【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 押しくらまんじゅう続くか
株式評論家 植木靖男
「押しくらまんじゅう続くか」
●二つの好材料の賞味期限近し?
東京株式市場は、よろめきながらも着実に3月4日の2万1822円(終値ベース)をめざして上昇しているようにみえる。3月4日から4日続落、800円近く下げただけに、その後の戻りは一気呵成とはいかず、ジリ高とならざるを得ない。
2万1822円まで200円強にすぎないが、侮ってはならない。“たかが200円、されど200円”だ。
材料面から見ると、年初来の上昇相場は米中貿易交渉妥結への期待感、そして、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策がこれまでの引き締め基調から急転換するとの期待感、この二つの材料が株価を下支えしてきた。
だが、1月からすでに3ヵ月。この二つの材料も少しずつ変化し、ひょっとして賞味期限近しとの空気も漂う。
期待した米中貿易交渉も根本的な妥結にはならず、米中間の溝は埋まらない。むしろ、この材料に賞味期限があることを思い知らされた格好だ。
もう一方の材料、すなわちFRBのスタンスだが、3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で19年中の利上げは見送り、資産縮小停止もはっきりと9月末と期限を明示した。まさに政策大転換だ。場合によっては利下げもといった観測も浮上している。市場は、とりあえずはこれまでの上昇基調に戻ると歓迎一色である。
もっとも、このことは裏を返すと、それだけ急激に米国景気の先行きに警戒感が迫っている証でもある。それに、金融緩和、つまり、適温相場が再び始まるとの期待だが、しょせん材料としては二番煎じ。市場は、この二番煎じの材料を拒否することが多い。
●チャートの正念場を迎える米国株
さて、今後の見通しはどうか。
明らかに金融緩和という好材料と景気の先行き警戒との綱引きになる。まるで、押しくらまんじゅうといったところだ。
この綱引きはいつまで続くのか。しばらくはどちらかに大きく傾斜することはなさそうだ。
では、罫線(チャート)からみるとどうか。言うまでもなく、日本株は米国株に同時的、もしくは間を置いて追随することが多い。
その米国株は、昨年10月3日の2万6828ドル、本年2月25日の2万6091ドルを目指している(終値ベース)。もし突破できなければ、いわゆる三番天井、つまり、三尊天井となる可能性が大きい。
一方、日本株はいまのところトレンドは上向きだ。3月最終週も“たかが200円”を目指して押しくらまんじゅうに終始しそうだ。
ところで、こうしたジリ高の中で物色範囲はどうか。
大きな特徴は、利下げ論議が勃発すると同時に米国市場ではアップル株や半導体関連株が上昇をみせた。しばらくは、押しくらまんじゅうで金融緩和の材料が優勢に展開するとすれば、ハイテク株が牽引するとみたい。代表株は、レーザーテック <6920> 、それにソフトバンクグループ <9984> であろう。このほか、なぜか強い三菱重工業 <7011> だ。株価はMRJ(三菱リージョナルジェット)に乗って空を駆け上がるか注目したい。
2019年3月22日 記
株探ニュース