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【市況】S&P500 月例レポート ― 弱気筋(ベア)は冬眠へ (1) ―

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年3月
●個人的見解:強気筋は打撃を受けても活動を継続

 2018年が終盤を迎える中、弱気筋は攻撃に向けて活発に展開したことから第4四半期のS&P 500指数は13.97%下落し、金利はカーター元大統領の時代(1977~81年)の水準に向かいました(まあ、そこまで上昇はしませんでしたが)。企業利益の大幅な減少が予想され、景気指標が不安定な動きを示したことを背景に、ちまたでは「Rワード(リセッション)」がささやかれるようになりました。

 それから3カ月、弱気筋は冬眠に入り、強気筋が戻ってきました。S&P 500指数は最高値更新まであと3.29%に迫り、第1四半期は13.07%上昇と反発し(2009年第2四半期の14.98%上昇以降で最高、第1四半期としては1998年の13.53%上昇以降で最高)、イールドカーブは逆転したものの米国金利はプラス圏にとどまっており、10年国債の利回りは2.41%で、今や1桁台の増益率が受け入れられています。ただし、4月に発表される決算とガイダンスで、依然として高水準のPERが裏付けられることが必要です。そして景気に関して言えば、ペースは緩やかながらも上昇しています。

 現実は変化しましたが、野獣(ベア)を追いやったのは市場の認識でした。第4四半期に生じた「恐怖心」の実態は不安心理そのもので、第1四半期の不安要因は企業利益、ひいては景気減速の兆候の拡大です。利上げ回数1回とゼロの差、すなわち0.25%の金利差は住宅ローンにとって必ずしも致命的ではなく、しかも住宅ローン金利は低下しています。企業利益とキャッシュフローは、おそらく記録的なペースや水準ではないものの、事業運営を十分に下支えし続け、自社株買いと設備投資は共に過去最高を更新しました。トランプ政権内では幹部の一部交代により(2019年1月)、そのレトリックに変化が見られるものの(いずれ影響が現れるでしょう)、現実の変化は今のところありません。

 そもそもRワードを取り沙汰するには時期尚早だった可能性があり、この言葉はボーイング737MAXに乗って、いまだに刺激策が健在かつ拡大中で離脱と「否決」が主要テーマである、欧州へと旅立ちました。一方、変化がなかったのは米中関税協議です。3月28~29日に北京で開催された閣僚級協議に続き、4月第1週にはワシントンで再開される予定で、トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談は、依然として(そして相変わらず)いつ開催されてもおかしくないように思えます。

 楽しい話題であり月末の取引の中心となったのは、新規株式公開(IPO)が冬眠から覚めた、あるいは息を吹き返したと言えることかもしれません。3月29日にIPOを実施した配車サービス大手Lyft(LYFT)は、IPO価格を当初計画の62~68ドルから72ドルに引き上げましたが、上場初日の取引を78.29ドルで終え、潜在的価値(最終利益が赤字のため)は260億ドルと評価されました。こうした話題(取引も)は今後も続くと見られ、4月には同じく配車サービス大手のUber(同じく赤字)のIPOが予定されており、上場時の評価額は1,200億ドルと推測されます。他にも、コワーキング・スペースを提供するWeWorksや画像共有サイトPinterestなど、万人のよく知る企業の上場が目白押しです。

 4月の相場の注目材料は決算発表になると予想されます。今や市場で受け入れられている1桁台後半(9.1%)の2019年の予想増益率は、2019年第1四半期の実績(真実を反映していれば)と、ガイダンスによって試されることになるでしょう。見積ベースでなく実際の利益に基づくPERは、2019年予想で17.1倍と依然として高水準にあり、ウォール街は現在のPERを正当化する必要があると思われます。第1四半期の利益予想は2018年末時点から7.1%引き下げられましたが、同じ場所に2度落雷が起きることはめったにありません。つまり、2018年第4四半期は大幅に予想が下方修正された結果、業績は低調だったものの概ね予想を上回り、市場から受け入れられました。要するに、市場は高値更新に近づいており(あと3.29%)、安心材料を必要としていることから、実際の利益が最良の材料と言えるでしょう。

