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【特集】GTS Research Memo(3):歯髄幹細胞等を使った再生医療事業を第3の柱に育成する方針

ジーンテクノ <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

2. 事業内容
ジーンテクノサイエンス<4584>は、2019年3月期より企業体としての新たなステージを指すGTS3.0「バイオで価値を創造するエンジニアリングカンパニー」を目標に掲げ、これまでの事業活動で培ってきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見及び、子会社化したセルテクノロジーが保有する歯髄幹細胞治療プラットフォームを最大限活用し、従来手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、バイオシミラーやバイオ新薬の開発にとどまらず、再生医療技術を用いた先進的な治療法の開発・提供に取り組んでいる。

(1) セルテクノロジーについて
同社は再生医療事業を第3の柱とするため、2019年4月に、セルテクノロジーを株式交換により完全子会社化した。セルテクノロジーは歯髄幹細胞を利用した再生医療等製品の開発を行っており、2008年に設立され国内で初めて歯髄幹細胞保管事業の運営を開始した企業として知られている。現在は国内約2,200件の歯科医院とネットワークを結び、自家歯髄細胞保管サービスと他家歯髄細胞保管サービスを行っているほか、歯髄幹細胞を培養する際に生じる培養上清を医科クリニック・化粧品メーカー等に販売する事業も行っている。2018年5月期の業績は売上高で178百万円、営業損失で46百万円となっており、従業員数は約10名となっている。

自家歯髄細胞保管サービスとは、乳歯脱落歯や親知らず等を、将来の子ども自身や家族の治療のために保管しておくサービスで、2009年のサービス開始以降、保管件数は数百件となっている。一方、他家歯髄細胞保管サービスは自分以外(他人)にも応用できる治療法開発のため、患者から無償で提供された脱落歯から歯髄幹細胞を培養し、研究用細胞として提携企業や大学などに提供するサービスとなる。各企業や大学で歯髄幹細胞を使った治療法の開発を進めている。

歯髄幹細胞とは、歯の内部に存在する歯髄と呼ばれる細胞を用いて製造・加工した幹細胞となる。その他の間葉系幹細胞と比較し、骨、軟骨及び神経細胞に分化しやすいほか、乳歯から採取するため細胞の再生力が極めて高いことが特徴となっている。過去の研究論文によると、骨髄由来の間葉系幹細胞と比較したマウスの実験で骨再生能力は3倍弱、神経成長因子やや脳由来神経栄養因子の分泌量も数倍以上の開きがあり、歯髄幹細胞での再生医療治療の適応疾患としては、骨再生分野や神経系疾患等が最適と考えられている。また、細胞の再生力についても、同様の比較で細胞分裂スピードで約2倍、分裂限界回数で約3倍の開きがあるとの実験結果が報告されており、実用化された場合にはコスト競争力で他の間葉系幹細胞を上回ることになる。さらには、細胞の採取方法が脱落歯から得るため、ドナーの負担が極めて少ないこと、また、多くのドナーからの提供が可能であるといったメリットもある。

同社はこうした特徴を生かして、「口唇口蓋裂」「腸管神経節細胞僅少症」「脳性まひ」「脊髄損傷」「先天性白皮症」の5つの疾患にターゲットを絞って研究開発を進めていく予定にしている。また、歯髄幹細胞のポテンシャルに着目する製薬企業も多く、同社が子会社化する以前にもセルテクノロジーでは、第一三共<4568>とは中枢神経疾患領域で、エーザイ<4523>とは神経変性疾患領域で、積水化学工業<4204>とは歯周病関係で共同研究の提携を行っている。

2018年1月にはニコン<7731>と歯髄幹細胞を原料とした再生医療等製品に用いるための臨床用MCBの構築を目的とした業務提携契約を締結し、現在は子会社のニコン・セル・イノベーションで臨床用MCBの製造手法の開発を進めている。今後は、両社でGCTP/GMP※に準拠した歯髄幹細胞由来の臨床用MCBを用いて、研究機関や製薬企業等に歯髄幹細胞を安定供給していく計画となっている。再生医療等製品での臨床試験を行う際には、GCTP/GMPに準拠した臨床用MCBで製造された歯髄幹細胞が必要となるため、MCBの構築以降にそれぞれの開発プロジェクトが進展していくものと予想される。MCBの構築は2020年3月期中にも完成する見込みとなっている。

※GCTP(再生医療等製品の製造管理及び品質管理基準に関する省令に基づく適合基準)/GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令に基づく適合基準)。


