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【特集】史上最高値のパラジウム、供給ひっ迫も景気減速懸念で調整警戒の動き

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行
  パラジウムの現物相場は、リースレート(貸出金利)が高止まりし、供給ひっ迫が続くなか、ロシアが貴金属スクラップの輸出禁止を計画しているとの噂を受けて上値を伸ばし、今月21日に史上最高値1615.00ドルを付けた。その後は3月の独製造業購買担当者景況指数(PMI)の悪化を受けて世界的な景気減速懸念が強まり株価が急落すると、利食い売りが出て短期的な調整局面となった。ただ、ファンダメンタルズの強さから押し目買い意欲も強く、供給不足が続くと、2000ドルまで上昇するとの見方も出ている。

 また、パラジウムほど需給はタイトでないが、ロジウムも堅調に推移し11年ぶりとなる3000ドル台に上昇した。英ジョンソン・マッセイ(JM)は今年のロジウムは小幅な供給過剰を見込んでいるが、自動車触媒需要の増加に相殺される可能性を指摘しており、3700~3800ドルを見込む向きも出ている。レアメタルで供給が限られているロジウムは2008年のリーマンショック以前に1万ドル台まで上昇したこともあり、投機的な動きが出ると値が飛びやすい。

●パラジウムは供給不足も先物市場で買い余地を残す

 パラジウムのリースレート(貸出金利)1ヵ月物は大幅な供給不足が見込まれるなか、昨年12月に37.46%まで上昇した。その後は現物相場が1300ドルから1600ドル台に上昇するなか、3月に入り10%を割り込み、25日時点で8.00%となった。ただ、プラチナ(白金)の0.20%と比べると、引き続き高水準で推移しており、供給ひっ迫感が強い。主産国であるロシアの供給が伸び悩んでいることに加え、世界第2位の生産国である南アフリカでは国営電力会社であるエスコムの電力供給に対する不安が残っている。

 一方、自動車触媒需要が増加傾向にあり、2012年以降、供給不足が続いている。今年は中国の自動車販売が減少に転じたことや、世界的な景気減速懸念が上値を抑える要因だが、供給不足に変わりがなければ価格は高止まりするとみられる。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告でニューヨーク・パラジウムの先物市場で大口投機家の取組を確認すると、買い余地が残っている。3月19日時点の買い越しは1万2584枚と昨年8月の982枚を底にして拡大したが、昨年1月のピークである2万7614枚を大幅に下回っている。一方、パラジウムETF(上場投信)の現物保有高は26日の米国で5.30トン(昨年末4.57トン)、20日のロンドンで3.25トン(同3.05トン)、26日の南アで2.86トン(同2.65トン)に増加しており、投資資金が流入するようなら価格が押し上げられるとみられる。

●当面は米中の通商協議と英国のEU離脱の行方を確認

 米中の通商協議が最終段階を迎えているが、米中首脳会談が先送りされ、不透明感が残っている。当面はライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とムニューシン米財務長官らが28日から北京での通商協議に臨む予定である。その後は中国の劉鶴副首相率いる代表団が4月3日にワシントンを訪れる。

 中国側は農業・エネルギーなどの製品やサービスを「相当量」購入することを約束しているが、知的財産権や技術移転など構造問題での交渉が続いている。米国の対中追加関税は延期され、合意に達すればこれまで課された関税の全てか大半が撤回される可能性があると伝えられている。

 一方、英国の欧州連合(EU)離脱期限を29日に控えているが、メイ英首相は3回目となるEU離脱協定案の議会採決実施に十分な支持が得られていないとの見方を示し、先行き不透明感が残っている。EUは、英国がEUと取りまとめた離脱合意案を議会が可決すれば5月22日まで離脱を延期し、否決した場合は4月12日までに対応策を決めるよう英国に要求した。

 英議会のウェブサイトに用意された離脱撤回を求めるオンライン嘆願書に100万件を超える署名が集まっており、離脱期限の長期延期となれば離脱撤回が議論される可能性も出てくる。

●パラジウム堅調はプラチナの支援要因も上値限られる

 パラジウムが今年に入り史上最高値の更新が続いているが、プラチナは安値圏でのもみ合いが続いている。自動車触媒でパラジウムをプラチナに代替する動きが出ればプラチナの支援要因になるが、自動車会社が電気自動車(EV)化を優先すると、代替技術の開発は見送られるとみられる。自動車市場では世界的にEV化が発表され、中国を中心にEV化が進んでいる。

 また、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正を受けて欧州でディーゼル車離れが起き、プラチナの自動車触媒需要はパラジウムほど伸びず、供給過剰となったことがプラチナの上値を抑える要因になっている。投資資金が流入すれば価格が押し上げられる可能性もあるが、需給が改善しなければ上値は限られそうだ。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月19日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万7581枚となった。2月12日の1606枚売り越しから買い越しに転じたが、3月5日の2万1463枚で買いが一巡した。一方、プラチナETF残高は20日時点のロンドンで10.25トン(昨年末8.82トン)、26日時点の米国で21.93トン(同19.45トン)、南アで30.50トン(同21.87トン)となった。安値拾いの買いが入って軒並み増加している。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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