【特集】トライSTG Research Memo(2):ダイレクトマーケティング支援事業の大手、DM事業やWEB事業なども展開
トライSTG <日足> 「株探」多機能チャートより
■会社概要
1. 事業内容
トライステージ<2178>の事業は「ダイレクトマーケティング支援事業」「DM事業」「海外事業」「通販事業」「その他事業」の5つの事業セグメントで構成されている。2019年2月期の売上構成比で見ると、「ダイレクトマーケティング支援事業」が58.8%を占めており、次いで「DM事業」が34.3%で、これら2事業で全体の9割超を占めている。一方、セグメント利益の構成比で見ると、「ダイレクトマーケティング支援事業」で利益の大半を占めており、「海外事業」や「通販事業」に関しては赤字事業となっている。なお、グループ連結子会社は2019年2月期末で6社(国内4社、海外2社)、持分法適用関連会社1社の構成となっている。
(1) ダイレクトマーケティング支援事業
ダイレクトマーケティング支援事業には、同社で展開するテレビ事業と2017年3月に子会社化した(株)アドフレックス・コミュニケーションズ(以下、アドフレックス)で展開するWEB事業が含まれる。テレビ事業は、通販事業者に対して主にテレビ通販番組枠やCM枠の提供、販売戦略のプランニング、番組の制作、商品の受注(コールセンターの斡旋)、放送後の効果分析や物流・決済、顧客管理に至るまで、ダイレクトマーケティング(通信販売)で必要なあらゆるサービスをワンストップで提供している。一方、WEB事業は、ダイレクトマーケティングを行う企業に対してインターネット広告サービスやマーケティング支援サービスを展開している。
テレビ通販の放送枠に占める同社のシェアは2割強とトップを維持しており、媒体別売上構成比で見ると地上波で約6割、BS放送で約3割、その他(CATV、CS)で約1割となっている。また、同事業における継続的な顧客数は120社程度で、2019年2月期第4四半期における顧客別売上構成比で見ると、上位5社で売上高の37%を占めている。従来は5割近くで推移していたが、リスク分散のため新規顧客の獲得に注力していること、および一部顧客において取扱高が減少したことが低下要因となっている。売上高構成比で1割以上を占める主要顧客には、(株)インフォマーシャルデザイン((株)富山常備薬グループ)、キューサイ(株)の2社がある。また、顧客の業種別売上構成比で見ると、健康食品が4~5割、美容(化粧品)が2割、生活雑貨・その他業種が3割強となっている。ここ最近は会員誘導型企業(スポーツジムなど)や不動産投資、通信教育サービスなど新規業種・顧客の開拓にも取り組んでいる。
(2) DM事業
DM事業は、2012年11月に子会社化したメールカスタマーセンター(株)(以下、MCC)の事業となる。顧客企業が発送するパンフレットやカタログなど軽量物を封入したダイレクトメールの発送代行サービスを主に行っている。顧客企業数は子会社化当時の約500社から2019年2月期は約700社まで拡大している。日本郵便(株)(日本郵政<6178>)の「ゆうメール」やヤマト運輸(株)(ヤマトホールディングス<9064>)の「クロネコDM便」を利用し、大口割引適用を受けることによって顧客企業の発送コスト削減を実現している。東京本社のほか、札幌、新潟、名古屋、大阪、福岡の6拠点で営業展開している。
発送代行業務は参入企業も多く付加価値が低いため、顧客との直接取引比率の向上(現在は大半が代理店経由)や、上流工程である企画、DM制作、印刷業務などに事業領域を拡大していくことで、収益力向上を目指している。なお、ダイレクトメール発送通数では(株)アド・ダイセン、ディーエムエス<9782>と並ぶ業界大手の一角を占めているが、年間取扱通数が3億通を突破したことでトップに躍り出た模様。
(3) 海外事業
海外事業には、同社の海外事業と2016年9月に子会社化したシンガポールのJML Singapore Pte. Ltd.(以下、JML)、同年12月に子会社化したインドネシアのPT. Merdis International(以下、Merdis)、2017年4月に新設したタイのTri-Stage Merchandising (Thailand) Co., Ltd.(以下、TSM。2018年12月に解散)の事業が含まれる。
JMLはシンガポールで主に健康器具や雑貨のテレビ通販事業を展開しているほか、ASEAN最大手のスーパーマーケットやドラッグストア等へのリテール卸、EC事業なども行っている。販売国としてはシンガポールのほか2012年に香港、2015年にマレーシアに進出している。また、Merdisはインドネシアのテレビショッピングチャンネル向けに、主に韓国の美容・雑貨商品の輸入販売を行っている。TSMはタイ国内でテレビ通販市場を含むリテール市場の動向分析を行いながら、日本製商品のマーチャンダイジングとセールス・マーケティング、ロジスティック業務を行う目的で設立されたが、海外事業の見直しを進めるなかで早期に解散を決定した。
(4) 通販事業
2017年3月に子会社として新設した(株)日本ヘルスケアアドバイザーズ(以下、NHA)において、一般用漢方製剤等の通信販売事業を行っている。取扱商品は、頻尿や更年期障害等の改善が期待される日本製にこだわった漢方薬やサプリメントなどで、薬剤師等の有資格者がコールセンターのオペレーターとしてカウンセリングを実施しながら販売していることが特徴となっている。
同事業を開始した目的は、ダイレクトマーケティングの中でもリテンション領域(既存顧客への販売)での顧客提案力を強化することにある。健康食品やサプリメント等を手掛ける通販企業にとって最も重要な課題は、新規獲得した顧客をいかにリピート顧客として継続させていくことができるかという点にあり、そのためにはリテンション領域でのマーケティング戦略が重要となる。同社は自社グループで通販事業を行い、顧客データベースの管理・構築や顧客ニーズの吸収、リピート率の向上施策等のノウハウを蓄積することで、ダイレクトマーケティング支援事業における提案力を強化し、「顧客ごとの売上と利益の最大化」を目指している。
(5) その他事業
その他事業としては、2016年3月に子会社化した(株)日本百貨店の事業が含まれる。日本百貨店では日本各地の特産品や名産品、雑貨等を取り扱う店舗「日本百貨店」を東京都、神奈川県に合わせて7店舗出店しているほか、2016年7月にオンラインストア「日本百貨店おんらいん」もオープンしている。また、2017年から香港のデパート向けに工芸品等の卸売を開始したほか、沖縄県最大級の流通企業であるリウボウグループと業務提携し、同グループの店舗を通じて日本百貨店の商品の販売を開始している。さらに、2018年5月には東京・丸の内に同社にとって初の飲食事業となる「日本百貨店さかば」をオープンしている。同店舗は香川県丸亀市と静岡県西伊豆町の2つの自治体との広域連携事業で、これら自治体から協賛金を得ながら店舗運営を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《MH》
提供:フィスコ