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【特集】G20接近で動き出す、思惑満載の「生分解性関連株」に出番! <株探トップ特集>

5月末に、政府は海洋プラスチックごみ対策で行動計画を策定。G20で脱プラに向けた動きをリードする計画にあるが、これを背景に上値追いの可能性を秘める銘柄を探った。

―重要議題に上がる海洋プラスチックごみ削減で、仕切り直し相場が近づく―

 貿易摩擦を巡り“トランプ砲”に揺れる世界経済を背景に、東京株式市場も右往左往する状況が続いている。ここ数日は、若干持ち直したかのように見える東京市場だが、4月後半から続いた底なし沼のごとき悪地合いに投資意欲が減退、物色対象も方向感が定まらない。こうしたなか6月28、29日に大阪で20ヵ国・地域首脳会合(G20サミット)が開催されるが、ここでは海洋プラスチックごみの削減が重要議題となる。本来ならば、G20を背景に「脱プラスチック関連」が物色テーマの一角としてスポットライトを浴びそうなものだが、いかんせん泥沼に足を捉えられ株価は冴えない。ただ、脱プラは喫緊にして中長期の課題でもあり息の長いテーマだけに、地合い悪に翻弄され下値を探る関連株の押し目には妙味もありそうだ。脱プラ関連株の現状を追った。

●レジ袋有料化発言で泥沼脱出!?

 5月31日、政府は海洋プラスチックごみ対策で行動計画を策定した。同計画では「海洋流出しても影響の少ない素材(海洋生分解性プラスチック、紙等)の開発やこうした素材への転換など、イノベーションを促進していく」としており、初の議長国となるG20において脱プラに向けての動きをリードする方針だ。しかし、この発表を受けても、土や海水中などの微生物に分解され、最終的には水や二酸化炭素になる 生分解性プラスチックや代替需要としての紙製品を手掛ける脱プラ関連の株価は反応薄だった。

 こうしたなか、原田義昭環境相が今月3日の記者会見で、プラスチックごみ削減の観点から、スーパーやコンビニエンスストアなどで配られるレジ袋の有料化について言及、これを刺激材料に脱プラ関連株が動意することになった。一連の関連株が本格的な底値離脱の動きを見せるのか、G20開催が迫るなか注目の局面が続くことになる。

●ユニチカ、三菱ケミは「ストローの先に巨大市場」

 昨年8月に、すかいらーくホールディングス <3197> が2020年までに全業態においてプラスチック製ストローの使用を順次廃止することを発表、これが契機となり代替製品としての「紙ストロー」に一気に注目が集まった。もちろん、海洋プラスチックごみではペットボトルに対する対策が大きな課題となっているが、まずは身近な存在の紙ストローが脱プラの象徴となった格好で、各社が製品化を急いでいる。

 こうしたなかユニチカ <3103> は、生分解性のバイオプラスチック「テラマック」に注力しており要注目だ。同社は3月25日、テラマックのストロー向け樹脂グレード「TP-5040」を開発したと発表、国内外に向けた積極的な販売体制を整えることで、新規顧客開拓を進める方針だ。TP-5040を用いたストローは、一定の柔軟性と剛性、及び加工性を併せ持つ最適な樹脂で、従来のプラスチック製と同様の使用感が得られるという。同社では、TP-5040についてプラスチック製ストローの代替用途に対し販促活動を進めることに加え、ストロー以外の用途への転用も図り、3年後には売上高5億円を目指すとしている。

 三菱ケミカルホールディングス <4188> もストローで攻勢をかけている。同社の生分解性プラスチック「BioPBS」を用いたストローが、4月1日から京急グループ全社で導入されたことに続き、5月にはワシントンホテルが運営するホテル内の飲食店舗・宴会場で同ストローに切り替えるなど三菱ケミHDの展開力に期待が高まっている。

 ある業界関係者は「ストローの金額規模は正直なところ大きくはない。(ストローについては)さまざまな製品開発、販売に向けての突破口」と話す。たかがストロー、されどストロー、その小さな穴の先には大きな市場が待っている。

●中越パは「マプカ」で攻勢へ

 脱プラの動きを製紙業界も機敏に捉えている。生分解性プラスチックでは王子ホールディングス <3861> をはじめとする大手製紙メーカーも開発を加速している。

 一方、中越パルプ工業 <3877> は、100%プラスチックに代わる新素材「マプカ(MAPKA)」で攻勢に出る。昨年、環境経営総合研究所とマプカを用いたシートを製造する合弁会社を設立、食品向けトレーを用途とする分野への展開を図る。同社の高岡工場内に製造設備を設置(2019年度着工予定)するが、会社側では「大きな需要を期待している」(広報)と脱プラで高まる商機を捉える構えだ。具体的には、国内の大手食品流通を中心に、コンビニ、スーパー、宅配弁当、介護食弁当などの使い捨てプラスチックトレーの代替品としての利用を目指す。株価は、5月15日取引時間中に発表した決算で、今期営業損益が黒字浮上との見通しを受け一時176円高の1512円まで買われ一気に年初来高値を更新。きょうは38円高の1446円と3日続伸し再浮上の気配も漂う。商い薄が難点だが、今後マプカに活躍期待が高まるなか、その動向には注意を払っておきたい。

●クレハ、「クレダックス」が北米で伸長

 生分解性という視点では、クレハ <4023> にも注目したい。同社の開発した新素材クレダックス(Kuredux)は、セルロースと同等の生分解性を有し1ヵ月以内に微生物によって二酸化炭素と水に分解するという優れもの。掘削現場での利便性が高いことも評価されシェールオイル・ガスの掘削材料や工業用部材など、幅広い分野での市場開発が進んでいる。同社では「北米を中心に売り上げが伸びている」(広報・IR部)と話す。株価は5月14日に5580円まで売られ年初来安値を更新したものの、ここを起点に上値を慕う展開に変わっている。現在は7000円水準でもみ合う展開。

 生分解性プラスチック分野を牽引し注目度の高いカネカ <4118> は、ここ生分解性ポリマーPHBHを使用した製品の共同開発を矢継ぎ早に発表している。4月15日にはセブン&アイ・ホールディングス <3382> と各種製品の開発を進めると発表。まずは今秋をめどにセブン―イレブンなどで展開する「セブンカフェ」用のストローに導入される予定だ。また同月24日には資生堂 <4911> と化粧品容器共同開発を開始すると発表するなど、製品化に向けた動きを加速させている。株価は4月17日に4535円まで買われ年初来高値をつけた後は一貫して調整を続け、今月3日には3615円まで売られ年初来安値を更新。ただ、「レジ袋有料化発言」を受けジワリ株価が浮上、現在は4000円台復帰をにらむ。

 そのほかでは、化学品などを扱う専門商社で、昨年10月に生分解性プラスチック市場に本格参入を発表したGSIクレオス <8101> の動向からも目が離せない。

 大阪G20の公式サイトには、安倍首相の「気候変動問題や海洋プラスチックごみ問題を始めとする地球規模課題に貢献し、議長国として、力強いリーダーシップを発揮していく」というメッセージが掲載されている。脱プラ加速に向けて大きな推進力となることが期待される大阪G20の開催が近づいている。脱プラスチックへ向けての動きは、まだスタートしたばかりだ。

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