 過去の実績を見ると、3月は60.4%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.35%、下落した月の平均下落率は3.61%、全体の平均騰落率は0.60%となっています。来る4月は63.7%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.19%、下落した月の平均下落率は3.82%、全体の平均騰落率は1.28%となっています。今後のFOMCのスケジュールは、4月30日-5月1日、6月18日-19日、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日となっています。

●主なポイント

 ・市場は3月も勢いが持続し、S&P 500指数は12月の9.18%下落から大きく反転した1月の7.87%上昇や2月の2.97%上昇に続いて3月も1.79%上昇しました。

 ・3月のS&P 500指数は2,834.40で取引を終え、2月末の2,784.49から1.79%上昇しました(配当込みのトータル・リターンはプラス1.94%)。2月は2.97%の上昇(同プラス3.21%)でした。3月の上昇により、S&P 500指数は終値ベースの最高値(2018年9月20日の2,930.75)まで3.29%の水準まで戻り、高値更新に近づきました。年初来(第1四半期)では13.07%上昇(同プラス13.65%)、過去1年間では7.33%上昇(同プラス9.50%)、2017年末からは6.01%上昇(同プラス8.67%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2,139.56)以降では32.48%上昇(同プラス38.98%、年率換算でそれぞれプラス12.52%、14.80%)となっています。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は2万5,928.68ドルで3月の取引を終え、2月末の2万5,916.00から0.05%上昇しました(配当込みのトータル・リターンはプラス0.17%)。2月は3.67%の上昇(同プラス4.03%)、年初来では11.15%上昇(同プラス11.81%)、過去1年間では7.57%上昇(同プラス10.08%)しました。

  ○強気相場は2019年3月9日に10周年を迎え(最高値更新が待たれます)、10年間の上昇率は312%、配当込みのトータル・リターンは408%となりました(年率換算ではそれぞれ15.24%、17.68%)。


 ・米国10年国債の利回りは2月末の2.72%から低下して2.41%で月を終えました(2018年末は2.69%、2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ・英ポンドは2月末の1ポンド=1.3264ドルから1.3081ドルに下落し(同1.2754ドル、同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.1369ドルから1.1220ドルに下落しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は2月末の1ドル=111.38円から110.82円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は2月末の1ドル=6.6937元から6.7121元に下落しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ・原油価格は2月末の1バレル=57.25ドルから上昇して60.20ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は2月末の1ガロン=2.471ドルから2.701ドルに上昇して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ・金価格は2月末の1トロイオンス=1,314.70ドルから1,296.90ドルに下落して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ・VIX恐怖指数は2月末の14.78から低下して13.71で月末を迎えました。月中の最高は18.33、最低は12.37でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

 ・2018年第4四半期決算発表はほぼ終了しました。S&P 500指数構成企業500社(505銘柄)のうち501銘柄が決算発表を終え、そのうち341銘柄(68.1%)で利益が予想を上回り、125銘柄(25.0%)が予想を下回り、35銘柄(7.0%)は予想通りでした。売上高は、495銘柄中303銘柄が予想を上回りました(61.2%)。2018年の営業利益は前年比21.8%増(発表ベースでは20.5%増)、売上高は9.0%増となりました。

 早くも2019年第1四半期の決算発表が始まり(決算期がずれる企業から始まり、4月末までには70%が発表を終える予定です)、発表を終えた15社中14社で利益が予想を上回り、売上高に関しては15社中6社が予想を上回りました。第1四半期の利益予想はこの3カ月間のうちに7.1%引き下げられ、営業利益は前期比5.2%増、前年同期比では0.8%増、過去最高となった第3四半期と比べると10.9%減となる見込みです。2019年通期の予想は2018年12月時点から3.7%引き下げられ(2018年3月時点からは4.2%下方修正)、前年比9.1%増が予想されています。2020年に関しては、前年比12.7%増の見通し(2018年比で22.9%増)。

 ・ビットコインは2月末の3,825ドルから上昇して4,096ドルで月を終えました。月中の最高は4,123ドル、最低は3,705ドルでした(2018年末は3,747ドル、2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ・1年後の目標値は、S&P 500指数が3,108(現在値から9.7%上昇、2月末時点の目標値は3,065)、ダウ平均は2万8,519ドルとなっています(同9.9%上昇、同2万8,112ドル)。


※「弱気筋(ベア)は冬眠へ (2)」へ続く

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