なお、歯髄幹細胞を使った再生医療の取組みは同社以外にも、JCRファーマ<4552>と帝人<3401>が共同で、エア・ウォーター<4088>が子会社でそれぞれ開発を進めている。ただ、歯髄細胞バンクを運営しているのはセルテクノロジーだけであり、今後、臨床開発や商用化を進めていく段階で、コスト競争力や患者への適合率の高さなどといった面で、多くの歯髄幹細胞を調達できる体制を既に構築していることは同社の強みになると言えるだろう。

(2) バイオシミラーについて
バイオ医薬品は、微生物や細胞に備わっているたんぱく質を作る機能を活用し、医薬品として役立つ特定のたんぱく質(ホルモン、酵素、抗体等)を作り、医薬品化したものを指す。元々、人間の体内にあるたんぱく質を使って医薬品化するため、からだに優しく、また、バイオ医薬品の一種である抗体医薬品は疾患部分に直接作用するため副作用のリスクも少ないといった長所を持つ。

一般的な医薬品(低分子化合物)が分子レベルの化学合成によって量産されるのに対して、バイオ医薬品は遺伝子組み換え技術や細胞培養・精製技術を用いて大量の微生物や細胞を培養し、それらを合成させ精製することから、開発費や量産に必要な製造設備のコスト負担が大きい。また、生物製剤であるため、使用期限も一般的な医薬品に対して短く、薬価も総じて高価なものが多い。

一般的な医薬品には新薬として開発された先発品と、先発品と同一の分子構造の化合物を医薬品化した後発医薬(ジェネリック医薬品)とがあるのと同様に、バイオ医薬品においても後続品となるバイオシミラーがある。ただ、先行品に対してたんぱく質自体は同一で、薬効、安全性等は変わらないものの、たんぱく質に付加される糖鎖などに微妙な差異があるため、完全に同一なものはできない。このため、先行品に類似したものを製造するために独自で製法を確立し、物理化学的なデータを積み重ね、同等性と同質性を証明する必要がある。また、臨床試験においては安全性や有効性などの同等性試験が必要で、これらを満たして初めて製造販売承認が取得できる。このため、バイオシミラーの研究開発費は一般的なジェネリック医薬品と比較すれば格段に大きくなる。

バイオシミラーの薬価に関しては先行品の約70%で設定されるため、いかに生産性の高い製造プロセスを確立できるかが、バイオシミラーを商用化していくうえでは重要な要素となる。特に、製造プロセスを確立するためのノウハウや開発品の特性・品質を解析するノウハウを持つ企業は国内で少ない。同社はバイオ医薬品に特化して、10年以上にわたる研究開発を進めてきた蓄積があり、バイオシミラーの領域においては国内でもトップクラスの開発ノウハウを持つ企業として位置付けられる。

なお、バイオ新薬とバイオシミラーを比較した場合、研究着手から上市までの期間は新薬が15~17年、バイオシミラーが6~8年程度となる。新薬の場合は、創薬ターゲットの探索(機能解析)で2~3年、医薬候補化合物のスクリーニングで2~4年の時間を要するほか、非臨床から臨床試験に至るまでの期間も長期間を要するためだ。このため、研究開発費の規模は新薬が500~1,000億円程度であるのに対して、バイオシミラーは50~100億円程度となり、また、開発から上市に至るまでの成功確率も新薬と比較して格段に高くなる。同社のようなバイオベンチャーにとってバイオシミラー事業は開発効率の高い領域とも言える。

ただ、先行バイオ医薬品と有効成分、原薬、添加物、製法などが全く同じ後続バイオ医薬品(以下、バイオセイム)が2018年に国内で初めて製造販売承認を取得しており、バイオセイムの販売がバイオシミラーに与える影響が懸念されている。協和キリンフロンティア(株)が2018年8月に製造販売承認を取得した「ダルベポエチンアルファ注シリンジ『KKF』」がそれで、親会社の協和キリン<4151>が開発・販売する「ネスプ」のバイオセイムとなる。先行品を販売する企業の子会社がバイオセイムを販売することは、その価格水準次第によってはバイオシミラー企業の開発意欲を削ぐことになりかねず、その是非も含めて議論されたが、ひとまずはバイオシミラーと同価格水準(先行品の70%)で2019年6月に薬価収載されることになり、今後の状況を見ながら中央社会保険医療協議会で議論を継続していくこととなった。同価格水準であれば、有効性や同等性などの面で差はほとんどなく競争できる環境にあると同社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

 提供:フィスコ

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