止工事や砂防堰堤整備の推進、コンクリート構造物の長期的な活用を促進する維持補修(メンテナンス)工事などです。様々な現場ごとに最も適した工法や建設資材をお客様に提案しています。現在、高度成長期に造られた構造物である橋梁・トンネルの老朽化問題が顕在化し、頻発する多様な災害リスクへの対応が求められる中、今後は防災・減災及びコンクリート構造物のメンテナンスなどの事業が推進されていくことが予想されます。当社も受注に向けた体制を一層強化し、売上拡大を図りたいと考えており、いわゆる新設開発型の公共事業から、維持・補修を含む当社が社会に提供する価値である「安全」「環境」などへの需要に対して、積極的な取り組みを行うことで利益創出を図りたいと考えています。

 建設事業部門においては重大な労災事故、工事事故などが発生した場合には発注者から指名停止を受け、その後の受注活動に影響を及ぼす可能性を内包しており、当社にとって極めて重大なリスクです。そのため、毎年「安全衛生管理計画」を策定し、作業所や現場周辺での安全パトロールと安全衛生教育などを実施し、労働災害発生防止に努めています。また、化学品工場においては原材料に可燃性の高い硫黄を取り扱っているため、発生した火災の規模によっては、その後の生産体制に影響を及ぼしかねません。定期的に消防訓練を行い、設備・保全管理の徹底を図り、安全管理を徹底しています。

【5】最後に、投資家に向けてお話をお願いします。
さまざまなステークホルダーと関わりながら事業推進されている貴社では、投資家に対してどのようなコミットが可能でしょうか? 貴社のコーポレートガバナンスやコンプライアンス、経営理念に絡めた上でお話をいただければ幸いです。

 当社は「環境にやさしく安全な社会の創造に向けてあくなき挑戦を続ける」を経営理念として掲げており、福岡を中心に九州各地で支店や出張所を構え、地域密着型の事業を展開することで九州全体の発展に貢献していきたいと考えています。地震や風水害時には地域社会を支えることができる企業であり、地域と共に成長できる企業になるために、事業を通じて「安心」「安全」の拡充を目指しています。

 2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け高速道路ナンバリング標識の設置が九州地方でも推進されています。当社が有する九州内のネットワークを最大限活用し、平成29年度より九州管内高速道路15路線と関連する市街地のナンバリング標識への取替工事に現在取り組んでいます。また、九州地方は外国人観光客のレンタカー利用も年々増加しています。インバウンドに関連する交通インフラ整備の一環として国土交通省とNEXCO西日本はレンタカー利用による事故を防止するため、ETC2.0より収集した急ブレーキデータから事故危険箇所を特定し、対策を講じる事業を試験的に展開しており、当社が標識設置工事に携わりました。「わかりやすい道案内」で交通インフラの安全向上に貢献し、国際的な安全を担保するためにも今後も積極的に事業に取り組んでまいります。

 さらに、当社は安定的な業績を確保するとともに、株主の皆様への継続的配当を実現することで、皆様からの期待に応えてまいりたいと考えています。役職員一同誠心誠意努力していく所存ですので、株主・投資家の皆様におかれましては、今後とも当社へのご指導、ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

【自社アピール】
 当社グループは「環境にやさしく安全な社会の創造に向けてあくなき挑戦を続ける」という経営理念のもと公共工事を主体とする交通安全施設工事、法面、景観工事の施工および各種建設工事に関連する資材の販売を行う「建設事業」を中心に、防災用品、産業安全衛生用品などの販売を行う「防災安全事業」、不溶性硫黄(ゴム加硫剤)・環境型自然土防草舗装材(製品名:雑草アタック)の製造・販売を行う「化学品事業」を行っております。

 主力の建設事業をはじめとして、工事の施工のみならず、各種建設工事に関連する資材や防災・産業安全衛生用品などの販売を行っていることが、当社の強みです。

 福岡を中心に九州各地に支店・出張所を構え、地域密着型で事業を展開しており、九州の人々の「日々の安心」を守り、そして「もしもの時」を想定して、街に安全の種を撒く。それが当社の使命だと考え、創業100周年を目指してまいります。

●資料請求・問い合わせ先
日本乾溜工業株式会社 総務部
〒812-0054 福岡県福岡市東区馬出1丁目11番11号
TEL:092-632-1050 FAX:092-632-1082
Email:information@kanryu.co.jp
http://www.kanryu.co.jp/

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